セーブしますか? しませんか?
俺は足場を一段一段踏みしめて階段をくだる。
足場はしっかりしている。
崩れたり、罠があることを警戒している。
しかし何事もなく底にたどり着く。
リンとトウコが魔石と弾丸を拾い上げる。
俺はノートのページをめくる。
二階層の地図を書くためだ。
「階段の外は部屋になっているな」と自律分身。
「敵さんはいません」
【サポートシステム】と【魔力知覚】の索敵は有効だ。
先ほどの階段戦でもモヤを通してスケルトンの位置が見えていたようだ。
便利なものだな。魔力が見えるというのは。
階段に隣接した部屋に入る。
部屋には三つの出入り口がある。
ドアはついていない。
正面の部屋はぼんやりと灯りを放っている。
光の帯に囲われているのだ。
つまり、安全地帯である。
左右には通路が伸びている。
「正面は安全地帯か。
入って復活地点を更新しておくか?」
俺の言葉にトウコが不思議そうに言う。
「行くに決まってないっスか?」
「いや、死んだときに上の階で復活したほうが便利かと思ってな」
俺の言葉を自律分身が補足する。
「まあ、死なないだろうが念のためだな」
「上の階で復活するのは、すぐに帰るためですかー?」
「そうだ。
もしも誰か死んだら、いったん引き上げるつもりだ」と俺。
「死ぬほど危険なら、ちゃんと対策を立てて仕切り直すんだ」と自律分身。
「とりあえずチェックポイントを更新しとけばいいと思うっス」
トウコにはリヒトさんの状況を説明していない。
復活ポイントのせいではまり込むことは考えていないのだ。
「この階層なら大丈夫だろう。
でも、詰んだ状況で自動セーブされたらどうなる?」
「あー。それ、くそゲー展開っスね!」
トウコにも伝わったようだ。
「とはいえ二階層で気にすることじゃないな。
今回はセーブを更新しておこう」と俺。
「トウコ。セーブの仕様については頭の片隅には置いておくんだぞ」と自律分身。
「リョーカイっス!」
リンが言う。
「じゃあ、安全地帯に入ってみますか?」
「ああ、そうしよう」
俺たちは光の帯を通り抜けて安全地帯に入った。
これで死んでも二階層で復活できる。
部屋は行き止まりになっている。
トウコがつまらなそうに部屋を眺める。
「なんもないっスねー」
「安全に休めるならありがたいだろ」
ここはトウコの言うようになにもない部屋だ。
家具や宝箱はない。
しかし安全がある……はずだ。
リヒトさんの話では、光の帯に囲まれた部屋は安全地帯だ。
敵は入ってこないし、攻撃もされない。
こちらから攻撃もできないらしい。
そのあたりは自分でもしっかり確認しておきたい!




