禁断の術!? 感じるんだ、水を!
探知、知覚、察知。
似た意味だけど、少しずつ意味が違う。
今回試すのは【水探知】だ。
リンの持つ【魔力知覚】に似た使い方ができるかを試したい。
これができたら俺の水忍法はさらに飛躍することだろう!
期待が高まる!
探知は探して知る、ということだ。
知覚は感覚を通して、それが何かを理解することだ。
スキルによる感覚は俺にとってもなじみが深い。
【危険察知】は何度も俺に危険を知らせてくれた。
これは推測や予感、直感という感じで、ビビッと来る。
【水探知】はどんな感じだろうな?
「――さっそく【検証者】にセットしてみよう!」
「はーい!」
リンが嬉しげに笑顔を輝かせる。
「いざ、検証者の枠に【水探知】をセット!」
「セットっ!」
トウコが復唱してくる。
ちょうどいい具合に、今いるのは風呂だ。
探すまでもなく周りは水という状況……。
水はたくさんある。
さて、これがどう見えるのか。
いや視覚とは違うんだから、見るのとは違うか。
探知でも、察知でも、知覚でも感覚でも同じこと!
集中して感じ取ればいい!
目で見るんじゃない!
こころで感じるんだ!
開け、第三の目!
開花せよ、俺の心眼!
くわっ!
おお!?
見える……!
私にも水が見えるぞ!
感じる!
自分の体を包む水の存在を!
波打つ水の揺らめき、跳ねる水滴。
圧力や対流する水の動き。
湯のあたたかさまでも感じられる。
不思議なものだ。
皮膚の温感とはまったく別の感覚でそれとわかる。
目を閉じて、水に身をゆだねる。
感覚を研ぎ澄まし、水そのものを知覚するイメージ。
俺は水だ。
湯は俺だ。
意識を溶け込ませ、感じ取るのだ。
「どうですか?」
「探知できそーっスか?」
「ああ……お湯が感じられる。
リンが言っていた通り、知覚するように使えそうだ」
「わあ!
それはよかったです!」
リンが嬉しそうに微笑む。
俺は笑い返す。
「おかげで、水忍法が新たな次元に進みそうだ」
水を感じるのは目で見るのとは違う。
ぜんぜん違うのだ。
もっと立体的で、質感を持っている。
今感じているのは自分の体に触れている水だけだ。
直接触れているからか、かなり鮮明に感じられる。
岩石探知のナイフは、もっと遠くの岩を知覚することができた。
足元はよく見えて、遠くはぼやける感じ。
近くしか見えないわけじゃない。
ならば当然、水探知にもそれができる。
もう少し遠くを探知してみよう。
俺は探知範囲をさらに広げていく。
いま俺は湯に浸かっている。
つまりこの湯舟の水全体に触れているも同然!
鮮明に、はっきりと探知できるはずだ。
そして探知した。
衝撃。
物理的な衝撃ではなく心理的な驚きに、思わず声を漏らす。
「む……!
ぐはっ!?」
「ど、どうしたんスか店長!」
「た、たいへん!
血が出ていますよ、ゼンジさん!」
俺は盛大に鼻血を噴き出し、顔面をのけぞらせる。
そのまま湯舟の縁に後頭部を預け、ぐったりと力を抜く。
いや、のけぞっている場合じゃない。
俺は身を起こし、前かがみの構えを取る。
「だ、大丈夫ですか!?」
慌てて動いたリンが湯を押しのけてざばりと波を立てる。
その動き、その感触……。
水圧で柔らかく変形する豊かな膨らみ。
きめ細かな肌。
細くくびれたウエスト。
そういったものが、立体的な質感を持って感じ取れてしまう。
立体だ。
上乳と下乳と横乳、そして谷間。
目でこれを同時に見ることはできない。
南半球と北半球を同時に観測するようなものだ。
しかし水はすべてを包みこみ、同時にそれを感じさせる。
水圧と浮力と温度……。
視覚情報とはまるで違う情報量が脳に叩きこまれる!
脳が溶ける!
リンが慌てた様子で俺の額に手を当てる。
俺の体温はさぞ熱くなっていることだろう。
「す、すごい熱です!
のぼせちゃってますよ!?」
俺はうわ言のようにつぶやく。
「う……。
大丈夫だ、問題ない。
いや……新しい世界が広がって……。
次元の狭間が垣間見えたたけだ」
む……いかん。
ふらついて湯に沈みそうになる。
トウコがあわてて、心配そうな声を出す。
「店長、集中しすぎっス!」
トウコが水をかき分けて動く。
若い肌が水を弾いて押し返す。
俺を支えようと動いてくれているらしい。
俺はぼんやりとした頭でそう思う。
頭がゆだってしまっている。
正常な判断ができない……。
トウコの体つきは平坦ではない。
むしろ小柄な体格にしては立派だと言える。
しっかりと主張する女性的な丸みが存在しているのだ。
「がはっ……!」
いかん、さらなるダメージが!
能力を振り絞りすぎて死ぬ寸前の超能力者みたいになってきた!
鼻血だけでなく目血が出そうだ!
「ちょっと店長、スキルを解除するんスよ!?
さっきから魔力を使いすぎてるっス!」
水生成で魔力を使わせたことを心配しているのか?
まあ、これは魔力枯渇とは違う。
知恵熱みたいなもの……。
その上位版の叡智熱だ。
頭に血が登ったり、下がったりしただけ。
紳士としてきわめて健全な反応だと言える。
「そう、だな……解除した。
ちょっとのぼせたかもしれん。
少し休むよ……ふう」
俺はぐったりと湯舟のへりにうつぶせに寄りかかる。
休まねば……。
しかし、ヤバいね!
禁断の術を身につけてしまったぞ!?
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