いまさら中級忍術のアレを取ってみる!
トウコが【憤怒】の練習をしている間、俺も自分のスキルを磨いていた。
【検証者】を遊ばせておくのはもったいない。
空きスロットは埋めておかないとね。
セットしたのは【中級忍術】の【金縛りの術】。
これ、ずっと前から気になっていたんだよね。
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【金縛りの術】
レベル1:対象一体を金縛りにし、自由を奪う。
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相変わらず、スキルの説明はざっくりしている。
金縛りか……。
そういえば、ブラック労働にいそしんでいたころは、よく金縛りにあったな……。
夜中や明け方、布団の中でもだえたものだ。
意識ははっきりしているのに、声が出せず、体が全く動かせないんだ。
あれは何度経験しても慣れることはない。
不安だし、怖い。
とにかく嫌なものだ。
怖いといっても、金縛りは心霊現象ってわけじゃない。
幽霊なんて見たことないしな。
体は寝ているのに、脳だけが起きている状態。
いわゆる睡眠麻痺というやつだ。
睡眠中に脳だけが突然目覚めてしまうことにより起こるといわれている。
心身ともに疲弊して、眠れていないと金縛りを起こしやすいらしい。
うーん。
当時は病んでいたのかもしれないな。
最近はこういうことはない。
充実した毎日を過ごせている証拠だろう。
ダンジョン生活と、リンとトウコのおかげだ。
さて、術の方の金縛りについてだ。
金縛りの術は忍者モノにもたびたび登場する。
相手の動きを止め、そのスキに仕留めるのだ。
その正体は毒だったり、糸だったり、催眠術だったりする。
ううむ。
俺が使うとしたらどうなるんだ?
手から毒でも噴出するのか。
糸のようなもので縛り上げるか。
強制的に眠らせるのか。
ここはリアル・ダンジョンの六階層。
新しい術を使うとき、普段なら一人で検証してから実戦投入する。
スキルを充分に試す前にリンとトウコが帰ってきてダンジョン攻略を始めた。
今回はトウコの【憤怒】検証がメインだったので、俺のスキルは後回しにしていた。
そういうわけでここまで使わずに進んできたのだ。
二体のスケルトンが迷路の角から姿を現した。
仲良く並んで進んでくる。
これはちょうどいい実演の機会だ。
「新しいスキルを試すから、声をかけたら二人ともちょっと離れていてくれ」
「金縛りの術ですね。楽しみですー!」
トウコが暴れている間にリンには説明してある。
「おっ? 有名なやつっスね!」
スケルトンたちがこちらに気づいた。
「クカカ……」
「ククッ」
骨をかしゃかしゃと鳴らしながら、走るようにして近づいてくる。
俺は気を引き締めて言う。
「いざ……金縛りの術っ!」
俺はスケルトンに手を向ける。
そしてかけ声と共に術を発動させる。
発動した手応え!
魔力消費はそこそこだ。
スキルレベルが低いから負担はほとんどない。
スケルトンの一体が足を止め、体をぐらつかせる。
もう一体はそのまま動いている。
同時に二体にはかけられないようだ。
「あっ! 止まりましたよー」
「効いたな! ん……?」
動きを止めていたスケルトンが動き出す。
少しよろけたものの、足を踏み出してバランスを取った。
そして何事もなかったように動き出す。
トウコが怪訝な顔で言う。
「うぇ?
今のが新スキルっスか?
地味すぎっスよ!?」
術をかける前、二体のスケルトンはほぼ横並びだった。
術をかけたスケルトンは一歩ほど遅れている。
つまり、その程度の効果しかなかった。
ならもう一度続けて……。
しかし発動しない。
「うむ……。
連続では使えないようだな」
効果時間は短い。
しかしクールダウン時間は長めである。
むむ。
これは微妙だな。
ハズレスキルだったか?
いやいや、そんなことはない。
忍者と言えば金縛りの術!
弱いわけがないのだ!
俺はこいつの可能性を信じるぜ!
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