内部破壊? 浸透勁? いえいえ、衝撃です!
リンが感心したように言う。
「す、すごいですね!
さっきのはどうやったんですか!?」
ぐいぐいと顔を寄せてくる。
近い近い!
「インパクトストライクだよ。
衝撃で腕を痺れさせたんだ。
もしかしたら折れたのかもな」
トウコが両手をぐっと握って前のめりになる。
妙に食いついてきたな。
「おーっ!
内部破壊! 浸透勁っスね!」
マンガやゲームでよくあるやつだ。
リンがよくわかっていない顔で首をかしげる。
「な、ないぶはかい? しんとうけい?」
「気とか、そういうのっスよね?」
俺は首を振る。
「違う。別に不思議な力を使ったわけじゃない。
いや、スキルは不思議な力だけどさ」
「ファンタジーパワーっスね!
そこ、くわしくっ!」
道中のザコ戦でも【インパクトストライク】は何度か見せた。
どうやら地味で伝わらなかったらしい。
見た目に派手な技じゃないからな。
とはいえ、今説明するタイミングかね?
正直、ボスの報酬が気になるんだが……。
ボス討伐報酬のアナウンスはまだ来ない。
宝箱を開けたらもらえるのかな?
普通のダンジョンと違うから報酬はないのか?
まあ、後で確認すればいいか。
報酬は逃げやしない。
「ええと、不思議な力とはどう違うんですか?」
「使ったのは衝撃だ。
奥に伝える感じで打ってるんだよ」
トウコが口をとがらせる。
「ほら、やっぱ浸透勁じゃないっスかー!」
普通の打撃は表面に作用する。
浸透勁は体内にしみ込むように打撃を通す。
あるいは後方へ吹っ飛ばすように作用する。
これは打ち方で変わるらしい。
「似てるけど違うんだよ。
説明するのは難しいな……」
中国武術の発勁は力の伝え方らしい。
ツイスタで貪るように調べた。
だけど、なんとなくしか理解できていない。
奥義みたいなものだし、簡単じゃないんだ。
体の動かし方を口で説明するのはもっと難しい。
わかっていないことは説明できないからな。
少なくとも超能力や胡散臭いパワーではない。
「ええと、衝撃を奥に伝える技なんですか?」
「インパクトストライクは衝撃を増幅するスキルだ。
本来はそうなんだけど、練習して力を伝える方向を少し操作できるようになったんだ」
「達人っスね!
これからは店長師匠と呼ぶっス!」
「いや、ちょっと方向を変えるだけだぞ。
ぜんぜん極めてないからな!」
買いかぶられても困る。
さすがに自由自在に衝撃を操れるわけじゃない。
でも、これを極めるのも面白いかもしれないな。
スキルレベルを上げて練習すれば……。
「すごいですよー!
練習しただけでできちゃうなんて!」
「まあ、けっこう練習したからな」
せっかく技を見せるなら、形になってないとね。
スケルトンで試しただけじゃない。
クローゼットダンジョンのゴブリンを殴ってさんざん試した。
そもそも【インパクトストライク】は衝撃を操るスキルではない。
あくまでも衝撃を増幅、強化する技である。
方向付けられるようになったのは練習の成果だ。
当て方次第では衝撃が散って、うまく伝わらないことがある。
それでは威力がわずかに上がるだけだ。
自律分身とも議論しながら試行錯誤した。
盾を構えさせて殴ったり、生身を軽く打ったり。
その記憶を受け取ることでかなり理解が深まったように思う。
こういうのは食らってみるのが一番だね!
びりびりと腕がしびれるのだ。
打つ側と、打たれる側の両面からの体験だ。
こんなことができるのも分身使いならでは!
相手の剣を打てば持つ手がしびれる。
盾でも同じ。
支える腕に衝撃が伝わる。
生身を打てばびりびりとした衝撃が体を走る。
手足なら痺れるし、胴体だと内臓が揺れるような感覚がある。
頭を打てば脳震盪を引き起こす。
物理的な破壊力が大きく強化されるわけじゃない。
作用の仕方で威力を発揮する技だ。
「――という感じなんだが。伝わったか?」
「うーん。なんとなくしか……」
「ぜんぜんわかんないっス!」
言い方を変えてみるか。
「フルスイングのノックバック効果は相手を吹っ飛ばすだろ?
これは突き飛ばすのに似てるかな」
トウコがうなずく。
「そうっスね」
「インパクトストライクは吹っ飛ばさずに、内側に伝える。
殴るより、震わせるって感じか」
リンが首をかしげる。
「うーん?」
「普通の打撃は表面を叩くけど、インパクトの場合は体を伝わるんだ」
「よくわからないっス!
もう内部破壊技ってことでいいっスね!」
「よくないけど、まあいいわ!」
俺は説明をあきらめた。
だいたい合ってる!
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