まずはお友達から始めましょう! 調理器具は試作品で!
クローゼットダンジョンの拠点。
いくつか、調理器具を使った防具を作った。
安物の鍋やフライパン、まな板……。
こう言ってはなんだが調理器具は防具ではない。
いや、言うまでもないけどね。
防具ではないが、忍具ではある。
これは言うまでもないことだな。
なにしろ、俺の世を忍ぶ仮の姿は飲食店の雇われ店長……もとい名誉管理職だ。
調理器具を操るキッチン業務もお手のもの。
古来から忍者はこうして市井の人々に混じって……。
忍具作成君から異議は出なかった。
ばっちり調教……じゃなくて、友好関係を深めてきたおかげだ。
みなまで言わずとも、すぐにわかってくれる。
さすが心の友だよね!
そうして作り上げた試作品を装備品展示ラックに並べる。
俺はその前でひとり、腕を組み、首をひねって呟く。
「うーん。
試作品とはいえ、どうにもダサいんだよなぁ……」
見た目、重さ、耐久度。
どれも今一つ。
実用品には程遠い。
しかしそれでいい。
今はまだ、ね。
これはまだ完成品ではない。
モックアップであり、たたき台であり、ハリボテ品である。
最初から本格的な武具を作らないのには意味がある。
いきなりガチ装備を作ると、調理器具とみなされないおそれがあるからだ。
リンは【調理器具】を取得したばかり。
まだ使い勝手が分かっていないし、馴染んでいない。
リンと【調理器具】は出会ったばかりの他人状態だ。
俺と忍具作成君ようなマブダチ状態ではない。
いきなりガチ武具を見せて、これが調理器具だ!
早くスキルを発動しろよ!
なんて言ってもびっくりしてしまうだろう。
そんな無茶振りは通らない。
馴れ馴れしい奴だと思われて、そっぽを向かれてしまう。
今は、そんな可能性を減らすためのステップ。
慣らしの段階だ。
だからあえてダサい品を作っている。
調理器具らしさを残した、防具っぽいもの。
それが今ここに並ぶ試作品である。
完璧な作戦だぜ。
これをリンに試してもらう。
そして、調理器具として認識させるのだ!
リンが転送門から入ってくる。
「ただいま戻りましたー。
少し課題が長引いてしまって……」
世界的に蔓延している伝染病対策で在宅授業が続いている。
ダンジョンがあっても学業はおろそかにできない。
トウコもいやいや学校へ通っている。
「おかえり、リン。
じゃあさっそくだが、この試作品を見てくれ!」
俺は一品目を展示台から取り上げ、持ち上げる。
ずしりと重い!
それをリンに見せながら続ける。
「まずは本命から。
中華鍋の大盾だ」
「わあ、大きいですねー!」
重くてデカい、重量級の大鍋である!




