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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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鬼に散弾銃! 手が付けられない様子!?

 暴れるトウコを止める方法はある。

 意識を断ち切ればいいのだ。


 首を()ねるとか、脳天に峰打ちとか……。

 でも、そういう方法はダメだ。


 俺は刀を抜かない。抜くつもりはない。

 復活できるとはいえ、トウコを手にかけるのは気が引ける。


 殺すわけにはいかないし、半殺しにするのもダメだ。

 そして、手加減して倒せるほどトウコは弱くない。


 前にもこんなことがあったっけ。

 冷蔵庫ダンジョンで死にすぎたトウコが怪物に変異したときだ。


 でも、今回は食われてやる訳にはいかない。

 かなりの覚悟が必要だが、それだけが理由じゃない。


 リンがいる前で、トウコに食われるのはマズい。

 目の前で恋人が友達に食われるという、究極の寝取られ姿を見せつけてしまう。


 トラウマ間違いなし。

 そのときリンがどう動くか予想できないのが怖い。

 いろんな意味で怖い。


 となれば……。

 俺は手にしたペットボトルをトウコへ投げつける。


「ていっ」

「アァゥ!」


 トウコが手で払おうとする。

 しかし直前でペットボトルが内側から破裂する。


 小規模な【水刃】で内側から斬り裂いたのだ。

 水はばしゃっとはじけ、トウコの手に降りかかる。


 手を伝い、腕を伝い、するすると登っていく。


「ウゥッ!?」


 トウコは水を引きはがそうとするが、液体はつかめない。

 軟体生物のようにうねうねと、俺の操る水がトウコの顔面を覆う。


 このまま窒息に持ち込めば俺の勝ち。

 しかし、トウコの銃が完成するほうが早いだろう。


 水は目まで覆っている。

 不明瞭な視界では銃の精度は落ちるはずだ。


 俺はトウコの背後に回り、首のあたりを掴む。


「これで終わりだ、トウコ!」

「アァァッ! ゴボゴボッ!」


 トウコが水泡を吐き出しながら叫び声を上げる。

 そして、むせながら水を吸い込んでいる。


 おいおい……。

 怒りに我を忘れすぎて水を吸い込んじゃったのか!?


 いや違う!

 水量がどんどん減っていく。


 まさか、全部飲み干すつもりか!?

 ペットボトル一本分にすぎないとはいえ……。


 首を掴む手に喉が嚥下される感触はない。

 水を飲み込んでいるわけじゃないのだ。


 水を食べているのだ。

 【悪食】の効果で、水が消されている!?


 水を噛んだって破壊されるわけじゃないだろう。

 だが形は変わる。

 それで効果対象になるのか!?


 俺はトウコの首へ腕を伸ばし、チョークスリーパーの体勢へ。

 トウコが身をよじり、俺を引きはがそうと暴れる。


 俺の腕をがっしと掴み、絞めつける力は万力のようだ。

 痛い!

 防具がなかったら肉がちぎれかねないぞ!


 だが離れるわけにはいかない!

 振り落とされないように全身に【吸着の術】をかけて密着。

 背中に張り付く。


 非力な俺が組み付くのは悪手だろう。

 だが、今はこれしかない。


 トウコが地面を蹴る。

 勢いよく背後へと飛び、俺を壁にぶつけるつもりだ。

 さっきと同じだ。


 壁とトウコの間に挟まれればひとたまりもない。

 だが、そうはならない。

 計算通りの位置取りだからな!


 タイミング、よし。

 角度、よし。

 速度、予想以上だがよし!


 俺とトウコは勢いよく背後へ転がる。

 壁にぶち当てられて、潰されることはなかった。


 壁のない場所――部屋の入口にすぽっと収まったのだ。


 狙い通り!

 安全地帯に入ったぜ!


 床を転がり、トウコから離れて立ち上がる。

 トウコがうめく。


「ウゥ……う……」

「トウコ! 正気に戻れ!」


 トウコの表情がゆっくりと穏やかに戻っていく。


 ここは安全地帯だ。

 もう攻撃行動は取れない。


 【憤怒】は直接的な攻撃スキルではないが、攻撃できなければ意味がない。

 なんとか効果が消えてくれたようだ。


「ゼンジさん! トウコちゃん!

 大丈夫ですかー!?」


 心配そうな顔で室内をのぞき込むリンに、俺は親指を立てる。


「おう。俺は大丈夫だ。

 トウコも元に戻りそうだ」

「よ、よかったぁー」


 リンがへなへなと床にへたり込む。


 トウコが身じろぎをする。

 お、目を覚ますかな。


 息は乱れているが、険しい表情ではない。

 トウコがぼんやりと目を開ける。


「う……うえぇ?

 安全地帯の天井が見えるっス……」

「おお、目が覚めたか!」


 トウコがあわてる。


「あれっ!?

 も、もしかしてあたし、死んだんスか!?」


 トウコが頭を振って上体を起こす。

 どうやら元に戻ったようだ。

 しかし、死んで復活したと勘違いしているみたいだな。


 やれやれ……焦ったが、無事に切り抜けた。

 安全地帯の近くでよかったな!

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