スキル検証【濃霧】! 操るのは温度か、それとも……!?
「簡単に言えば、霧を操れるってことだ!
霧を作ったり、消したり、動かしたりできる!」
トウコが頭上のハテナを消し、ぴこんと感嘆符を浮かべる。
「なるっ!
完全に理解したっス!」
わかってなさそうだけど、ヨシとしよう。
「じゃあ、早速やってみるぞ!
――【濃霧】!」
【検証者】にセットした【濃霧】が発動する。
発動にかかったのは一秒程度だ。
なにもない空中に濃い霧が発生して、漂う。
リンがうれしそうな笑みを俺に向けて拍手する。
「わあ、霧が出ました!
成功ですね!」
「発動まで一秒くらいか。
無から霧を作るイメージでやってみたんだけど、うまくいったな。
術を解除してみよう」
術を続ける限り、霧はどんどん増えて範囲を広げていく。
その間、魔力は消費され続ける。
【水噴射】や【水生成】と比べればコストは軽いな。
術を解除すると、霧は文字通り霧散してしまった。
これは【水噴射】で出した水が消えるのに似ている。
魔力によって無から生み出した一時的な水は、すぐに消えるのだ。
分身が塵になって消えるのとも似ている。
納得した。
「じゃあ次は、水を蒸発させるイメージでやってみるぞ!」
意識を術に集中する。
そして風呂の水を一気に蒸発させるようなイメージを浮かべる。
術を発動……成功!
都合のいいイメージが実を結ぶように、水面からモクモクと水蒸気が立ち上る。
「おお、うまくいったぞ!
しかもクールダウン時間がないから、連続で使える!」
集中には時間が必要だが、次の発動まで間を置く必要はない。
ま、濃霧は連発するような術じゃないけど。
使いやすいに越したことはない。
トウコが目を丸くして、湯船からわき上がった霧を手で扇ぐ。
「おーっ!?
おフロからキリがでてきたっス!」
「すごいですー!
蒸発も操れちゃいました!」
大物演歌歌手のステージでも始まりそうなスモークが立ち込める。
無から生み出すより魔力消費量は少ない。
「ふむ。
さすがに一気に風呂の水がなくなったりはしないようだな」
「店長がんば!
もっと水位を下げるんスよ!」
トウコがリンを凝視しながら鼻息を荒くする。
水を減らして裸を拝もうって?
ふ、幼稚な奴。
俺はそんな段階はとっくに超越している!
リンはトウコの目論見をスルーして続ける。
「霧に必要な水分はそんなに多くないんですよねー?」
「水が蒸発すると体積は千七百倍になる。
つまり少しの水があれば霧を作れるんだ」
逆に言えば、風呂の水位が減るほどの速さで霧にはできない。
それを確認した俺は術を解き、満足げにうなずく。
「よし!
術を解いてみるぞ」
あとは、作り出した霧がどうなるかだな。
「んー。
すぐには消えないっスね」
「少しずつ風で散っていく感じだな」
ここは広々とした草原だ。
霧はわずかな風に流されて、拡散して消えてしまう。
無から霧を出したときとは消え方が違う。
「消え方がゆっくりなのは、本物のお水を変化させたから、ですよね?」
「ああ、たぶんそうだ」
不思議効果によって、現実的な物理法則に干渉している。
その物理法則の結果として発生した霧は本物だ。
物理法則に従ってそのまま残る。
とはいえ風に吹かれて散ってしまうし、いずれは空気に溶けるように消える。
「んじゃ次だ。
空気を冷やして飽和水蒸気量を下回らせて……」
トウコが目をぐるぐる回しそうな顔で言う。
「店長!
もう細かい話はいいっス!
さっさと次どうぞっス!」
トウコは知恵熱を出しそうな様子だ。
では理論は置いておこう。
実際にやってみせよう!




