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1404/1458

その岩場、危険につき!

 ゴブリンの群れが左右から押し寄せてくる。


 七匹、八匹……九匹!

 さらに後からやってくる!


 それを見てトウコが目を丸くする。


「げーっ!

 やたらと赤ゴブが湧いてきたっス!」

「この場所……両側に通路があるのか!?

 ……囲まれるぞ!」


 リンが不安げに俺の顔を見る。


「ど、どうしましょう、ゼンジさん!?」


 さて、どうするか……!?


 今いる岩棚の最上部は広く、安定した足場がある。

 ここは戦いやすいが、両側を敵に挟まれるのはマズい。


 といって、下段に降りても不利……!

 なんて嫌な地形だよ!?


 左手にゴブリン、右手にゴブリン。

 前門の虎、後門の狼みたいな感じ……。


 ゴブリンだからショボい響きになるが、要するにピンチだ!

 一斉に爆発物を投げ込まれたら……ひとたまりもないぞ!


 俺は霧を出しつつ、指示を飛ばす。


「とりあえず濃霧!

 リンはファイアウォールであっちを塞いでくれ!」

「はいっ!」


「俺は逆側を抑える!

 トウコはチャージして、機を見て撃て!」

「りょっ!」


 トウコが銃に魔力を込め始める。


「ファイアウォール!」


 詠唱と共に、少し離れた位置に炎の滝が流れ落ちる。

 上から下へ流れる炎が壁を形作る。


「ギギィッ!」


 ゴブリンが不満げな叫びを上げる。

 そのうち無理やり突破してくるかもしれないが、時間は稼げる。


 さて、俺は反対側をなんとかせねばな!

 術はもう集中を終えている。


 大量の敵を足止めする術といえば――


「くらえっ!

 水噴射ーっ!」


 両手から水流がほとばしる。

 さながら放水銃のような圧倒的水量!


「アギャ―ッ!」


 激流がゴブリンたちをなぎ倒す。


 もはや何匹いようが関係ない!

 槍や手榴弾を投げようとした奴から狙い撃ちだ!


 即死させるような威力はないが、多数の相手を押し流して封じるには最適だぜ!


 水流に流され、足場から下段へ落ちる奴もいる。

 そのまま奈落へ落ちるがいいぜ!


 背後で爆発音。

 驚いたようなリンの悲鳴。


「きゃあっ!?」


 なんだ!?


 放水を止めず、首だけで振り返る。


 トウコが明るく笑う。


「ははっ!

 さすゴブっ!

 爆弾を投げ込んで誘爆させたっスよ!」

「び、びっくりしましたー!」


 リンがほっと息を吐いている。

 無事のようだな。


 ゴブリンがファイアウォールに熱水晶を投げ込んだのか。

 そりゃ、爆発するわ。

 さすがゴブリン……!


 ファイアウォールが爆風で途切れている。

 リンが手をかざすと、その隙間が閉じていく。

 炎の壁が閉まりきる前に、トウコが銃を向け、引き金を引いた。


「チャージショット!」


 光の尾を引いて、弾丸が飛ぶ。

 ゴブリンに強力な弾丸が撃ち込まれ、大穴を穿つ。


「アギャァ!」


 二匹のゴブリンがまとめて撃ち抜かれるのが見えたところで、炎が視界を塞いだ。


「うっし!

 二枚抜きっス!」

「ナイス!」


 俺は自分の受け持ち方向へ意識を向け直す。

 放水によりゴブリンは立ち上がっては転んでをくり返している。


 何匹かのゴブリンは押し流されて下方へ脱落した。

 落下死コースだな。


 手榴弾を投げようとしている奴がいる。

 させるか!


 放水が直撃し、ゴブリンが手榴弾を取り落とす。

 床に落ち、手榴弾が爆発!


 ゴブリンが燃え上がる。

 せっかくなので、そいつには水をかけないようにして別のゴブリンを狙う。


 燃え上がるゴブリンがわめきながら、走り回る。

 奈落に落ちればいいものを、向かう先は壁。


 壁に激突したゴブリンが、壁から生えている熱水晶に倒れかかる。

 む……これ、マズくないか!?


「爆発するかもしれん!

 下段へ逃れろ!」


 そう言ったところで【危険察知】がビンビン反応し始める。


 見れば、赤熱している水晶は一つじゃない!

 ファイアウォール付近の、爆弾が誘爆したあたりもだ!


 おいおい……!

 【危険察知】の反応がどんどん強まっていくぞ……!?



「うぇぇ!?

 誘爆っスか!?

 大爆発っスかー!?」

「わ、わかりましたー!

 トウコちゃん、見てないで走って!」


 トウコとリンがあわてて走り出す。


 そのとき、燃えるゴブリンが熱水晶に寄り掛かった。

 熱水晶が輝きを強めていく!


 やっぱり、そうなるか!?


「急げ!

 ――跳べっ!」


 岩棚の下段へと飛び降りる。

 リンとトウコも続く。


 スーツの腕から水を出し、盾を形成!

 上へ向け、衝撃に備える。


 リンも盾を構えている。


「トウコちゃん、隠れて!」

「ひょえーっ!」


 俺とリンの間でトウコが身を縮める。


 赤い輝きが大きくなり、激しい爆発が起きる。

 さらに別の水晶にもそれが伝播する。


 目が痛くなるほどに(まばゆ)く、岩場が赤く染まる!


「うおおっ!?」

「きゃああ!」

「まぶしっ! あつっ!」


 爆風を受け、硬化した水を支える腕に圧がかかる。

 リンがよろめき、片膝をついた。

 トウコがリンに抱き着くようにしてそれを支える。


 光と熱が収まる。

 あたりの岩がしゅうしゅうと熱を帯びて陽炎を揺らめかせている。


「おお……ヤバかったな!」

「上にいたら大変でしたね!」

「うへへ……」


 トウコはリンに抱き着いたままユルい笑いを浮かべている。


「トウコ、ちょっとは緊張感を持て!

 今のは、けっこうヤバかったぞ!?」


「そうっスねー!

 いやー、店長のおかげでギリセーフだったっス!」


 ホメてごまかしよる……。


「ゼンジさんのおかげで、なんとか逃げられましたね!」

「ほんとに、けっこうギリギリだったからな!」


 しつこいくらいに念を押しておく。

 まだ心臓がバクバクいっている。


 この地形……危険すぎるぞ!?

祝! 評価三万突破! ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
汚ぇ花火だ。 誘爆をうまく使えば、敵だけ殲滅できるかな? それにしても、危険なオブジェクトだねぇ。
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