暗黒の力をケアしよう!?
トウコが体を起こすと、顔をしかめた。
「あだだっ!
なんか体中が痛いんスけど……」
「俺が腕をひねったからだな。
すまん。手加減はできなかった。
大丈夫か?」
「腕は大したことないっス。
それより体中が筋肉痛っス!」
トウコがわざとらしくハッとした顔で俺を見る。
「――はっ!?
もしや店長があたしの体をこねくりまわして……」
体をまさぐってもじもじするんじゃない!
「してねーよ!
むしろ俺が腕をねじ切られるところだったわ!」
「あれっ?
あたし、なんかやらかしたっスか?」
トウコがきょとんとした表情を浮かべ、そのあと不安そうな顔色になる。
「覚えていないのか?」
「ムカムカっとして、銃を抜いたところは覚えているっス!
で、今起きた感じっス!」
「俺と戦ったんだよ。
まさか、記憶がないのか……」
「うぇっ!? 店長と戦ったんスか?
そ、それは……ごめんっス!」
トウコが申し訳なさそうに頭を下げる。
「いや、お互いケガもないし、それはいいんだ。
煽ったのは俺だしな。
トウコが暴れたら、俺が止める約束だろ?」
どうしようもなくなったら、楽にする。
昔、そんな約束もあった。
トウコがかみしめるように笑う。
「へへ……。そうっスね!」
「それはそうと、体の痛みは筋力強化の反動だろう。
とりあえずポーションを飲んでおけ」
素早く、力強く動き回れば体への負荷はデカい。
俺も少し足が痛む。
無理な機動がたたったかな。
丸薬を飲んでおこう。
トウコが喉を鳴らしてポーションを飲み干す。
「ぷはーっ!
生き返るっス! 死んでないけど!」
リンが言う。
「ふたりともすごかったです!
すごーく速くて、私はぜんぜん、手が出せませんでしたー」
リンは元気よくふるまっているが、少ししょんぼりしているようだ。
俺もトウコも動きが速い。
目まぐるしく位置を変える俺たちに、追いつくことは難しい。
援護しようとしてくれたようだが、手が出せなかったのだ。
歯がゆい気持ちがあるのだろう。
「リン。気にしないでくれ。
見守っていてくれて心強かったよ」
「はい……」
「にしても、あたし、ぜんぜん覚えてないんスよねー。
【憤怒】って、記憶もなくなるんスかね?」
「説明通りなら、そんな効果はないだろ」
記憶がなくなるスキルか……。
あるよな。
トウコは既に持っている。
封印されし禁断のスキル……。
「他のスキルが一緒に発動しちゃったんでしょうかー?」
「リン姉、他のスキルってなんスか?」
「ほら、【狂化】だよー。
ちょっと似ているし……一緒に動いちゃったんじゃないかなって」
「あーっ! たしかにそうっス!
似てるかもっ!」
「【憤怒】に連動して【狂化】が発動したんだろうな」
「やばっ! 【憤怒】激ヤバっス!」
強力なスキルの二重がけ。
バフも二重。デバフも二重。
倍率ドン! である。
俺は唸るように言う。
「うーん。どおりで強かったわけだ……」
「あの、店長?
もしかしてコレも使うの禁止っスか?
封印指定っスか!?」
【憤怒】も【狂化】も強力なスキルだ。
特殊なスキルなのか、効果も高い。
これを使わない手はないんだよな。
捨てるには惜しい。
さて、どうするか。
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