ロックピック・リベンジ!
やり方を理解したうえで、ちゃんとした道具を使って鍵開けを行う。
慎重に、丁寧に……。
「おっと、道具が折れたな」
「壊れやすいものなんですか?」
使ったのは、外から持ち込んだ市販品だ。
金属のピックである。
「いや、こんなに簡単に折れるはずはない。
現実の鍵で練習したときは折れなかったんだけど……」
力よりも繊細な技術を使う作業だ。
「やっぱり、宝箱の鍵穴がおかしいんでしょうか?」
「そうだろうな。
一定確率で鍵開け道具を破壊する効果がある、とかかも」
再び挑戦。
宝箱の前に膝をつき、神経を指先に集中させる。
かちり、と鍵が開く手ごたえ。
開いた! 成功だ!
俺は宝箱のフタを開けながら言う。
「よし! うまくいったぞ!」
「わあ! おめでとうございまーす!」
リンが目を輝かせて褒めてくれる。
宝箱の中身は干し肉と水だった。
正直、中身はどうでもいい。
自力で開けたことこそが報酬なのだ。
それが何より嬉しい。
「これで、技術でも鍵が開けられると証明できたな!」
「練習の成果がでましたねー!」
鍵つき宝箱は、専用の鍵アイテムを使えば簡単に開錠できる。
ただし鍵は使い捨てで、使うと塵になって消えてしまう。
鍵アイテムを使わなくても、技術で開錠できる。
この時に使った道具は確率で破壊されるようだ。
そういうことなのだろう。
やっと納得できた。
「さて、次は合鍵を作ってみるか!」
「忍具作成さんを使うんですねー!」
宝箱のタネはわかった。
次は【忍具作成】で鍵を作る。
アイテムの鍵と同じ形状にすればいい。
現実の鍵であれば、適当な合鍵を作っても意味がない。
だが、この宝箱の仕様が想像通りなら、どんな形状の鍵でも通用するはずだ。
材料は持ち込んだ五寸釘を使う。
棒手裏剣はスケルトン相手には当てにくい。
わざわざ持ち込んだのは、こういう使い方をするためだ。
使いたいときに材料がないと困る。
前回の反省を活かして、少量持ち歩くことにしたのだ。
イメージを固め、心の中でつぶやく。
頼むぜ忍具作成君!
「よし、完成! 合鍵ができたぞ!」
「うまくいきましたねー!」
順調順調!
見た目はアイテムの『錆びた鍵』と違いはない。
錆び具合まで見事に再現されている。
よっ! 匠の技術!
「リン。これを鑑定してくれ」
リンが【サポートシステム】に【物品鑑定】させる。
「えっ? システムさん。そうなの?」
「結果はどうだった?」
リンが少し言いにくそうに言う。
「ええと――名称は錆びた鍵でした。
でも、カテゴリは忍具でしたー」
「ほう。鍵カテゴリじゃないのか」
「錆びた鍵は、特別なアイテムなのかもしれませんね」
一発で開錠する効果はないかもしれないな。
だが問題ない。
そこまでは期待していないからだ。
「形は似ているし、開錠道具として使えれば充分だ。
さっそく、次の宝箱で試そうぜ!」
「はいっ!」
リンとうなずき合っていると、敵を倒したトウコがやってきた。
「ふー。敵は片付いたっス!」
「お疲れ!
じゃあ次の箱を探しに行くぞ!」
俺はそそくさと通路へ向かう。
トウコが後ろから声をかけてくる。
「おー?
今日は妙にやる気っスね、店長!
なら、敵はあたしが蹴散らすっス!」
「お、頼もしいな!
よし、敵に風穴を開けるのは任せた!
俺は鍵を開けるぜ!」
「私もお手伝いしますね!」
その後、駆け足で迷路を探し回り、片っ端から宝箱を開けていった。
鍵がかかっていない宝箱がハズレに見える!
来い、鍵宝箱!




