宝箱の中身は萎びたアレ……!?
分岐のたびにノートを開いて地図を書き足す。
そして床に塗料でマークをつける。
地道な作業だ。
でもやる価値がある。
迷路は厄介だが目印があればただの通路。
迷わなければ一本道と変わらない。
「お、銃声だ」
通路に反響して銃声が聞こえる。
近くにトウコがいるようだ。
俺は音の方向へ近づきながら呼びかける。
「トウコ、こっちだ!
階段を見つけたぞー!」
しばらくして、トウコが通路に顔をのぞかせる。
「ちぇー!
けっこう進んだと思ったのに、負けっスか!」
手になにか持っている。
「ん、トウコ。なにを持ってるんだ?」
「あ、途中で宝箱を見つけたんスよ!
入ってたのはしなびた干し肉っス!」
トウコがずいっと、干し肉を突き出してくる。
「店長にあげるっス!」
「近い! 目に入るって!」
俺は干し肉を受け取ってよく見てみる。
ふむ。
萎びた干し肉か……。
トウコがそう表現したのはわかる。
水分がぜんぜんない、カチコチのカタマリ。
分量はまあまあある。
ステーキ肉をそのまま乾燥させた感じ。
表面は粉っぽい。
カビているのか、うまみ成分なのか……。
かじるにはちょっと大きい。
食べやすいように薄切りにしてビーフジャーキーみたいにすれば……。
うーん。
「どうにも、うまそうには見えないな」
「ビミョーっスね!」
微妙な物をくれても嬉しくないんだが……。
刀で表面を削ってみると、中は肉らしい赤色も残っている。
表面に比べればマシか。
しかし試しに食べてみる気は起きない。
俺は微妙肉を腰袋にしまう。
「これはあとでリンに鑑定してもらおう。
無毒化したら食られるはずだ」
「一等賞の店長が全部食べていいっスよ!」
「だから、うれしくねーよ」
「にしてもリン姉、遅いっスねー」
「そうだな。探しにいこうか」
「いまごろ迷子になって泣いてるかもしれないっス」
床に印をつけながらリンを探す。
かなり経って、疲れた様子のリンたちと合流した。
泣いてこそいなかったが、半泣きだ。
「ゼンジさーん……お待たせしました。
ずいぶん迷っちゃいました……」
自律分身が渋い顔で言う。
「途中から俺も口を出したんだが……。
放っておいたらずっと同じところをぐるぐる回っていたかもしれん」
やっぱりそうなるか。
別行動しても効率は上がらないな、うん。
リンはしょんぼりした様子で肩を落としている。
トウコがリンの肩をポンポンと叩く。
「リン姉、ドンマイっス!」
「ありがとうトウコちゃん。
分身さんがいなかったら、心細くて泣いちゃったかもしれないよ……」
「じゃあ、次の階層はまとまって行動しようか」
「はい。それがいいと思います!」
三階層はまとまって行動することになった。
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