新打撃技を取ろう! その2
「カカッ!」
「ていっ」
棒のリーチを活かしてスケルトンの肩を打つ。
骨が砕け、武器を持った腕が落ちる。
よしよし。
このくらいならスケルトンは死なない。
これでスキルを使って違いを見られる。
よろけたスケルトンが体勢を整えるのを待つ。
ちょっともどかしいくらい遅いな。
お、来るぞ。
スケルトンが残った腕で殴りかかってくる。
この動作もスキだらけだ。
俺は棒を振り上げる。
狙いは腕が無事なほうの肩だ。
先ほどと同じくらいの威力になるように意識して――
「インパクトストライク!」
「カッ……!」
棒がスケルトンの肩の骨を砕く。
もげた腕が落ちた。
ここまでは素の打撃と変わらないが……。
……いや!
ちゃんと違いがあるぞ!
スケルトンの骨にぴきぴきとヒビが走っている。
さらにヒビは、肩から鎖骨や肩甲骨まで広がっていく。
首のあたりまでヒビが広がったところで、スケルトンが塵に変わった。
肩への攻撃だけで充分なダメージだ。
ほう……。
普通の打撃ではこうはならなかった。
衝撃力の増加とはこういうことか。
衝撃の伝わり方が強化されるのかな?
なかなか使えそうな感じだ!
単にダメージも上がるようだし、衝撃の伝わりを使って何かできるかもしれない。
面白そうだな。
物理法則がどうなっているのか気になるところだ。
しかしまあ、追及はよそう。
ファンタジーな効果だと考えておく。
試しに【インパクトストライク】で床を思いきり叩いてみるか。
「ていっ」
ダメだな……。
手がしびれるばかりで、床はびくともしない。
さすがに床や壁は破壊できないようだ。
衝撃力を多少強化しても、純粋な威力が足りないのかな。
壁や床が破壊不能の可能性もあるよな。
まあ、壁をぶち抜く機会はないだろう。
スピード重視の俺が石の壁をぶち破るパワーを身につけるのは遠い先のことだろう。
レベルやスキルを積み上げれば、いずれそういうスーパーファンタジーパワーも身につくはず。
目指すべき方向性とは違う気がするけどね。
肉のあるモンスターだとまた違うだろうか。
練習台のゴブリン君はここにはいないから、後回しかな。
自分の体に弱めに打って試してみるのもアリか。
……痛そうだよな。
きっと痛い。
ナシだな……やめておこう。
これは分身で試してもしょうがない。
人間とは体の構造が違うからだ。
自律分身なら俺と全く同じ肉体だが……。
まあ、それは今度にしよう。
今の自律分身にスキルで殴らせろ、とは言いにくいし。
だって理不尽だろ。
本体だからって分身をないがしろにしていいわけじゃない。
理不尽にぶん殴られて痛い思いをした記憶は受け取りたくないしね。
俺は自分に優しいのだ。
人の痛みがわかる男である。
これは新しい自律分身を出すときに試そう。
自分をぶん殴り、ぶん殴られる覚悟をして、その意識を継いだ自律分身なら殴ってもいい。
人を殴っていいのは殴られる覚悟をした奴だけだからな。
その記憶も受け入れるわけだし。
さて、それまでは骨で試そう。
スケルトンは痛みなど感じまい。
なら殴り放題だ!
というのはちょっとヒドイかな?
スケルトンの痛みはわからない男である。
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