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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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シュレーディンガーの鍵穴!?

 リアダンの攻略は順調に進んでいる。

 六階層を踏破して七階層へと足を踏み入れた。


 現れるのはスケルトンばかりだ。

 盾持ちや弓矢持ちのスケルトンが現れるが、さほど手ごわい相手ではない。


 面倒なのは地形である。

 ひたすらに広く、迷路は複雑だ。


 どうやらリアダンは階層が進むごとにフロアの面積が広がっていくようだ。


 移動距離が長くなるうえ、敵の出現数も多い。

 そのため、戦闘ばかりになって探索が長期化する。


 安全地帯がなかったら、長く潜るのは難しいだろう。

 安心して休憩できるのはありがたい。


 部屋や通路の行き止まりに宝箱が配置されていることがある。

 配置場所や中身はランダムで変わるようだ。


 同じルートを巡回しても、得られる成果が違う。

 これは、俺のダンジョンとは違う点だ。



 六階層からは鍵つきの宝箱が現れる。

 当然、開けるには鍵が必要だ。


 鍵宝箱は、これまでに何度か開けている。

 鍵が一本しかなければ気にならないのだが、今は手元に三本の鍵がある。


 並べてみると、見た目が少しずつ違っている。

 鍵の先端部分のデコボコが違っているのだ。


 鍵の形状が異なるのは当然だが……。



 俺は鍵宝箱を前に首をひねる。


「ふーむ。

 どの鍵を使えばいいんだ?」


 宝箱の鍵穴に目印はついていない。

 番号も振ってないし、図形もない。



 リンが鍵の一本を手にする。


「うーん。見た目ではわかりませんね。

 とりあえず、鑑定してみまーす。

 システムさん。この鍵はなーに?」


 【サポートシステム】が姿を現して答える。


<名称:錆びた鍵。カテゴリ:鍵>


「へえ。鍵っていうカテゴリがあるのか」

「ご丁寧(てーねー)にカギまでサビてるんスねー」


 金属製で、手のひらサイズの鍵だ。

 現代の鍵と比べると少し大きい。


 錆が浮いていて、手触りはざらざらしている。


「結局、この宝箱に合うのはどの鍵なんだ?」


 トウコが鍵の一本を差し込んでひねる。


「どれでもいいんじゃないっスか?

 ほら、開いたっス!」


 宝箱は簡単に開いた。

 トウコは得意げな顔で中身をあさっている。


「まぐれ当たりってわけじゃないよな?」

「さあー?

 中身は薬草っスね! しょぼっ!」


「薬草はいくつあってもいいんだよ!

 次の宝箱で別の鍵を確認してみるか……」



 探索して見つけた鍵宝箱に鍵を差し込んで回す。

 同じように開いた。

 どの鍵を使っても開錠できるようだ。


 形状が違うのに鍵穴に合うとはこれいかに!?


 不思議すぎる!

 意味わからないよ?


 次だ!

 次の宝箱を探すぞ!


 探索しながらつぶやく。


「うーむ。

 どの鍵でも開くとはなぁ……」

「だって、アイテムなんだから当たり前っス」


「トウコの言うこともわかる。

 ファンタジーなアイテムと考えれば納得できるさ。

 だけど、この宝箱はゲームのアイテムじゃない。

 目の前にあるのは、確かにそこに存在する物体だ。

 だからこそ、この鍵の仕組みがどうしても()に落ちない」


「まー。たしかにそーっス。

 フルダイブ型のゲームじゃないっスからねぇ」


 俺たちはゲーム世界に入り込んでいるわけじゃない。


 ダンジョンは不思議な場所ではあるが、生身の体で入り込んでいる。

 宝箱だって、物理的に存在している。


 そのはずだ。

 少なくとも俺はそう信じている。


 ダンジョンのルールや仕組みだとして割り切ってもいいのだが……。

 それじゃ困るんだよな。


「ゼンジさんは、鍵の仕組みが現実と違うことを気にしているんですね?」

「そうだ。

 鍵と鍵穴はペアになっているべきなんだ」


 鍵の(みぞ)と鍵穴のピンが噛み合うことで、シリンダーを回せる。

 鍵にもいろんな種類があるが……。


「こだわるっスねー!

 普通はそうでも、ダンジョンだと違うんじゃないっスか?」

「そこなんだよ。

 俺としては、現実と同じであって欲しいんだ」


「そういえばゼンジさん。

 スナバさんと鍵開けを練習するって言っていましたねー?」

「ああ、簡単な鍵なら開けられるようになった。

 鍵穴が現実と違うと、練習の意味が薄れるからな……」


 俺は苦い顔で言う。

 それを聞いて、トウコがわかったような顔でうなずく。


「あー。それで気にしてたんスね!」

「せっかく練習したんだから、使えないと腹が立つだろ」


 鍵穴がファンタジーすぎると、現実的な鍵開けはできない。

 練習した意味がなくなってしまう。


 内部構造が存在しないと鍵開け(ロックピック)は成立しない。


 鍵穴に道具を差し込んで回転させるように圧力(テンション)をかける。

 それと同時に、ピックを差し込んで内部のピンを押して揃える。


 テレビでは放送できない手順だ。

 手元にモザイクがかかりそうな作業である。


 前に鍵開けを試したとき、確かに手応えを感じた。

 鍵穴の中に、機械的な内部構造があるはずだ。


 なら、鍵穴に鍵を差し込んだ瞬間に、内部構造が変化するのか?



 ふーむ。

 鍵を差し込むまで、鍵穴の内部構造は定まらない、ということか。

 まるでシュレーディンガーの猫のようだ。

 観測するまで状態が確定しない、というあれだな。


 あらゆる形状の鍵穴が同時に存在している……。


 うむむ。

 ややこしくなってきた。

 鍵の内部なんて、考えてはいけないのか……?


 ファンタジーだし、不思議な仕組みで開くのかもな。

 開錠するという効果のアイテムなのだ。


 しかし……。

 せっかく練習したロックピックをやらない手はない!


 やっとのことで、鍵のかかった宝箱を発見した。


「よし! 鍵は持っているけど、あえて鍵開けに挑戦するぞ!」

「はい! 応援してますっ!」

「じゃ、あたしは応戦(おーせん)しとくっス!」


 リンは鍵を開ける俺に向かい、トウコは姿を現した敵に向かった。

お待ちかねの鍵開け回!(どこに需要があるのか!?)

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