表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1146/1499

できないことがわかるのも結果の一つ!

 【魔石収納】にボスの魔石は収まらなかった。

 これも答えの一つ。

 それがわかったのだから良しとする。

 普通の魔石は入るんだし、持ち出す検証はできる。


 余ったスキルポイントがないので、いまはスキルを育てられない。

 今後、もっと育てることにしよう。


 しかしなあ……。

 スキルレベル二に上げておいたのに入りきらないとは。

 

 それだけ今回のボスは強かった。

 五階層のボスより強いくらいを想定していたんだけどな。


 我がライバルの大コウモリさんより、ボス熊のほうが強かったということだ。

 これはちょっと癪だな。

 まあ、強さの評価の仕方にはいろいろあるだろうけどね。

 魔石の価値が強さとイコールなわけじゃあない。



 大ベアラットの魔石でスキル付与を試す。

 強力なボスの魔石だけあって、スキル付与ができるぞ!


 俺は結果を口に出して説明する。


「中級忍具作成で付与できるのは【登攀】か【筋力強化】の効果だ」

「おっ!?

 トーハンはさておき、筋力強化はいいっスね!」


登攀(とうはん)は俺も持っている。

 壁や木を登りやすくなる効果だ」


「ネズミさんみたいですねー」

「じゃ、筋力強化はクマ要素っスね!」


 武器に登攀をつけても、手がふさがっていたら木登りは難しいかもしれない。

 手に持たず、鞘に差していても効果が出るんだろうか。

 それによって違ってくるな。

 手袋などの防具に付与すれば問題ないか。


 筋力強化はシンプルに強そうだ。


「てっきり、【憤怒】でもつくと思ったんだがな」


 巣をつついたら、やたらと怒っていたし。

 思ったより狂暴なモンスターだった。


「憤怒はもう持ってるっス!

 ぜんぜん使えないんスけどー」

「危ないから使えないんだよねー」


 トウコが怒ると、まれに効果が暴発しそうになる。

 今のところはガマンして耐えている。

 だから、ちゃんと検証できていない。


 スキルの説明はこうだ。

 対象一体を破壊するまで、怒りに身を任せる。

 筋力が一時的に上昇する。


 元の持ち主である大鬼は、怒りのせいで味方まで攻撃していた。

 気軽には使えない。


「ヤバそうだから検証できないんだよなぁ。

 あ、リアダンなら死ぬ心配がないから、試せないこともないな」

「いいっスね!

 ついにあたしの隠された力が覚醒(かくせー)するっス!」


 トウコが片目を手で押さえながら妙なポーズを取る。


「ぜんぜん隠されてないけどな!」

「もしもまた【憤怒】がもらえちゃったら、スキルレベルが上がるのかなー?」


「それで制御が効きにくくなったら困るな……」

「くっ! あたしの中で憤怒がムラムラしているっス!」


「前も言ったが、憤怒ならムカムカだ!

 ムラムラするのは色欲(しきよく)だ!」


 今回のボスに【色欲】の要素はまったくない。

 発情したクマやネズミと戦うのはイヤだ。

 それに、そんな能力を【捕食】してもらっちゃ困る。


 【狂化】といい、トウコは妙なスキルばかり身についてしまう。

 職業がゾンビだからだろうか。


 【忍具作成】のスキル付与で確認した限り、今回はヤバいスキルではなさそうだ。



 トウコは待てをされた犬みたいにヨダレをたらしている。


「店長、もう食べていいっスか?」

「いいぞ」


「んじゃ、いただきまーふ!」


 トウコが口を開いて、俺の手の上から魔石をパクリ。

 ついでの俺の指をちょっと甘噛みしていく。


 やめいっ!

 くすぐったいわ!


「で、どうだトウコ?

 スキルは身についたか?」

「んー」


 トウコは空中に指を走らせている。

 スキルリストを調べているのだ。


 トウコの眉が意外そうに持ちあがる。


「増えてるっス!

 でも、なんじゃこりゃー!?

 トーハンでも筋力強化(きんりょくきょーか)でもないんスけど!」


「む? どちらでもないのか?」


 事前に調べたものと違う……だと?


「トウコちゃん。なにがもらえたの?」


「その名もなんと、悪食っス!」

「あくじき?」


 リンが首をかしげる。

 ゲーム用語……ではないか?


 単にあまり使わない言葉だと思う。


「七つの大罪の暴食(ぼうしょく)とは違うよな。

 ええと、ゲテモノを食うことだっけ?」

「言葉の意味はそうですよねー?」


 普通は食べないものを食べること。

 あるいは粗末な食べ物。


「トウコ。説明はどうなってる?」

「食べられないものが食べられるようになる――らしいっス!」


「なんだその曖昧な説明は……」

「クマさんやネズミさんは、いろんなものを食べますよね。

 そのせいなんでしょうかー?」


 と、そこで妙な感覚を覚える。

 空間が縮むような、気圧が変わるような感じ。


「おいゼンゾウ。そろそろじゃねーか?」


「おっと、そうだな!

 そろそろダンジョンを出るぞ!」


「検証は帰ってからですねー」

「帰っていろいろ、美味しいものを食べるっス!」


 それは美食じゃねーか。

 ま、それを試すのは後!


 ダンジョンがすぐに消えるわけじゃないが、長居して帰れなくなっては困る。

 ザコの魔石で刀を強度強化して、出口へ向かう。



 トウコが魔石を手にリンににじり寄る。


「その前にこれを試しておかないとっ!

 ムネ収納っス!

 魅惑の空間にスポっと!」


 トウコがリンの胸元に魔石を入れようとする。


「トウコちゃん、やめてねー!」


 リンが盾でそれを受ける。

 お、防いだ。



 そんな調子で、転送門にたどり着いた。


 転送門をくぐる前に最後に一礼する。

 このダンジョンの主とは話す機会を持てなかった。

 名も知らぬ誰かの冥福を祈り、ダンジョンを後にした。

ご意見ご感想お気軽に! 「いいね」も励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ