謎の盾の正体に迫る!
ボス部屋を立ち去る前に魔石を拾っておく。
ボスの魔石を収納に――
おっと、入らないか。
どうやら【魔石収納】の容量が足りないらしい。
前回のベアラットと同じ結果だ。
よし、ちゃちゃっとスキルレベルを上げてしまおう。
ポチっと。
これで【魔石収納】はレベル三だ。
これなら入るはず!
再チャレンジ!
「よし、収納成功!」
魔石を調べたり使ったりするのは後回しだ。
クラフトをしている場合ではない。
今はダンジョンの出口に向けての移動が優先だ。
俺は男に問う。
「先に聞かせてもらっていいですか?」
「は、はい。もちろん」
「さっき、空中に盾が現れましたよね。
あれをやったのはあなたですか?
それとも奥さん?」
男が自信なさげに言う。
「僕……だと思います。
どうやったのかわかりませんが……」
「もともと、そういう力を持っていたわけではないんですね?」
男が勢いよく首を横に振る。
「あ、ありません。
そんな超能力みたいなもの!」
「てことは、ピンチ覚醒っスね!
愛の力っ! ヒューヒュー!」
「茶化すなよトウコ。
ということは、この場で使えるようになったのか。
今も使えますか?」
男が困惑の表情を浮かべる。
「は、はい。え、ええと……。
さっきは、こうやって……あっ!」
男の前に盾が現れた!
盾はぼんやりと光りを放ち、空中に浮かんでいる。
先ほどよりも小さく、鍋のフタくらいだ。
「出たっス!
でもちっさ!」
「さっきは全身を隠せるくらい大きかったよな」
ゴブリンの槍を防いだときはタタミ一畳分ほどだった。
サイズの調整が利くらしい。
トウコが男の正面に回り込む。
後ろ歩きしながら、盾越しに男を見ている。
「おーっ!?
透けて見えるっス!
ちょっと撃ってみても……あだっ!?」
俺はトウコの首根っこを掴んで引き戻す。
「やめい!
エドガワ君のときと同じ轍を踏むな!」
「へへ、そうっスね」
トウコがペロッと舌を出す。
冗談でも銃を人に向けてはいけない。
そういうやらかしは、もう満腹だ。
まったく。
学習してくれよ。
男の妻が空中に浮かぶ盾を不思議そうに見ている。
そして、おそるおそる指を伸ばす。
「これ、あなたが出したの……?」
「そうみたいだ。あれ?」
妻の指が盾に触れると、ぴしりと盾にひびが入る。
そしてすぐに砕け散ってしまった。
ずいぶんと脆い盾だな。
触れただけで壊れてしまったぞ。
驚いて女性が指を引っ込める。
「あっ!?」
男が慌てる。
「だ、大丈夫か!?」
「ご、ごめんなさい。大丈夫よ!」
怪我はないらしい。
ふーむ。
俺も試してみたい。
それこそ、刀で斬ったり、殴ったりしてみたい。
安全に配慮したうえで銃撃に耐えられるか試したり……。
だが、今はそんな悠長なことは言ってられない。
男の記憶は消えずに残る。
特殊能力を持っているからだ。
外に出るまでに説明しておかなきゃな。
認識阻害、異能、スキル、ダンジョン……。
帰り道にもモンスターが出るが、数は少ない。
簡単に倒しながら出口を目指す。
「ちな、オッサンは異能者なんスか?」
「い、異能?」
男が困惑の表情を浮かべる。
奥さんは「オッサン……」とか呟いている。
そんなに年じゃなさそうだけどな。
俺よりちょい上くらいだろう。
リンはオッサンのくだりをスルーして、補足をいれる。
「異能は超能力みたいなものですよー」
俺は一応、思いついたことを言ってみる。
ダンジョン内で力に目覚めたなら、スキルの可能性もあるかもしれない。
御庭は悪性ダンジョンに入ってもスキルや職業は得られなかったらしいけど。
「もちろん、ダンジョンは持っていないよな?
スキルだけ手に入った可能性もあるか……?」
「異能とスキル、どっちなんスか?」
「ど、どっちって?」
本人には自覚がないのだから、聞いてもわからない。
調べる方法は簡単だ。
「ちょっとやってもらいたいことが――」
俺はその方法を男に示した。




