表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1149/1500

食べ放題は悪食で!? その2

「これ、単に壊れて消えただけじゃないっスかね?」

「ふむ。ポーションの瓶が消えるみたいにか」


 薬草をかじって残りを後で使おうとしたことがあるが、塵になって消えてしまった。

 ダンジョン産の品物は壊れたり、使ったりすると消える場合がある。


 トウコが噛むことで、葉っぱが壊れて消えた可能性もある。


「……じゃあ、試しに俺も食ってみるか」

「おっ! チャレンジャーっスね!」


 歯を一枚、噛みしめる。

 口に広がる青くさい匂い。


 一応味はあるんだな。


「苦っ!

 噛んでも噛んでも苦味しかないぞ……」


 筋張った繊維がずっと口の中に残る。

 こんなもの、飲み込める気がしない。


 消えないじゃねーか……。


 リンがおずおずという。


「あの……この葉っぱは素材カテゴリみたいです」


 【物品鑑定】か【食材】系のスキルを使って確かめたのだろう。

 これは食材カテゴリではない、と。


「つまり食べられないわけだ」


 俺はそっと、口の中のものを吐き出す。

 しばらくすれば消えるだろう。


「【悪食】があると、口に入れてすぐに消えるようになるのか」

「魔石を【捕食】するときも、こうやって消えるっス!」


 飲み下す必要はないと。


「食べた感じはどうだ?」

「おなか一杯でわかんないっスねー」


 腹の足しになったかを聞いてるんじゃないぞ。


「経験値が増えたとか、魔力が回復したとかはどうだ?」

「こんな葉っぱ一枚じゃ回復してもわかんないっス!」


 なんて微妙な!


「じゃあ他の素材はどうだ?」

「まー、ものは試しっスね!」


 木をかじると口の中で消えた。

 土も同じだ。


 しかし石は硬くて食べられず。


 噛んで破壊……形を変えることが条件のようだ。

 口に入れただけじゃダメらしい。


「ほう……。

 歯が硬くなったり、噛みつく力が強くなったりはしないんだな」

「かじれないものは消えないっスねー」


 逆に言えば、歯を強化するスキルがあれば石も食べられるはずだ。

 そうまでして石を食べる意味がないけど。


「トウコちゃん。歯は大丈夫?」


 トウコがニーっと歯を見せて笑う。


「ぜんぜん大丈夫っス!」

「じゃ、この魔石はどうだ?」


 これは大コウモリの魔石だ。


 たいていの場合、トウコは俺のダンジョンのボス魔石をまずそうだと言う。

 これも捕食センサーではアウト判定だ。

 これが食べられるようになっていないか?


 トウコはそれを見て眉を(ひそ)める。


「まずそうっスねぇ……。

 まあ、魔石はマズくても食べれるっス!」


 これは【悪食】とは関係がない。

 食べたいと感じなくても食べることはできる。


 ただ、相性が悪い魔石からはスキルを得られない。

 【悪食】のおかげで、この判定が変わるとうれしいのだが。


 トウコは魔石をつまむと、ポイっと口に放り込む。

 トウコが口をもごつかせて言う。


「おっ!?

 魔力が回復したっス!」


 これは【捕食】の効果だ。

 トウコの魔力は事前にスキルを使って減らしてもらっている。


「ほう。スキルは増えてないか?」

「んー。ないっスねぇ」


 ふーむ。

 食べたくならない魔石にも【捕食】の効果がかかることを期待したんだけど。

 【悪食】との組み合わせでスキルを得ることはできないようだ。


「今のは大コウモリの魔石だったんだけどな。

 エコーロケーション(反響定位)とか咆哮は手に入らないか」


 ボスの魔石がただの魔力回復で終わってしまうとは。

 さすがにちょっと残念だ。


 リンが俺の顔色を見て、ややあわてたように言う。

 おっと、顔に出てしまったか。


「ざ、残念ですねー。

 あっ! もしかして、スキルポイントが増えてたりしないかなー?」

「んー。なんも増えてないっスねー」


 やはり思ったような効果はないか。

 いかにもチートスキルっぽい名前なのに期待外れだったな。


 【暴食】と似ているから期待していたんだが、案外、普通のスキルだった。

 七つの大罪モチーフのスキルとは違うらしい。


「そうかぁ……。

 トウコには悪いが【悪食】は微妙なスキルだったな」


 トウコが奇抜なポーズを取りながら微笑を浮かべる。


「ふっふっふー!

 いつかハズレスキルと言われた悪食で無双してみせるっス!

 いざとなれば秘められし力がムシャムシャと覚醒するはずっス!」


「お、前向きでいいじゃないか。その意気だぞ!」


 期待の反動から、ついつい【悪食】を悪く言ってしまった。

 いかんいかん。

 先入観を持ってはいけないな。


 思い込みの影響は馬鹿にできないのだ。

 いいイメージを持っておけば、いつか役に立つかもしれない。


 リンがトウコににっこりと笑いかける。


「じゃあ、次はお野菜も残さずに食べようねー!」

「げーっ!」


 トウコが目をむいて舌を出す。

 好き嫌いはなくならないらしい。

ご意見ご感想お気軽に! 「いいね」も励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ