ハズレルートのその先へ!?
瞑想で魔力を補充して、二十二階層の探索を続ける。
この階層では、行き止まりの小道が多く見つかる。
この小道に入る意味はほとんどない。
メインの通路に比べて明らかに狭く、ハズレルートだとわかるからだ。
しかし、こういうハズレルートも無視はできない。
宝箱が置かれていることがあるから、一応チェックしている。
狭い通路の奥まで入らなくてもいいのだ。
リンの【サポートシステム】か、俺の水蛇探知で調べればいい。
「この通路はすぐに行き止まりだ」
「こっちも、なにもありませんねー」
トウコが半眼でつまらなそうに言う。
「んー、またハズレっスか。
こんなのはほっといて、さっさと進みたいっス」
「まあ、そう言うな。
これは最初だけだからな。
ハズレだとわかったら、今後は無視すればいいんだ」
トウコが頭の上で腕を組み、足をぶらぶらさせながら言う。
「そーいうのは、あとでいいと思うんスよねー」
出たな、面倒ごと後回し派!
とはいえ、気持ちはわかる。
「ま、それもアリだ。
通路の奥に見過ごせない危険があるわけじゃないし」
「そーそー!
敵を倒したって、どうせ湧いてくるっス!」
たまに火トカゲが潜んでいることがある。
先に調べてしとめても、湧いたり移動してくる可能性は消えない。
結局、通るときには索敵が不可欠だ。
火トカゲは攻撃範囲に入らなければ襲ってこない。
ようするに見つけても、近づかなければ害はない。
小道の奥に火トカゲがいても無視できるというわけだ。
「じゃあ、宝箱の探索はマップ埋めをするついでにするかな。
今日はさくっと二十三階層に進もうか」
そろそろ階段が見つかってもいいだろう。
この通路にはやたらとゴブリンが多い。
しかし開けた広い通路なので、遠距離から仕留められる。
相手の投擲物より銃や魔法のほうが射程が長いのだ。
「……ん。
店長、なにか聞こえないっスか?」
「ふむ……?」
トウコは耳がいい。
俺はトウコが指さす方向に耳を澄ませてみる。
たしかに聞こえる。
距離があるせいか、くぐもって聞こえる。
「これは、岩と叩く音か?
足音にしては不規則だし、硬い音だな」
「コンコンって感じっス」
「なんの音でしょうか?」
「あっちのほうっス!
その辺のハズレ小道っスね!」
近づくと、音を立てている小道の入口が見つかった。
「穴を掘る音か?」
「そうかもっス!」
「ゴブリンさんが穴を掘っているんでしょうか?」
「きっと採掘っスよ!」
「この道は奥まで続いていますね。
システムさんの行ける距離に敵さんはいません」
少し深い穴らしい。
薄暗く、曲がりくねった通路は先が見通せない。
立って歩くには少し狭く、頭を下げて歩かないといけない。
「ふむ。
じゃあ、俺が見てこよう。
ここで待機していてくれ」
「リョーカイっス!」
「はーい、気をつけてくださいね!」
俺は腰をかがめ、狭い通路を【隠密】して進む。
……暗いな。
だが明かりをつけなくてもなんとか見える。
奥から明かりが漏れている。
赤い明かり……?
……熱水晶か?
進むごとに音がはっきり聞こえてくる。
岩に硬いものを当てる音。
力任せに強く叩きつける音ではない。
コツコツ、コンコンといった小さな音だ。
正体はすぐに分かった。
ゴブリンだ。
ゴブリンの背中が見える。
ツルハシを小刻みに動かし、壁を掘っている。
その先にあるのは赤い光源。
熱水晶が熱と光を放っている。
水晶を掘りだそうとしているのだ!
これは……もしかしたら危険かもしれないぞ。
水晶に衝撃を与えると爆発する。
その危険は身に染みている。
この通路は狭い。
爆発したら巻き添えを食うことになるだろう。
その前に水蛇を送り込んでゴブリンを仕留めるか?
いや……。
ちょっと様子を見てみよう。
ゴブリン研究家としては見過ごせないイベントだ!
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