悪性ダンジョンは森林で!
探索は皆に任せて、俺は調べものを始める。
【魔石収納】が機能するか確認するのだ。
試すのは簡単。
まずは持ってきたスケルトンの魔石を取り出してみる。
リアダンの魔石はオーケー。
ゴブリンの魔石。
自分のダンジョン産もオーケー。
魔石は塵になって消えたりせず、普通に残っている。
これはリンのダンジョンで試した結果と同じ。
【魔石収納】を使えば他のダンジョンに魔石を持ち込める。
【忍具作成】の材料にも使える。
つまり魔石には互換性がある。
どこの魔石も同じように使えるってことだ。
逆に、悪性ダンジョンの魔石を持ち帰っても使えるはずだ。
まずは持ち帰れるかだ。
これが本日のメインイベント!
悪性ダンジョン産の魔石を収納できるか!?
いざ収納……これもオーケー!
「よし、これならボスの魔石も持って帰れそうだ!」
「よかったですね、ゼンジさん!」
リンがパチパチと拍手してくれる。
せっかく手に入れた魔石を捨てていくのはもったいないからね。
トウコが手を振っている。
「こっちに転送門があったっス!」
オカダが人懐こい笑みを浮かべてトウコを褒める。
「トーコちゃん、ナイスナイスー!」
「うぇーいっ!」
トウコとオカダがハイタッチする。
陽キャか!
続いてトウコがリンにハイタッチを求める。
「リン姉も、うぇーい!」
「う、うえーい?」
「んじゃゼンゾウ。さっそく入ろうぜー!」
飲み屋に誘うようなノリである。
危険な悪性ダンジョンに入るって状況なんだけど、緊張感はまったくない。
「おう。楽しむのはいいけど、油断しすぎるなよ!」
オカダは戦いを楽しもうとして油断するクセがある。
オカダが俺の背をバンバンと叩く。
「オーケーオーケー! わーってるって!」
わかってないんだろうなぁ。
転送門を通ると、そこは森だった。
「ふーむ。森か。見通しは悪くないな」
「私のダンジョンと違って、霧が出ていませんねー」
「戦いやすそうっス!」
リンのダンジョンにも森があるが、そことは様子が違う。
シカがいるあたりだ。
あちらはもっと湿っている。
ここは乾燥していて少し寒い。
木の幹はまっすぐで背が高く、すらっとした印象だ。
笹のような下草が生えている。
「なあゼンゾウ。
ここでも手分けして進むのか?」
「あんまり遠くには行かないでくれよ」
「わーってるって!
心配しすぎだぜー?」
「自律分身を同行させるけど、戦闘は任せるぞ」
自律分身に刀を渡す。
これは公儀隠密の備品で無加工の品だ。
無加工品なのは、帰るときに魔石を使って刀を強化するためだ。
セコイと言うなかれ。
こうすれば無駄がない。
オカダが笑う。
「おう! じゃ、パーティータイムだ!
いくぜ、コガちゃん!」
「はい」
「んじゃ俺たちも行くか」
「はーい」
「リョーカイっス!」
オカダたちとは逆方向へ進んでいく。
すぐにモンスターが現れた。
「ん、あそこの木……いたぞ!」
「いただきーっ! ピアスショットっ!」
トウコがショットガンを向けて素早く射撃。
撃ち抜かれた獣が塵になり、魔石が落ちる。
俺はそれを【引き寄せの術】で手中に収める。
「リン。これを鑑定してくれ」
「はーい。どうかな。システムさん?」
空中にタコウインナーが現れて告げる。
<名称:ベアラットの魔石。カテゴリ:魔石>
「へえ。大ネズミじゃないのか。
ベアは熊で、ラットはネズミだな」
「じゃあ、クマネズミさんですねー?」
「現実のクマネズミはこんなに大きくないけどな」
トウコが額を拭うようなしぐさをする。
「ふー。ネズミじゃないなら安心っス!」
「いや、熊のほうがヤバそうだろ!?」
熊要素を無視すんじゃないよ!




