セーブポイントは光の帯で!?
俺は自律分身たちに問いかける。
「セーブポイントは見つかったか?」
「いや、まだだ」と自律分身。
リヒトさんとの会話から、この大部屋の近くにあるはずだ。
「じゃ、手分けして探そうか。
この部屋の近くにあるはずだ。
見つけたら戻ってきてくれ」
「はーい」
リンは振り返りながら、自律分身を追って通路へ入っていった。
俺とトウコは別の通路の探索を始める。
すぐにセーブポイントは見つかった。
見ただけですぐにそれとわかった。
光の帯がオーロラのように揺らめいている。
部屋全体がその光に覆われている。
「おお、これが安全地帯か……」
「なんかゲームっぽいっス!」
「中に入ると復活地点として登録されるらしい。
ダンジョンの外じゃなくてここで復活するんだってさ」
「へー。便利っスね」
「だからって、死ぬんじゃないぞ。
これはただの保険だ。いいな?」
トウコがからかうように笑う。
「わーかってるっス。
店長は心配性っスねー」
俺はマジメな顔で言う。
「そりゃ心配するだろ。
トウコに死んでもらいたくないんだ」
「へ、へえー。そーっスか……」
トウコが目をそらして笑いを引っ込める。
真面目に心配されると弱いのだ。
「んじゃ、安全第一でやるぞ」
「りょ! 安全サクサクで行くっス!」
わかったんだか、わかってないんだか……。
俺たちは大部屋に戻ってリンと自律を待った。
二人を安全地帯に案内する。
「わあ! 綺麗ですねー」
リンが笑いながら光の中へ飛び込んでいく。
「部屋の中も明るくて、キラキラしていますよー。
ほら、分身さんも早くきてくださーい!」
リンが振り返り、両手を広げて自律分身に笑いかける。
自律分身はぼんやりとリンを見る。
「ああ……いま行く」
自律分身は間の抜けた表情でリンに近づいていく。
オーロラの光よりリンのほうが綺麗だ。
……なんてことを言おうとして言い損ねたな。
そんな顔だ。
俺にはよくわかる。わかるぞ俺。
「さて、じゃあ手分けして階段を探すぞ!
またあとでな!」
「あっ。はーい!」
俺はトウコの手を引いてその場を離れた。
迷路が続く。
大部屋と安全地帯をのぞくと、ほとんどが通路になっている。
曲がり角に次ぐ曲がり角。
十字路やT字路では両側からスケルトンがやってくることもある。
だが問題ない。
「うらうらっ!」
トウコが両手の拳銃でそれぞれを打ち倒してしまう。
うーん。
やることないね。
地図を書きながら歩いているだけで敵は銃弾に倒れていく。
トウコは楽しそうに戦っている。
俺はさらさらと地図を書くだけでいい。
外に出れば管理コンソールで地図を確認できる。
しかし今ここでは地図を見れない。
自分のダンジョンならステータスウィンドウから地図が見れる。
管理者権限は赤転送門の中では使えないみたいだ。
だから地図を書く意味はある。
迷わずに帰れる程度の最低限でいいけどね。
「階段発見っ! なんかいつもと違うっス!」
「へえ。床に階段があるのか。
下りの螺旋階段になっているな」
俺のダンジョンは壁面に階段がある。
このダンジョンは床にある。
つまり、階段の位置も迷路のどの場所にあるかわからないんだ。
地図を書いて行き止まりだと予想できても、調べなきゃいけない。
ふーむ。
これは地味に面倒な……。
いや、手ごたえのある迷宮だな!




