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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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送信にんにん! 忍者ポーズで思いを届けよう!?

「この中に入るんスか、店長?」

「うーむ。ちょっと狭すぎて不安だよなぁ」


 人の背丈ほどの穴だ。

 天井が低くなっている場所もある。

 屈まないと通れないだろう。


「これじゃ攻撃されても避けれないし、逃げれないっスね」

「そうなんだよなー」


 回避型の俺にとっては死活問題だ。

 ザコモンスターの攻撃など、当たらなければどうということはない。

 でも当たれば普通に痛いのだ。


 レベルが上がっても、俺の頑丈さは常人と変わらない。

 ファンタジー防御力やヒットポイントはないからな。



 リンがトンファー盾を構えて言う。


「では、私が先頭を進みましょうか?」

「リンならベアラットの攻撃にも耐えられるかも――」


 俺の言葉を遮るようにトウコが手をあげて飛び跳ねる。


「はいはーい! じゃああたしが二番目いただきっス!

 うっかりお尻に追突しても不可抗力(ふかこーりょく)っス!」

「故意にやったら不可抗力じゃねえよ!」


 気をつけても、どうにもならないのが不可抗力だ。

 (あらが)うことのできない力である。

 言い訳に使えるものじゃない。


「じゃあ店長はリン姉のお尻に逆らえるんスか?

 下半身に聞いてみるといいっス!」


 そんなの自分会議を行うまでもない。

 リンには逆らえない。

 抵抗は無意味だ。

 うん、これは不可抗力。


 って、違う!

 忍べ俺!


 ちょっと冷静になろう。

 話題を変えるんだ。


 穴に入る前にやることがある。


「中にボスがいるかもしれないし、まずはオカダたちを呼ぼうか」


 ボスと戦えなかったと残念がるかもしれない。


「でも、どうやって呼ぶんスか?

 あっ! 分身テレパシーっスね!」


 俺は首を振る。

 リンに花火を打ち上げてもらうつもりだ。


「【意識共有】は一方通行だ。

 受信はできても送信はできない」

「電波ゆんゆんできないんスかー。不便っスねえ」


 ため息をつくんじゃない!

 受信だけでも便利だよ!


「もともと、自律分身から意識と経験を受け取るスキルだしな。

 最初から受信する能力なんだよ」

「でも、練習したら送信もできるかもしれませんねー」


 スキルレベルが上がればできるかもしれない。

 現時点でも、できると認識すればできるかもしれない。


「そうだな。試してみるか」

「じゃああたしも送信やんやんするっス! カモン二号(にごー)っ!」


 トウコが頭の上で両手を合わせる。

 アンテナみたいなイメージだろうか。


 トウコがうねうねと左右に揺れ出した。


「カモン二号ー。もんもんもんもん……」

「それで自律に電波が届いたら嫌だな……」


 怪電波や毒電波を受信してはいけない。

 宇宙の真理にたどり着いて心が壊れてしまうぞ。


 トウコが薄目(うすめ)を開けて言う。


「さあ、リン姉も念じるっス!」

「う、うん……」


 リンが目を閉じて祈るように両手を組む。

 いや、やるんかい!


 トウコがジト目で俺を見る。


「てか、まだっスかー?」

「まだって何がだよ?」


「いま店長()ちっスよ?

 早く自律を呼んで欲しいっス!」

「やって当然みたいな流れにするんじゃない!

 まあ、一応やってみるが……」


 自律分身に意思が伝われば便利なのは間違いない。

 おふざけ抜きで、試す価値はある。



 印を結んでみよう。

 忍者っぽいポーズでよくあるアレだ。


 両手の人差し指と中指を立ててそろえる。

 右手を下にして、左手で包む。

 この手はそれぞれ剣と鞘を現している。


「おーっ! ニンニンのポーズっス!」

「かっこいいですねー!」


「これは刀印(とういん)ってやつだ。

 空中をタテヨコ(四縦五横)に切って臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前と唱えるときの印だな」


 九字護身法(くじごしんぼう)である。

 陰陽道や修験道(しゅげんどう)で扱うものだ。

 忍者にも関係がある。


 違う種類の印を連続で組む切紙(きりかみ)九字護身法というのもある。

 こちらは一文字唱えるごとに違う印を結ぶ。

 臨なら、両手で指を組んで人差し指を合わせて立てる独鈷印(どっこいん)を作る。

 これも忍者っぽい印である。


 さすがに全種類の印は憶えていない。

 忍者好きの御庭に振れば、よろこんでやってくれそうだ。

 振らんけど。


 精神集中のルーティーンにはいいかもしれないけど、ちょっと時間がかかりすぎるんだよね。

 戦闘中に印を結んでいては武器が持てなくなってしまう。


 という訳で今回は略式で刀印を結んで念じることにする。


 来たれ自律分身!

 送信にんにん!


 ……手ごたえはない。


「おーっ!

 案外ちゃんとやるんスね店長!

 ノリがいいっス!」

「効果はなさそうだけどな」



 リンは先ほどから目をぎゅっとつぶって黙り込んでいる。

 なぜか俺のほうを向いているが、自律分身と別れた方向はこっちじゃない。

 方向なんてテレパシーには関係ないかもしれないが。


「おーい。リン。

 そろそろいいんじゃないか?」


 リンがゆっくりと目を開く。

 そして頬を赤らめて、じっと俺を見る。


「あの、ゼンジさん。

 私の気持ち……届きましたか?」


 俺に送ってたのかよ!?

 電波は受信できなかったけど、リンが何を思っていたかは表情で伝わった。

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