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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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思わぬ伏兵と思わぬインタラプト!

 ホブゴブリンが塵となって消える。

 魔石を回収し、俺は周囲を確認する。


 通路で火の手が上がっている。

 こちらまで熱気が伝わってくるほどの激しい炎だ。


 これはリンの火魔法だな。

 巻き込まれたゴブリンはひとたまりもない。

 おそらく通路の敵は片付いたはずだ。


 さらに視線を走らせる。

 まだ、数匹のゴブリンが立っている。


 しかし、既にトウコが動いている。

 両手の短銃身(ソードオフ)ショットガンを構え、続けざまに引き金を絞る。


「ラストショットッ!」


 轟音と共に、二つの銃口から散弾が放たれる。

 散弾が残りのゴブリンを塵に変えた。


「ふーっ。

 これで打ち止め! リロードっス!」


 トウコが荒い息を吐き、片方のショットガンをホルスターに戻す。

 そして、もう一方を装填しはじめる。



 これで立っているゴブリンはいなくなった。


 よし、戦闘終了……。

 と言いかけたところでなにかが動いた。


 なんだ?


 ゴブリンだ!

 床に伏せていたゴブリンが槍を手に身を起こしている!


 狙いは俺ではない。

 トウコでもない。


「ゲヒャッ!」


 ゴブリンが獲物を見定めた獣のように、男と妻に向かって飛びかかる!


 俺はとっさに【入れ替えの術】の狙いをつける。

 集中しろ……急げ!



 妻が悲鳴をあげる。


「ひっ! あ、あなたぁー!」


 同時に男が立ち上がった。

 震えながらも、妻を(かば)うように両手を広げる。


 その表情には恐怖と決意がせめぎ合っている。

 男が震える声で言う。


「今度こそ……君を……!」


 無謀だ!


 ゴブリンの突撃は思いのほか速い。

 槍の穂先が炎を照り返してギラリと光る。


 しかしそれでも、男は逃げなかった。

 歯を食いしばり、両手を広げて叫ぶ。


「たのむ! たった一度……!

 たった一度でいいから守らせてくれ!」


 ゴブリンは邪悪な笑みを浮かべ、突進の勢いを乗せて槍を突き出す。


「グギィーッ!」


 槍の先端が男を貫き、背後の嫁を串刺しに――

 いや! そうはならない!


 槍は届いていない。

 俺が術を割り込ませる前に、既に防がれていた。


 槍が男に届く寸前、何もない空間に波紋が広がり、半透明の壁となって槍を受け止めたのだ。

 槍を受け止めた壁が、ぎぃん、と硬質な音を立てている。


 なんだ!?

 これは盾、か!?


 盾にひびが入り、硬質な音を立てて砕け散る。

 一瞬の膠着(こうちゃく)状態が解けた。


「ギィッ!?」


 ゴブリンが驚きの声をあげ、弾き飛ばされる。

 男はぽかんとした表情で固まっている。


 俺は腰の鉈に手を伸ばす。


「――ていっ!」


 すかさず、ゴブリンへと投擲。

 命中。


 ナタがゴブリンの頭部へ深々と突き刺さり、一撃で葬り去る。



 男が信じられないという表情でへたり込む。


「な……生きて、る……?」


 男は自らの体を手で触り、無事を確認している。


 もちろん、槍はかすってもいない。

 無傷だ。


「あ、あなた……!」


 妻が男にすがりつき、胸に顔をうずめる。

 男と妻はひしと抱き合って喜び合う。


「信じてたわ!

 きっと来てくれると、あなた、うぅ……」


「遅れてごめん!

 君が無事で……助けられてよかった……」


 二人は顔を涙と鼻水でくしゃくしゃにしている。



 トウコがそれを見て、クルっと振り返る。

 何が起こったかわからない、と言いたげな顔だ。


「な、なんスか……?

 店長が何かやったんスか?

 バリアの術みたいなヤツ!」


 そんな術はない。

 あったら欲しいくらいだ。


 俺は首を横に振る。


「いや、俺じゃない。

 ……男か奥さんのどちらかだよな」


 まさか、今まで能力を隠していたのか?

 いや、そんなはずはない……。


 そんな力があるなら最初から使っているはずだ。


「じゃあ、新手の異能使いっスか!?」


 トウコが表情を険しくして、装填を終えた銃を構え直す。

 さすがに男に向けたりはしない。


 俺も警戒は緩めていない。

 だけど、彼らを疑う気にはなれなかった。


 俺たちを(あざむ)いてもなんの得もないからだ。

 わざと足を引っ張ろうとか、危険な場所に誘い込もうとした素振りはなかった。


 表情や行動にも嘘はない。

 演技で(おび)えていたのなら、たいしたものだ。


 今も涙を流し、鼻水を(すす)り、妻と無事を喜びあっている。

 そんな男が敵だなどとは考えられない。


「確認は後だ。今はそっとしておいてやろうぜ」

「そっスね!」


 今度こそ、部屋に敵の姿はない。

 通路からも戦闘音は聞こえない。


 俺は通路に向けて声をかける。


「リン! そっちは無事か!?」


 すぐにリンが叫び返してきた。


「はーい。

 こちらは終わりましたー!」

「こっちも終わった。

 戻ってきてくれ!」


「すぐいきまーす!」


 声の調子からして、リンに負傷はなさそうだ。

 うまくやってくれたらしい。


「よし。

 今度こそ戦闘終了だ!」

「おつっス!」


 とはいえ、まだダンジョンの奥である。

 戦闘の後始末をして、脱出するまで気は抜けない。

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