宝箱の報酬は錆びたアレ……!?
ボス部屋の最奥に大扉がある。
軽く押すと簡単に開いた。
扉の先は明るくなっている。
オーロラのような光で囲まれているからだ。
「安全地帯だな」
「宝箱もあるっス!」
「階段もありましたー!」
五階層はこれでゴールか。
迷路が続いていなくてよかった。
安全に休めるのはいいね。
「まずは宝箱を開けよう」
トウコが宝箱の周りを飛び跳ねて回る。
「お宝っ! お宝っ!
はい、リン姉もっ!」
トウコが後ろ向きになってリンを手招きする。
リンは困った顔で後ろについた。
「う、うん。
お、おったからー」
「やらんでいいっ!
罠があるといけないからどいてくれ!」
「へーい」
「はーい」
これまでのところ、ボスの宝箱に罠はなかった。
自律分身や分身を使うとややこしいことになる。
警戒しつつ俺が開ける。
いざオープン!
「む……?」
中身は……うわぁ、コレか。
「これは兜ですね!」
「サビてるやつっス!」
「ボスがかぶっていたものに似ているな」
頭部から頬を保護する兜だ。
目や鼻、口の部分は露出したデザイン。
見た目は悪くないが、錆が浮いているし重そうだ。
「ちぇー! ハズレっスね!」
兜を取り出してかぶってみる。
少し鉄臭さを感じるが、かぶり心地は悪くない。
しかし重いね。
「ちょっと重いな」
「でもよく似合っていますよー!」
「そうかぁ?」
リンは俺が何を着ても褒める気がする。
悪い気はしないけど。
「グラディエーターみたいっス!
ムキムキになったらちょうどいいっスね!」
「ムキムキは目指してないし、これはお蔵入りだな」
ムキムキ忍者はちょっと……。
俺は細マッチョを目指しているのだよ。
「しかし現物の兜が手に入るとは意外だった」
「なんでっスかー?」
「いつも通り魔石も手に入っただろ?
これをショップで引き換えたら報酬二倍じゃね?」
「あ、たしかにそうですねー!
そう考えたらお得です!」
要らないけど、大盤振る舞いだな。
これならすぐに錆びた鎧一式が揃いそうだ。
リンが宝箱をのぞき込む。
「あっ! まだなにか入っています!」
「どーせサビた骨とかっスよね?」
「なんだそのゴミは……」
骨は錆びないっての。
しかし、中身は思ったよりいいものらしい。
宝箱に手を入れたリンの表情は明るい笑顔になっている。
「ゴミじゃないよー!
スキルオーブですよっ!」
「おおーっ! アタリっスね!」
「いいじゃないか!」
しかしリンは少し顔色を曇らせる。
「でも一つしかありませんでしたー」
トウコが口をとがらせる。
「ケチっスねー!
三人いるんだから三個くれないとっ!」
「ワニさんのときは三個くれましたよねー」
「人数分だと十人でボスを倒したら十個もらえることになるし、妥当だろ」
「いーじゃないっスか! 何個くれても!」
「まあ、くれるなら文句は言わないけどな。
で、誰が使うかだが……」
トウコが首を振る。
「あたしはスキルポイント足りてるからパスでいいっス!」
「ほう。欲がなくていいじゃないか。
んじゃ、リンが使ってくれ」
リンが意外そうに言う。
「えっ? 私ですか?」
「俺は熟練度でスキルを上げられるからな。
リンはスキルが簡易モードだからポイントが大変だろ」
リンは困り顔だ。
「そうなんですが……うーん。いいのかなぁ」
「遠慮しなくていいぞ」
「いいんスよー!
あたしと店長からの愛のプレゼントってことで!」
「じゃあ大切にしますね!」
急に即答した!
リンは大切そうにオーブを両手で包んでニマニマしている。
「いや、割るんだぞ。使うんだぞ?
取っておくのは気持ちだけにしてくれ!」
「うーん」
使わないと意味ないからね!
さて、次は階段の様子を見てみるか!
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