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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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避難誘導は非常出口で!? その3

 先ほど俺が入ってきたドアが見当たらない。


 道を間違えたか?

 いや、そんなはずはない。


 なにしろ、ほとんど一本道なのだ。

 ここであっている。


 だが、ドアがあるべき場所にはのっぺりとした壁があるだけ。

 どういうことだ……?


 なにか異変を見逃しただろうか。


「ここにドアがあったはず……」

「おいおい!

 お兄さんさ、適当なこと言わないでくれよ!」


 スーツケース男が不機嫌な声をあげる。

 なんでこいつはこんなに偉そうなんだ。


 俺は男を無視して携帯端末をチェックする。

 ちゃんと電源は入っている。

 気づかないうちにダンジョン領域に入ったわけではない。


 ダンジョンなら地形くらい変わってもおかしくないが……。

 俺の記憶や方向感覚がおかしくなっているのか?


 さっきの毒の影響か?

 幻覚でも見せられているのか?


 あるいは、なにかの攻撃を受けている!?

 だとすると近くに敵がいるかもしれない。

 あるいは、避難者を装っているのかも……。


 疑心暗鬼に陥ってしまいそうだ。

 むやみに疑ってはいかん。だが油断もできない。

 俺は警戒を一段階引き上げる。


 落ち着け……。

 一つずつ探るんだ。


 目の前にドアは見当たらない。

 しかし、場所はここで間違いない。


「おい兄さん!

 黙らないでくれよ!」


 男が俺を突き飛ばそうとするかのようにを手を伸ばしてきた。

 とっさに、俺はそれを避けて後ろに跳ぶ。


 少し過剰に反応してしまった。

 勢い余って、俺の背が壁に触れる。


 スーツケース男があわてたように言う。


「す、すまん。

 突き飛ばす気はなかった!」

「いや、俺が飛び退いただけだ。

 でも、おかげで出口が見つかったよ!」


 俺の背は壁とは違う音と感触を受け取っている。

 金属のドアにぶつかったような手ごたえだ。


 本来の姿は隠されているらしい。

 見た目と感触が違う。

 ドアはなくなったのではなく、見えないだけでここにある。


 目を凝らしても、ドアは見えない。

 ドア枠も、扉の(みぞ)も見当たらない。

 ドアノブすらも見えない。


 だが、あるはずだ。

 このドアは外側に向かって開く金属製の防火扉だ。


 手探りでドアノブを探る。

 ドアノブの位置はたしかこのあたり……。


 あった!


 俺はドアノブをひねり、扉を外側へ押し開ける。

 その先に非常階段が見えた。


 それを見てスーツケース男が驚く。


「おお……!?

 ええと、見間違いか?

 ドアが急に現れたような……。

 すまん。疑って悪かったな、兄さん!」


 ややぼんやりした顔で男が頭を下げる。

 この反応は、おそらく認識阻害を受けたのだろう。


 見間違いではない。

 ドアは直前まで隠されていた。

 これは俺からみれば不自然で、なにかの能力だと確信できる。


 だが、一般人は異能やスキルの効果を認識しにくい。

 今回の出来事は見間違いとして処理されたようだ。


 俺は男に笑顔を返して、手で出口を示す。


「かまいませんよ。

 さあ、気をつけて避難してください!」


 俺は防火扉を押さえて、人々が避難するのを見送る。

 全員が外に出たことを確認して、フロアに戻ってドアを閉める。


 確かめなければならないことがある。

 ドアを閉め、扉を確認する。


 完全に閉まると、すっと扉が消えてしまう。

 まるで上から幻を被せたみたいだ。


 やはり、これは普通の現象ではない!


 異能か、スキルの力だ。

 ハルコさんの幻の壁に似ている。


 誰が、なんのために?


 ハルコさんではあり得ない。

 疑う必要はないだろう。

 第一、こんなことをする動機がない。


 そもそもハルコさんには不可能だ。

 彼女は下の階にいたから、効果範囲外になる。

 幻の異能は遠く離れると効果を失うのだ。


 これは別の能力だ。

 避難を妨害しようとする者がいるのか!?


 まだ近くに潜んでいるのか。

 あるいは、能力がもっと強力なのか……。


 皆が心配になってきた。

 早く仲間と合流したい。


 だがもう一つ確認しておかなければ。


 さっきの避難標識だ。

 逆方向を指していた、非常口へ誘導する矢印である。


 ナタで緑の標識を叩く。

 樹脂で作られた標識が割れる。


 破壊された標識があった部分に、矢印だけが一瞬残った。

 薄い液晶ディスプレイのような幻だ。

 厚みのない映像のようなそれは、残像のように揺らいで消える。


 土台である標識が壊れたから消えたのだろうか。

 ドアを開けたときも同じだ。

 動かすと幻は消え、ドアを閉めるとまた見える。


「やはりそうか……!

 これは幻の一種。

 誰かが映像を貼り付けているんだ!」


 これはただの悪性ダンジョンじゃあない!

 御庭の言う通り、この事件はきな臭い。

 明らかに仕組まれている!

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