疑え。だが迷うな!
鍵宝箱を発見した。
宝箱の前に片膝をついたスナバさんに、俺は聞く。
「どうですか?
手ごたえが変じゃありませんか?」
事前に鍵宝箱について話しておいた。
持ってきてもらった鍵開け道具で、スナバさんが鍵開けに挑戦している。
一度では開かず、道具が壊れた。
俺がやった場合と同じだ。
「たしかに妙な手ごたえだ。
……開いたぞ」
「それでスナバさん。
どう思いました?」
「不思議だな。
だが、開いたのだから問題ない」
スナバさんは宝箱の中を見てつまらなそうに……淡々とした様子で立ち上がる。
宝箱の中身は食料だった。
スナバさんはそれを見たが、手に取ることはない。
これまでの宝箱と同じだ。
スナバさんに同行させていた自律分身はボス戦の前に消した。
記憶のフィードバックを見たが、スナバさんは魔石や戦利品に興味がないようだ。
宝箱の中身だけじゃなく、鍵の不思議さについてのコメントもないらしい。
俺としてはちょっと物足りない反応だ。
「それだけですか?」
「それだけだ」
話は終わりだった。
あれ……スナバさんも気にならないのか。
「俺としては、鍵の仕組みや道具が壊れる理由が気になるんですけどね」
「クロウは妙なことを気にするな。
ダンジョンで不思議なことが起きるのは当たり前だろう。
気にする意味がない」
「そういうものですか……」
まあ、そうなんだけどさ。
ずいぶんと、あっさり割り切るなぁ。
スナバさんはダンジョンを、そのまま受け入れているらしい。
現実では起こりえないファンタジーな出来事を、当たり前だと受け入れている。
目の前で実際に起きているのだから、疑う余地がないといった具合で。
スナバさんのダンジョンには恐竜が出る。
そこで、なぜ恐竜が、とかそんなことを考えていては死ぬだけだ。
いくつもの悪性ダンジョンを目にしてきたはずだ。
スナバさんはそれを、現実として受け入れたのかもしれない。
俺はそんな簡単には割り切れない。
いや、ダンジョンの存在は信じている。
ファンタジーな出来事に対して、細部に疑問を持ってしまうだけだ。
「やっぱり、こういうのを気にしてるのは店長だけっスねー」
「ゼンジさんに教えてもらわなかったら、気づけませんでした。
言われてみるとふしぎですよねー」
「気にしても仕方がないのかもな……」
やや気落ちした様子で俺はつぶやく。
それを聞いてスナバさんが真顔で言う。
「疑問を持つのは悪くない。
だが迷うな」
「そうですね。
鍵がどうあれ、宝箱はちゃんと開く。
迷ってもしかたがないか」
「そうそう!
お宝が入っているならオッケーっス!」
宝箱があれば開ける。
それでいい。
リンがずいっと俺に身を寄せる。
「私はゼンジさんが気になること、気になりますよっ!」
意味がないことを考えてもいい。
そのために足を止めなければいいのだ。
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