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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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水攻め、火攻め、鉛攻め! からの……!?

 水浸しにした洞窟はもうすっかり乾いている。

 【水噴射】で出した水はすぐに消えるからだ。


 これで二セット目を始められる。

 水で濡らしたせいで【火魔法】が弱まったりはしない。

 ちゃんと仲間のスキルを邪魔しないように考えているのだ。



 トウコが洞窟の入口で耳をそばだてる。


「奥からチューチュー聞こえるっス!

 ははっ! あいつら、驚いてるっスよ!」


「そりゃ、鉛弾と火の玉と水流をぶち込まれりゃ驚くだろう」


 俺の耳にもベアラットの鳴き声が聞こえてくる。


「うむ。俺にも聞こえた。

 これはチューチューなんてかわいい声じゃないぞ……!」


 なにやら、ざわざわとうごめくような……。


「それに、どんどん音が大きくなってきてないか!?」


 リンが不安げに俺を見る。


「はい……。

 ずいぶんたくさんネズミさんの声が聞こえます……」

「やっぱりそうだよな……」


 入口のサイズから、小規模な洞窟を想像していたのだが。

 この反応は……。


 もしかして奥は広くなっているのか?


 もはや鳴き声は怒号のようだ。


「足音もやばいっス!

 どんどん近づいてくるっス!」


 ドドドドドドドドド……。

 地鳴りのような足音が響いている。


 洞窟で反響しているからか、音がぼやけて聞こえる。


「道中の敵が少ないと思ってたんだが……まさかな?」

「ネズミさんたちは、ここに集まっていたのかもしれませんねー?」


 洞窟の前にいても敵はほとんど襲ってこなかった。

 その分、巣の中でひしめいていたのか。


「うえぇ!?

 スゴい数の足音っス!

 でも聞こえ方がヘンでわかんないっス!」

「反響しているせいか……?」


 トウコの言う通り、足音や鳴き声は聞き取りにくい。

 わかりにくいが十や二十ではすまないだろう。


 リンが顔を青ざめさせる。


「不気味ですねー」


 トウコが頭をかきむしる。


「あー! だからネズミは嫌いっス!」


 ここで迷っていてもしかたがない。

 見えないから不安になるのだ。


 俺は洞窟の入口を指差しながら言う。


「リン、奥に向けてファイアボールだ!」

「はいっ!」


「トウコは射撃準備!」

「リョーカイっス!」


 動いていれば不安はまぎれる。

 リンが火球を放ち、トウコは銃を構えなおす。


 リンが火球を放つ。

 その灯りが洞窟内を照らして、内部が見えてくる。


 入り口付近に敵はいない。

 さらに奥――なにかが(うごめ)いている。


 ベアラットだ。

 一体ではなく群れ。

 それが目をらんらんと輝かせながら走ってくる。


 火球が先頭の個体に着弾する。

 炎に包まれたベアラットがもがく。

 これは致命的な一撃だ。


 だが、群れは止まらない。

 炎上した個体が、別の個体に押しのけられる。

 そのまま次々とやってくる後続に踏みつぶされてしまう。


 燃えているのにおかまいなしか!?

 仲間の体を踏み越え、踏みつぶされたベアラットが塵になる。

 炎が消えて、洞窟が闇に沈む。


 暗くなった洞窟から大群が突き進む音だけが響いてくる。

 まるで一体の巨大な獣の唸り声みたいだ。


 入り口付近まで、それはやってきた。

 日の光が差し込み、その姿を俺たちの前にさらす。


「おいおい。こりゃ大軍のお出ましだぞ!」


 狭い通路の床を、天井を、壁を……ベアラットが埋め尽くしている!


「ヂュォォ!」

「ギィィッ!」


 ベアラットの群れが口々に奇怪な叫び声をあげ、突進してくる!


 我先に争うように俺たちめがけて走ってくる。

 ぞっとする光景だ。


 それを見てトウコが目をむく。


「き、きたーっ!?

 デカくてたくさんはズルっス!」


 見とれている場合じゃない。

 黙って見ていたら踏みつぶされてしまう!


「トウコ、撃て! 撃ちまくれ!」


 トウコがあわてて引き金を引く。


「っと、ピアスショットーっ! うらうらっ!」


 貫通弾(かんつうだん)が先頭集団を吹き飛ばす。


 さらに二射目、三射目が放たれる。

 その度にベアラットが倒れる。

 だが、それでも群れの行進は止まらない。


 洞窟は狭いが、死体が積み上がって塞がれはしない。

 ダンジョンでは死体が残らずに消えてしまうからだ。

 倒しきれなかった敵も、踏みつぶされて塵になる。


 勢いが落ちない!


 リンが手をつき出して叫ぶ。


「とまってー!

 ファイアウォール!」


 ごうっ、と炎の壁が洞窟の幅いっぱいに広がる。


 これなら……。

 いや……ダメか!


 焼け焦げたベアラットが炎を突っ切ってくる!


 炎が効かないわけじゃない。

 力尽きた敵は踏みつぶされ、先頭の個体が次々に入れ替わっているのだ。


 後続に押しだされるように、怒り狂ったベアラットの大群が前へ前へと突き進んでくる。



 おいおい……!

 この数に近づかれたら、ちょっと(さば)ききれないぞ!?



 トウコがばっと俺を見る。


「ちょっ!?

 店長、どうするんスかっ!?」


 それを今考えているところだ!

 だが俺は冷静を装ってうなずく。



 あの数と戦えば無事ではすまない。

 弱い敵でも、数が増えれば油断はできない強敵となる。



 もう洞窟の入口近くまでベアラットは来ている。

 すぐに外に出てくるぞ。

 あふれ出して、バラバラに動かれては厄介だ。


 なら、洞窟から出さなければいい!

 ここで押し戻す!


 背中を分身に支えさせ、洞窟に両手を向けて集中する。


「俺が時間を稼ぐ!

 その間にチャージしてくれ!」

「りょっ!」

「はいっ!」


 先頭の一匹が洞窟の外に出る。

 後続もすぐに出てくる。


 俺たちを見つけたベアラットが大口を開けて叫ぶ。


「ヂュァァ!」


 そこで、俺の術が完成する。

 手のひらに魔力が集まり、水流へと変わっていく。


「くらえ! 水噴射ーっ!」


 俺の手から洞窟へと一直線に水流が伸びていく。


 洞窟から躍り出たベアラットの鼻面に水流をぶち当たる。

 激しい水しぶきが上がり、日の光を受けてキラキラと輝く。


 ベアラットは耐えきれない。

 たまらずに転倒して水に押し流される。


 水流は一匹に当てただけでは衰えない。

 そのまま後続の群れをまとめて洞窟内へと押し戻していく!


「いまだ!」


「チャージショットー!」

「ファイアラーンス!」


 放水を止めたところに【チャージショット】と【ファイアランス】が撃ち込まれる。

 敵集団が吹き飛ぶ。


 これで倒せてなければもう一セットやるまでだ!

 魔力が尽きる前に倒せるかの勝負になるだろう。



 トウコが叫ぶ。


「やったっスね!」


 リンが指を洞窟に向ける。


「いえっ……まだです!」


 リンの指は、洞窟の少し上の壁面に向いている。

 そこには小さな穴……洞窟が見える。


 よく見れば、他にも小さな穴がいくつもある……!

 おいおいおい……!?


「べ、別の出入り口っス!」

「ゼンジさん!

 ど、どうしましょう!?」


 足音はこの穴から聞こえていたのか!


「とりあえず……逃げるぞ!」


 ここで戦うのは不利だ!

 逃げるが勝ちってね!

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