環境トラップは即死級で!
即死級の環境トラップをなんとかやり過ごした。
最上段に戻ってみると、熱水晶のほとんどが消えていた。
敵の姿はない。
「ゴブリンは全滅したみたいだな」
「あー、ドロップアイテムも吹っ飛んでるっス!」
悔しそうに言うトウコをリンがなだめる。
「無事ですんで良かったと思おうよ、トウコちゃん」
「もう少し早く気づけばよかったな。
次は気をつけるぞ!」
大量の敵に気を取られすぎたか。
熱水晶に強い力を与えると爆発することは知っていた。
それなら、もっと気をつけることもできたはずだ。
反省反省!
直接的な罠ではないが、かなり危険なトラップだ。
もう同じ轍は踏まないぜ!
「もう水晶が減ったから安心っスね!」
「しばらくするとまた生えてくるけどな!」
宝箱と同じように、水晶などのオブジェクトも再生成される。
ここを通るときは気をつけないといけない。
まあ、今回は大丈夫だ。
「この先も水晶には気をつけておきますねー」
「うむ、そうしよう」
トウコが驚き、嬉しそうな笑顔でこちらを見る。
「あっ!
レベルが上がったっスよ!
へへ、これであたしも三十到達っス!」
リンが微笑み、パチパチと拍手を贈る。
「トウコちゃんおめでとうー!
いいなー。
私もそろそろかなぁ」
リンのレベルは三十一だったはずだ。
差が縮まってきたな。
リンが家事をしている間にトウコは弾丸集めをしたりするので、手に入る経験値に差が出るのだ。
「おめでとう。
ちょうどよかったな!
ちゃんと【サプレスショット】と【静音化】を取るんだぞ!」
「忘れてなかったんスねー。
ほい、ポチポチっと!
一段階ずつ取ったっス!」
さっき話したばっかりだしな。
忘れるわけないだろ!
「で、効果はどうだ?」
トウコが空中に視線を向ける。
スキルの説明文を読んでいるのだろう。
「【サプレスショット】は射撃時の銃声を低減する、って説明っス!
じゃ、さっそく撃ってみるっス!」
そう言うやいなや、引き金を引くトウコ。
銃声。
「急に撃つなよ!」
「へへ、ごめんっス」
「ふむ、少しはマシになった気がするな」
「そうですねー」
「んで、こっちが【静音化】っス!
撃つっスよー」
「おう」
宣言してから引き金を引くトウコ。
銃声。
「ほう、さっきより少し大きいか?」
「私もそう感じましたー」
「【静音化】は常時発動するタイプっスね。
【安定化】とか【早撃ち】と似た感じっス」
「へえ。
常時発動する代わりに効果がマイルドなやつだな」
「ということは、【サプレスショット】はアクティブスキルなんですねー。
ファイアボールとおんなじですね」
「消費魔力は軽めっス!
【静音化】と【サプレスショット】をいっしょにすると、こうっス!」
トウコが銃を遠くへ向けて撃つ。
銃声は先ほどより小さい。
「ちゃんと効果が重複しているみたいだな。
けっこう耳に優しくなってきたぞ!」
「いいですね!」
「とりあえず、これくらいでいいっスかね?
ポイントはもうちょっとあるんスけど」
トウコはこのスキルを育てる気がないらしい。
本人の能力なのだし、無理強いしてもしかたがない。
「とりあえずオーケーだ。
あとは熟練度で上げていけばいいだろ」
「そーっスね!
なるべく使うようにするっス!」
遠くの敵に気づかれにくくなるかもしれない、という程度だ。
まあ、近くの敵には聞こえてしまうだろう。
それは銃だし、やむを得ない。
火力は増えなくても、快適さは増す。
そういうスキルも重要だと思うね!