被害状況の確認!
非常階段を駆け上がる。
三十五階部分を抜けるとそこは通常領域だ。
エドガワ君の報告通り、三十六階は正常。
フロアの確認は後回し!
先に次の階を見る!
手すりを掴んでぐりんっと方向転換。
階段を踏みしめ、上へ上へと走る。
三十七階はどうだ!?
ここも階段部分は領域化していない。
三十八階の階段部分に入ったところで、空気が変わった。
音の反響や温度がわずかに違う。
「領域に入った!」
この階はダンジョン領域内だ!
さらに上の階を確認してもいい。
だが、まずはこの階を調べよう。
戦闘になる可能性が高いだろう。
俺は息を整え、腿を揉んでたまった疲労を逃がす。
時間は惜しいが、無理はできない。
領域内に入ったことで体力のステータス補正が有効になっている。
【瞑想】の効果も得て、短い時間で息が整った。
収納から取り出した刀を握る。
この際、人に見られる心配は置いておく。
モンスターへの警戒を優先しなければならないからな。
「ふう。よし、行くか!」
フロアはどうなってるかな?
俺はゆっくりと金属製のドアを開き、中をのぞき込む。
廊下が見える。
高級ホテルらしく、少し広めだ。
視界が悪いな。
照明が消えていて薄暗い。
さらに霧のようなモヤまでかかっている。
廊下に人影はない。
かわりに、化け物がいた。
白く、細長いシルエット。
体は白い鱗に覆われている。
アナコンダのような大蛇だ。
太さは人間の腕、いや足のようにがっしりしている。
鱗が光を反射して、怪しく輝いている。
そいつ――白い大蛇が鎌首をもたげ、赤い目で俺を睨む。
目が合った!
ヘビのモンスターが威嚇するような音を発する。
「シャァアッ!」
「おおっ!?」
俺はとっさに背後へ跳ぶ。
攻撃の届かない距離まで離れた。
ヘビが身をよじり、ずりずりと近寄ってくる。
思いのほか滑らかで素早い動きだ。
白い大蛇がゆらりと首を後ろへ引く。
そしてがぱり、と大きく口を開いた。
開口部は俺の頭を丸呑みにできそうなくらいに大きい。
つまり、丸のみにされる可能性があるってことだ。
ヘビは鋭い牙を見せつけるようにして、体を揺すっている。
まるで狙いをつけているような……?
「――ッ!」
なにかヤバい。
そう感じると同時に俺は後ろに跳んでいた。
「シャァーッ!」
足元に液体が降りかかる。
つんと、刺激的な匂いが鼻をつく。
「毒かっ!?」
口元を押さえ、背後へ跳んで距離を取る。
腰袋に手を入れ、投げナイフを掴み出す。
着地と同時に三本のナイフを投擲する。
命中。
しかし硬質な音を立て、ナイフが鱗に弾かれる。
硬い!
あるいはヒットポイントか!?
さらに背後へ下がる。
ヘビが追ってくる。
俺の背後には非常階段へ続くドアがあるが、閉まっている。
これ以上は下がれない。
振り向いてドアを開け、外に出る?
それは無理だ。
ヘビはゆらゆらと体を揺らし、こちらを凝視している。
背を向ければやられる。
なら、背を向けずにドアを開ければいい!
「分身!」
分身を背後へ放ってドアを開ける。
すかさずそこへ飛び込む。
「シャアアッ!」
逃げる俺を追うようにヘビが非常階段へと突っ込んでくる。
逃げたら追いたくなるものだ。
俺は刀を構えて待ち受けている。
ヘビの頭部がドアを抜けてきた。
調子に乗って追ってきたな!
体の大部分はフロアに、頭部だけがドアの外になっている。
つまり、動きが制限される!
「フルスイングッ!」
振りかぶった刀の峰が顔面に炸裂する。
発動したノックバック効果がヘビの頭を吹き飛ばた。
ヘビの首が勢いよくドア枠にぶち当てる。
ヘビの頭部がバウンドして戻ってくる。
そこへ、さらに追撃!
「ファストスラッシュ、ピアススラスト!」
二連の突き。
鱗を削り取り、その下の肉を切り裂く。
ヘビが首をよじるようにして突っ込んでくる。
だが遅い。
俺はくぐり抜けるようにしてかわす。
「インパクトストライクっ!」
峰による打撃を頭部へ打ち込む。
衝撃が内部へと伝わっていく感覚。
ヘビの体がびくりと跳ねる。
しかしヘビはのそりと身を起こす。
むっ!?
思ったほどの効果はなかったようだ。
気絶や脳震盪を期待したんだが。
体の構造が人間とは違うのか?
まあ、ダメージは通っている。
攻め続けよう!
ペットボトルをヘビの眼前へと無造作に投げる。
「操水!」
水がヘビの頭部へ伸びる。
水を操り、口元を覆う。
口が開くと厄介だ。
このまま締めあげる!
ヘビがのたうつ。
「とどめだっ!」
そこへさらに刀で斬り込む。
ヘビの体が力を失い、頭部がぐったりと床に落ちる。
体が塵に変わり、魔石が転がる。
「ふう……なかなか手ごわかったな!」
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