ゴブリンのす、巣窟!
意識がとぎれ、つながる感覚。
暗転した視界が戻ったとき、俺は岩に囲まれた場所に立っていた。
ダンジョンだ。
暗い。
だが、すぐに目は慣れてくる。
最低限の光源はあるようだ。
岩壁に発光するコケが生えている。
俺のダンジョンに似ているな。
やはりゴブリンはこういった場所を好むのだろうか。
すぐ近くで男が驚きの声をあげる。
「な、ここは……洞窟!?」
思えば俺も最初はこんなリアクションをしていたな。
「ダンジョンの中だ。
落ち着いて、離れずについてきてくれ」
俺は収納から盾トンファーを取り出してリンに手渡しながら言う。
男が驚いているが、いちいち説明してはいられない。
「リン、明かりを頼む」
「はーい。ファイアボール!」
リンの前に小さな炎の球が浮かび上がる。
狐火のようにふわふわと滞空している。
火の球だからセーフ!
いまさらツッコむまい。
今日はリアクションしてくれるお客さんがいると思えばいい。
案の定、男は空中に現れた炎に目を丸くしている。
「火!?
ま、魔法……!?」
「さすがリン姉っス。
ファイアボールじゃない定期っ!」
リンは二人をスルーして前方を指差す。
「あ! 敵さんが来ましたよー!」
「んじゃ、あたしが片付けるっス!
うらうらっ!」
洞窟の奥からゴブリンが姿を見せる。
それと同時にトウコの銃が火を噴いた。
洞窟に銃声が響き渡る。
男が耳を押さえて身をすくめる。
「や、やっぱり銃ですよね!?
どうして銃が……。
ここは日本ですよ!?」
トウコがあきれ顔で言う。
「いまさらソコっスか?
これは合法な銃っス!
それにここはダンジョンだからオッケーっス!」
スキルで生み出した銃に合法も違法もない。
ダンジョンで法律など通じない。
「合法な銃って……」
「細かいことはいいんスよ!
文句があるならゴーホームっス!」
そんな会話を続けながら洞窟を進んでいく。
先頭は分身。続いて俺。
トウコ、男、リンの順で進む。
分身を先頭に立てているのは、罠を警戒してのことだ。
棒やローラーは持ち込んでいない。
これは最低限の配慮である。
たびたびゴブリンが襲ってくる。
散発的で、まとまった数ではない。
たいていはトウコが撃退してしまう。
俺はあまり前に出ず、背後の男を守ることを優先している。
この先で、道が分かれている。
男が言う。
「て、手分けして探しませんか?」
「駄目だ。遭難の心配がある」
「でも……」
男が食い下がろうとする。
トウコが頭の後ろで手を組んで半眼で言う。
「オッサンがいなければ平気なんスけどねー」
「トウコちゃん……」
本当のことを言ってはいけない。
男はうぐっと言葉を詰まらせて、わなわなと震えている。
あまり追いつめてやるな。
「一人で行く、なんて言うなよ?
実際、かなり危険なんだ」
ゴブリンだから大丈夫、などと考えてはいけない。
奴らの攻撃など、当たらなければどうということはない。
しかし当たれば大ケガだ。
最悪は死ぬ。
人一人守るとなると、難易度がまるで違う。
俺は断固たる口調で続ける。
「安全第一だ。
救助に来た俺たちが遭難するわけにはいかない。
わかってくれ」
「そ、そうですか。わかりました……」
男はしょんぼりと肩を落とす。
はやる気持ちはわかる。
「少し急ぐぞ。
きつかったら言ってくれ」
「は、はい。
……ありがとうございます」
気遣いが伝わっただろうか。
男はなんとか礼を返してくれた。
俺は安全に進める限界まで足を速めた。
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