VSボス戦! リアル・ダンジョンのボスは骸骨で! その3
バキバキと骨の折れる音をたてながらボスが体を折り曲げる。
【フルスイング】が生み出したノックバック効果がボスの体勢を崩し、たたらを踏ませる。
チャンス!
ここでさらに追撃だ!
骸骨の眼窩のくぼみで赤い光が揺れる。
まるで俺の動きを警戒しているみたいだ。
骸骨の手が動く。
俺の斬撃に反応して盾を構えようとしている。
だが遅い!
踏み込んで一閃!
「ファストスラッシュっ!」
「クカッ」
加速した斬撃が首元を切り裂く。
ごりっとした、硬い手ごたえ。
む!? 浅いか!
首を落とすには至らなかった。
ヒットポイントに守られたか!
ならば、もう一撃――
いや……!
深追いはマズい!
視線の片隅で盾が動いている。
これは防御のための動きではない!
俺を狙った攻撃だ!
「店長ーっ!」
トウコが叫んでいる。
わかっている!
とっさに足を止めてのけぞる。
ぶん、と盾がすぐ目の前を横切っていく。
「あぶねえ……!」
俺は背後へ跳んで距離を取る。
リンが安心したような声で言う。
「よ、よかったぁ」
「油断するな!
コイツは素早いぞ!」
俺は刀を構えて油断なく様子をうかがう。
ボスの首につけた傷は浅い。
肉がないというのは厄介だ。
普通なら喉を裂けば致命傷になる。
血管でも気道でも、当たれば急所だからな。
しかし骨だけのコイツには弱点にならない。
俺の斬撃は、骨に引っかき傷をつけただけだ。
これじゃあ、どの程度のダメージを与えたかわからないな。
ボススケルトンの動きは鈍っていない。
くそ、神経とか通っていないのか!?
背後に下がったリンとトウコが遠距離攻撃をしかける。
「ファイアボールっ!」
「ピアスショット!」
スケルトンには盾を構える余裕を与えていない。
魔法と銃弾がボスへ降り注ぐ。
「ググ……!」
炎に包まれながらもスケルトンは動いている。
銃弾は鎧をへこませたものの貫通していない。
「ダメージは入っているぞ!」
それでも炎は消えずにくすぶっている。
散弾が命中したのか、肋骨が数本砕けている。
防具は硬いが、骨には攻撃が通るようだ。
「アバラをへし折ってやったっス!」
「炎も消されにくくなってきました!」
骸骨が叫ぶ。
地の底から響くような低い唸り声だ。
「オォォォ!」
精神攻撃か!?
「ッ!」
俺はとっさに距離を取って身構える。
「……ひっ!?」
「ちょっ!? タンマっス!」
喉を引きつらせるような声をあげたのはリンだ。
トウコは両耳を塞いで背後へ跳んでいる。
ん……?
なんともないな?
【精神耐性】のおかげで耐えたのか?
トウコが銃を構え直す。
「あー! ビビッて損したっス!」
トウコにも効いていないようだ。
やはり精神へ作用するスキルではなかったか……。
「ただの気合の声か。驚かすな!」
「……び、びび、びっくりしましたね……!」
リンは青い顔でひざを震わせている。
なんとか立っているが、へたり込んでもおかしくない様子だ。
効いてるじゃん!
と思ったが、単に大声に驚いたのだろう。
スキルの効果がなくても怖いものは怖い。
こういうリアクションが普通だよな、うん。
ボススケルトンは盾に隠れて赤い目をこちらに向けている。
構えにスキはない。
うかつに突っ込んでいくと手痛い反撃がありそうだ。
いいね。
この緊張感!
やはりボスは違う!
剣と盾を使いこなす技量はなかなかのものだ。
長身の体から繰り出される攻撃にはリーチもある。
鎧はなかなか堅牢だ。
重そうな鎧を身にまとっているくせに素早いときた。
体力や敏捷力など、バランスのいいステータスを持っているのだろう。
そのうえスキルも使う。
銃弾を弾いたのは盾のスキルだろう。
弾道が曲がったように見えた。
あれは、ただ盾で受け止めただけじゃない。
おそらくは攻撃を弾く効果を持っているんじゃないか?
さて、どうやって崩そうか。
いくつもの方法が頭に浮かぶ。
距離を取って遠距離攻撃を続ければ倒せるだろう。
が、これはつまらない。
【水忍法】で押し流してもいいだろう。
でも今回は近接攻撃で行く!
せっかく覚えた【インパクトストライク】を使いたいしな!
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