押して駄目なら引いてみよう!
体当たりを受けたトウコがよろめき、前につんのめっている。
このままではボスに追いつかれる!
俺はとっさに【入れ替えの術】をかけようとする。
「入れ替え――くっ、ダメだ!」
――不発!
術が成立しない!
【入れ替えの術】は動いている相手にかけられない!
いま、トウコはよろめきながらも動いている。
「――避けろトウコ!」
しかしトウコはバランスを崩して動けない。
ついにトウコが転倒する。
「あ、あわわっ!?」
「グゴォーッ!」
ボスがトウコへ向けて突進していく。
トウコは顔を引きつらせて迫るボスを仰ぎ見ている。
そこでリンが叫ぶ。
盾を構えて立つ姿は、まるで闘牛士のようだ。
「さあ! こっちですよクマさんっ!」
それを見たボスがコースを変える。
成功した!
【ポージング】による挑発だ!
しかし……!
今度はリンが危ない!
「フゴーッ!」
ボスの太くたくましい腕が振り上げられる。
それに対してリンの腕は細くて頼りない。
盾があってもひとたまりもないぞ!?
鋭い爪の一撃。
リンがそれを盾で受ける。
がぎっと、激しい衝突音。
「ううっ!」
リンが大きく体勢を崩す。
そのまま背後へと吹き飛び――
「リンっ!」
いや、ただ吹き飛んだんじゃない。
わざと背後に跳んだのだ!
着地したリンは、数歩下がったところで踏みとどまっている。
攻撃の威力を殺すためにわざとさがったらしい!
リンが盾を構え直して、毅然とした顔で言う。
「私は大丈夫ですっ!
それよりトウコちゃんを!」
頼もしいじゃないか!
俺の術も準備はできている!
「ああ!
今度こそ――入れ替えの術!」
トウコは立ち上がりかけている。
だが術が成立する程度の動きだ。
入れ替え効果が発動。
俺はトウコの位置へと移動する。
ボス熊はまだリンに惹きつけられている。
隙だらけのボス熊にここなら手が届く!
握った刀を勢いよく突き込む。
「ピアススラスト!」
ずずっ、と刃が分厚い毛皮を突き通す手ごたえ。
だが浅い!
剣を引き抜いて、さらにもう一撃!
「――ファストスラッシュ!」
傷口を狙って、さらに突き。
加速した刃が毛皮の下の筋肉と脂肪を突き破る。
吹き出した血が俺の顔を染める。
刀を抜いて下がろうとする。
「むっ!?」
だが胸の筋肉が刀をくわえこんでいて抜けない。
ならば【反発の術】を――
そこへ張り手のような爪の一撃がくり出される。
「ガァアッ!」
「おっと!」
俺は刀を放し、上半身をそらして回避。
そして地面に手をついてバック転。
着地したところへ、ボスが追撃をかけようと迫る。
そのボスの横っ面に閃光のような尾を引いて弾丸が突き刺さる。
「あたしを忘れちゃいけないっスよ!
ピアスショットっ!」
トウコがさらにマグナム銃を撃つ。
ボスの肉が爆ぜ、毛が舞い散る。
「グガァァァァ!」
唾液をまき散らしながらボス熊が吠える。
効いている!
追撃を入れるチャンスだ!
しかし、俺の前にザコが割り込む。
「ギィっ!」
「ジュッ!」
邪魔だな!
「くそ、ボスの声で集まってきたのか!?」
置き去りにした後続が追い付いてきたのだ。
オトリの分身でまいた分すら集まってくるかもしれない。
さらに横合いで、草むらが揺れる。
そこから大柄な影が飛び出してくる。
これ以上増えたら手に負えないぞ!?
大柄な人影が、軽い調子で言う。
「おーう!
盛り上がってるじゃねーかゼンゾウ!
俺も混ぜてもらうぜー!」
変身して肥大化したオカダだ。
後ろから自律分身とコガさんも現れる。
「いいところに来たな!」
来たのはこっちの援軍だ!
これで勝つる!
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