ボスの魔石を収納しようとしたところ……?
ボス熊がドロップした魔石を拾い上げる。
「オカダ、こいつをもらっていいか?」
「オーケーオーケー!
俺は血をもらったからなー。
でもそんなもん、どうすんだ?」
「新しいスキルで、魔石を収納できるようになったんだ。
これでボスの魔石を持ち出せるか試したくてな」
俺は手からジャラジャラと魔石を取り出す。
実演して見せるついでに収納の枠を空にする。
「へえ、便利そうじゃねーか!
そういや、前に試したときは消えちまったっけな」
コガさんが胸元を押さえてオカダにジトっとした目を向ける。
「わ、私の胸にねじ込もうとしましたよね……」
「未遂だよ未遂! やってねーから!
で、やっていいか?」
「ダメにきまってます!」
コガさんが飛び退いた。
トウコが魔石に手を伸ばしてきたので阻止。
トウコがちぇーっと舌を出す。
なにをしようとしているかはお見通しだ。
話を戻す。
「あの時はポケットに入れた魔石も、手で握っておいた魔石も消えた。
口に入れていたものは外に出ても残ったけど、口を開けたら消えたんだったな」
「体の中に入っていれば消えない、ということですねー?」
「そうそう。
あ、そういえばオカダ。
飲み込んだ魔石はその後どうなったんだ?」
「どうって、何がよ?」
「飲み込んだ魔石のその後だよ」
聞きにくいからエチケットとしてボカしてるんだぞ。
トウコが言う。
「どーなんすか、オカちゃん。
消化されたんスか? 出てきたんスか?」
ストレート!
「ああ、消化されたんじゃねーの?
ケツから出てきた覚えはねーな」
下品だこと!
エチケットなんて意味なかったね!
「なら飲み込んで持ち出しても意味はなさそうだな」
「うちに帰るまでずっと口を閉じていたら、持ち帰れませんか?」
「あ、自分のダンジョンで出すのはアリっスね!」
「それはザコの魔石で試してみよう」
じゃ、ボスの魔石を収納に入れてみるぞ!」
「本日のメインイベントっスね!」
俺はうなずき、魔石を手に意識を集中する。
「おう。では収納……む?」
手ごたえがおかしい。
入らない。
これは枠が足りない感じか……。
「入らないんですかー?」
「魔石がデカくてキツキツっスかー?」
変な言い方はやめなさい。
「枠不足っぽいな。
まさかこの魔石、汎用ポイント換算で四十以上あるのか」
五階層のボスである大コウモリより強いってことだ。
たしかに強かった。
うーん。
もっと弱いボスを期待していたのだ。
「汎用ポイントってなんだよ、ゼンゾウ?」
「弱めのザコの魔石二百個分くらいだ」
オカダが感心したように魔石を見る。
「へえ? こんなちっちぇ石がねェ?
他の石と同じじゃねーか」
「見た目もサイズも変わらないけど、質が違う。
リン、鑑定してくれるか?」
「はーい。
これは大ベアラットの魔石だそうですー」
「魔石収納に入れられないなら【忍具作成】の材料にするか」
トウコがよだれを拭いながら言う。
「それより店長!
あたしがもらってもいいっスか?」
「お、久しぶりにトウコの【捕食】センサーに引っかかったか」
「これはおいしそーっス!」
相性のいい魔石はトウコの【捕食】で食べられる。
うまくいけばスキルが身につくのだ。
「ヘンな効果がついたら困るから、まず【忍具作成】で確認してみるぞ」
「じゃあ、この刀を使ってくれ」と自律分身。
俺は自律分身から刀を受け取る。
ベースにする武器は公儀隠密の刀。
これは【中級忍具作成】の材料にするために持ってきた無加工の品だ。
俺は心の中で【忍具作成】君に問いかける。
実際に作成はせず、どういう効果がつけられるかを確認するだけだぞ。
できるよな?
材料費となるザコの魔石はたくさんある。
余らせても仕方がないから使いきってもいい!
さあ、心の友よ!
大ベアラットの魔石でスキル付与をしたら、なにができるんだい!?




