リアル鬼ごっこは命がけで!?
膝立ちの体勢でトウコが銃を構えている。
筋力が強化されても、素早さは失われない。
敏捷と筋力が合わさり最強に見える!
もちろん銃の使い方を忘れてはいない。
鬼に拳銃である!
トウコの指が動く。
俺は弾道を見切り、上体を大きくのけぞらせる。
弾丸が耳元をかすめて、ひゅんっと空気を切り裂く。
「あっぶねえ!」
さらに続く二射目。
これは避けられない。
とっさに出した分身で受ける。
弾丸は分身を貫いたが、俺からは逸れた。
衝撃で運動エネルギーを消費して、弾道が歪んだのだ。
俺は左右に体を振ってフェイントをかける。
それと同時に二体の残像分身を残す。
二発の銃声。
分身が撃破されて消える。
これで三発撃たせた。
スケルトンに二発使ったから、弾倉にはあと一発。
俺は壁に手をついて上方へ跳ぶ。
床を蹴る力と、壁走りの術で天地を変換する力の合わせ技で、一気に天井へ。
そのまま天井を走ってトウコの背中側へ。
トウコがとっさに銃口を向けてくる。
だが照準は定まらない。
上方向は狙いにくいからだ。
真上より後ろなら、なおさら狙えない。
さらに天井を蹴り、トウコの死角へ跳ぶ。
だが、同時にトウコも身を躍らせた。
背後が取れない!
トウコは跳びながら回転している。
銃を構え、俺へと向けつつある。
俺はまだ空中だ。
このままでは地に足がつく前に撃たれる!
銃口はまだ俺を捉えていない。
だというのに……。
なんだこのぞわぞわとした寒気は!
これがなにかはわかっている。
【危険察知】の警告だ!
なにかやばい!
意識が加速する。
世界がゆっくりと動く感覚。
極限の集中状態で、トウコの指を注視する。
一呼吸にも満たないわずかな時間が長く長く引き伸ばされる。
タイミングを見極めろ。
ぴくり、とトウコの腕の筋肉がわずかに動いた!
引き金を引こうとしているのだ!
発射のタイミングは今!
ここだ!
「でえいっ!」
俺は空中を力いっぱい蹴りつける。
直後、トウコが吠え、銃が火を噴く。
「ウラァア!」
発射炎がふき上がり、弾丸が発射された!
飛来する弾丸は見えない。
しかし弾道は予測できる。
さっきから銃口は俺をわずかに逸れている。
ならば、当たるはずがない。
それはトウコにもわかっているはずだ。
それなのに引き金を引いた。
そこには必中の意志が乗っているだろう。
怒りに身を任せても、身につけた動作は体が覚えているのだ。
背後で硬い着弾音。
弾丸が天井へ命中したのだ。
続いて、背後から風切り音が迫る。
そして、俺のすぐそばを通り過ぎていく。
これは跳弾!
位置を変えなければやられていた!
俺はトウコの背後に着地する。
ずだん、と激しい衝撃。
【跳躍】が着地の衝撃を和らげたとはいえ、かなりの負荷だ。
俺は歯をくいしばって耐える。
なんとか耐えきり、トウコへと腕を伸ばす。
振り返ろうとするトウコの腕を掴んでねじる。
取った!
トウコの手から銃が落ちる。
銃は床に落ちて塵に変わる。
そのままトウコを床に押し倒し、上に乗って押さえつける。
確保!
「よし! おとなしく――」
「あぐァァァ!」
だがおとなしくしてくれるわけがない。
トウコの体が暴れ馬のように跳ねる。
つかんだ腕とは逆の手で地面を支え、片手で体重を支えて起き上がろうとしている。
おいおい……。
背後から関節を極めているんだぞ。
パワーで起き上がるつもりかよ!?
格闘技の常識をぶち破りやがって……!
トウコが立ち上がる。
そして、そのまま後ろに勢いよく跳ぶ!
背中側の俺を壁にぶち当てるつもりだ!
「らぁぁァア!」
「うおおっ!?」
俺はトウコの腕を放し、トウコの肩を支点として、上へ跳ぶ。
さらに空中を蹴り二段ジャンプ。
トウコが俺の足を掴もうとするが空振り。
着地した俺へとトウコが突っ込んでくる。
分身を出しつつ回避。
追撃をさらに回避。
攻撃が激しい。
足を止める余裕がぜんぜんない!
トウコは片腕で攻撃をしかけながら、もう一方の腕でなにかをしている。
新しい銃を出そうとしているのだ。
おそらくショットガンだろう。
散弾はかわせそうにない。
あと数秒が勝負だ。
そして俺が数秒でトウコを制圧する方法はない。
だからって、諦めたりはしないけどな!
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