表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1180/1498

高層ホテルの悪性ダンジョン攻略!

「クロウ君。

 今回の件は、情報の動きがおかしい。

 まるで握りつぶされているような感じだ。

 よく注意して欲しい」


 何者かが情報を操作している?

 うーむ。

 組織間の権力闘争でもあるんだろうか?


 公儀隠密は組織内での地位が低いらしい。

 前に御庭が言っていた。

 実力が低いわけではないが、あまり評価されていないのだ。


 公儀隠密は異能とダンジョン関連の事件を担当する。

 この頃増えているとはいえ、ダンジョンが関わった事件はそれほど多くない。


 さらに、事件は認識されずにひっそりと終わることが多い。

 大活躍して認められる、ということがないのだ。


 認識阻害や異能について理解している組織なら、俺たちの活動をもっと評価していいと思うけどな。


 まあ、それはどうでもいい。

 そういうのは俺の管轄外だ。

 組織の地位向上とかは御庭に任せておこう。


「気に留めておくよ、御庭。

 まあ、俺がやることは変わらない。

 現場に行ってダンジョンに巻き込まれた人を助ける。

 ついでにトクメツに手を貸してやるだけだ」


 御庭がうなずく。


「うん。さすがクロウ君だ。

 状況がわかり次第、情報端末に送らせてもらう。

 現場での判断はクロウ君に任せるよ。

 責任は全部、僕が取るからね!」


「おう。任された!」

「いつも通り、生きて帰ってくることが最優先だ。

 頼んだよ!」


 そう言うと御庭はさわやかな笑顔を浮かべ、俺を送り出した。



 一度自室に戻る。

 リンに声をかけて経緯を説明した。


 トウコはまだ帰ってきていない。

 現場に向かいながら車で拾うことになった。


 手早く装備を整える。

 収納には忍者刀、ポーション手拭い、トンファー盾、リカバリーポーション手拭いを入れる。


 目的地は市街地だ。

 目立つ防具を身につけることはできない。


 一見して忍者とはわからない現代的な装備を選ぶ。

 オシャレな作業服のような、防刃素材の服である。


 腰袋を下げ、クギ少々と投げナイフを入れる。

 ベルトにナタを吊る。

 これは上着である程度隠れる。


 おっと、水入りペットボトルも持っていかねば。


 準備を整えた姿を鏡に映してみる。

 うむ。まあ悪くない。

 ホテルの宿泊客としてはそぐわないかもしれないが、見とがめられるほどではないだろう。



 ――トウコと合流し、現場に到着した。

 車を降りて、ホテルを仰ぎ見る。


 立派な高層ホテルだ。

 一昔前の俺なら、泊まることなどできそうもない高級ホテルだ。


 ホテルの外観に異常はない。

 道行く人々にも混乱は起きていない。


 ハルコさんが手を振りながら駆け寄ってきた。


「ゼンゾウさーん。

 こっちですよぉー!」

「ハルコさん。

 状況はどうですか?」


 話しながらホテルに入る。

 エントランスも豪華で、広々としている。


「今、サタケさんがホテル側と話していますぅ」

「まだ交渉中か」


 サタケさんの姿は見えない。

 どこか別の場所で交渉を行っているのだろう。


「はい。

 避難を始めるよう交渉中ですぅ」


 ホテルのエントランスには人が多い。

 低層階にはショップやレストランもあって賑わっている。


 従業員も客も、ごく普通の日常を生きている。

 観光客らしき子供連れが、大きな荷物を引いて受付に向かっている。

 従業員が笑顔でそれを迎えている。


 まだ、避難を促すアナウンスは流れていない。

 だがこのホテルの中で、異常事態が起きている。


 目立つ活躍をして評価されることなど、どうでもいい。

 誰にも気づかれなくたっていい。

 俺はこの平和な日常を、人々の普通の生活を守るのだ!



 リンが心配そうに眉をひそめる。


「人が多いですねー。

 早く避難してもらわないと……」

領域(りょーいき)が広がってきたらヤバいっス!」


 俺は二人にうなずき、ハルコさんに聞く。


「そうだな。

 ハルコさん。

 ()()は上層階と聞いたが、状況はどうだ?」


 移動中にハカセから送られた情報に目は通した。

 ある程度の状況は把握しているが、もう情報は古くなっているだろう。


 欲しいのは今の状況だ。

 先に到着したハルコさんから、現場の声を聞きたい。


「上層階の監視カメラの映像が映らないみたいですぅ。

 でも、ホテルの人たちは疑問に思っていないみたいですねぇ。

 これって、認識阻害のせいなんですかぁ?」


「ああ。そうだと思うぞ」


 ダンジョンがらみの問題には認識阻害が働く。

 多少の違和感は無視されてしまう。


「ですよねぇ。

 サタケさんの説得も、あんまり伝わらないみたいですぅ」


 ダンジョンが発生したから逃げろ!

 などと一般人に説明することはできない。


 ダンジョンについて説明せずに避難を呼びかけるのは難しい。


 公儀隠密は国のために動く秘密組織だが、公の組織ではない。

 公権力を直接使うことはできない。


 警察などに手を回すのには、もう少し時間がかかる。

 そちらは御庭が手配しているはずだ。


 俺は声をひそめ、ハルコさんにたずねる。

 他人には聞こえないよう注意する。


「悪性ダンジョンの状況は?

 場所や数はわかったか?」

「いいえぇ。

 まだわかっていません。

 上層階行きのエレベーターが動かないみたいですぅ」


「ふむ。上層が領域にのまれて、電源が使えなくなったのかもな」


 このホテルのエレベーターは二種類。

 上層階行きと中層階行きだ。


「いま、トオル(エドガワ)君が上層階の確認に向かっています。

 二十階までエレベーターで昇って、そこからは階段みたいですよぉ」


 低層階にはレストランやショップが集まった商業エリアだ。

 二十階までの中層階はオフィスや会議室が入っている。

 ハカセの調べでは、ここまでに異常はない。


 異常があるのは上層階だ。

 二十階より上は宿泊スペースだ。

 展望スパやプールなども備えているらしいが……。


「このホテルは四十階建てだったよな?

 となると階段で登らなきゃならないのか」

「うえぇ。めんどいっスね!」


 ハルコさんが腕のスマートウォッチを見る。


「あっ!

 トオル(エドガワ)君から通話がきましたぁ。

 もしもし、トオル君?

 ゼンゾウさんたちが来てくれましたぁ!

 通話を繋ぎますねぇ」


 俺たちの端末に多人数通話への招待メッセージが表示される。

 承諾の操作をすると、エドガワ君の声が聞こえてくる。


 エドガワ君の声には危機感がにじんでいる。


「クロウさん!

 こちらエドガワです!

 三十五階の階段部分に異常がありました。

 ダンジョン領域です!」


 場所は三十五階か!

 まずはエドガワ君に合流しよう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ