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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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疑え。だが迷うな!

 鍵宝箱を発見した。

 宝箱の前に片膝をついたスナバさんに、俺は聞く。


「どうですか?

 手ごたえが変じゃありませんか?」


 事前に鍵宝箱について話しておいた。

 持ってきてもらった鍵開け道具で、スナバさんが鍵開けに挑戦している。


 一度では開かず、道具が壊れた。

 俺がやった場合と同じだ。


「たしかに妙な手ごたえだ。

 ……開いたぞ」


「それでスナバさん。

 どう思いました?」

「不思議だな。

 だが、開いたのだから問題ない」


 スナバさんは宝箱の中を見てつまらなそうに……淡々とした様子で立ち上がる。


 宝箱の中身は食料だった。

 スナバさんはそれを見たが、手に取ることはない。


 これまでの宝箱と同じだ。

 スナバさんに同行させていた自律分身はボス戦の前に消した。

 記憶のフィードバックを見たが、スナバさんは魔石や戦利品に興味がないようだ。


 宝箱の中身だけじゃなく、鍵の不思議さについてのコメントもないらしい。

 俺としてはちょっと物足りない反応だ。


「それだけですか?」

「それだけだ」


 話は終わりだった。

 あれ……スナバさんも気にならないのか。


「俺としては、鍵の仕組みや道具が壊れる理由が気になるんですけどね」

「クロウは妙なことを気にするな。

 ダンジョンで不思議なことが起きるのは当たり前だろう。

 気にする意味がない」


「そういうものですか……」


 まあ、そうなんだけどさ。

 ずいぶんと、あっさり割り切るなぁ。

 スナバさんはダンジョンを、そのまま受け入れているらしい。


 現実では起こりえないファンタジーな出来事を、当たり前だと受け入れている。

 目の前で実際に起きているのだから、疑う余地がないといった具合で。


 スナバさんのダンジョンには恐竜が出る。

 そこで、なぜ恐竜が、とかそんなことを考えていては死ぬだけだ。


 いくつもの悪性ダンジョンを目にしてきたはずだ。

 スナバさんはそれを、現実として受け入れたのかもしれない。


 俺はそんな簡単には割り切れない。

 いや、ダンジョンの存在は信じている。


 ファンタジーな出来事に対して、細部に疑問を持ってしまうだけだ。


「やっぱり、こういうのを気にしてるのは店長だけっスねー」

「ゼンジさんに教えてもらわなかったら、気づけませんでした。

 言われてみるとふしぎですよねー」


「気にしても仕方がないのかもな……」


 やや気落ちした様子で俺はつぶやく。

 それを聞いてスナバさんが真顔で言う。


「疑問を持つのは悪くない。

 だが迷うな」


「そうですね。

 鍵がどうあれ、宝箱はちゃんと開く。

 迷ってもしかたがないか」


「そうそう!

 お宝が入っているならオッケーっス!」


 宝箱があれば開ける。

 それでいい。


 リンがずいっと俺に身を寄せる。


「私はゼンジさんが気になること、気になりますよっ!」


 意味がないことを考えてもいい。

 そのために足を止めなければいいのだ。

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