警備員にも忍者にも、ピッタリの装備です!? 【装備】【トンファー】
スーパーヒーローは、事件が起きてからさっそうと現れて解決していく。
そうではない主人公は、準備して警戒して……やっとスタートラインです。
俺は、陰ながらの警備を続けている。
それにしても、いつ来るのかわからない相手を待っているのは、疲れるものだ。
来て欲しい相手でもない。ストーカーなんて。
外でバットの素振りをするのも限界がある。
何時間も続けていたらおかしいよな。
当たり前だが、疲れるし。
こうして外で目立っておくことにも意味はあるはず。
ストーカーが警戒して近寄らないかもしれない。
「……昨日も、もしかしたら警戒させて追い返したのかもしれないぞ」
昨日、ストーカーは宣言通りに来たのかもしれないんだ。
でも、昨日は俺やシモダさんがうろうろしていた。
DIYのために出たり入ったりしていたんだ。
置き配がデカデカと部屋の前に置いてあったりして、普通と違う状況だった。
隣人の気配を察して、あきらめて帰ったのかもしれないじゃあないか!
うむ。こうしてうろうろしていることにも意味があるかもな。
自宅警備員だって、治安の維持に貢献しているかもしれない。
今日は、駐車場にシモダさんの車が停まっていない。
つまり、口うるさいシモダさんは留守だということ。
騒いでも文句は来ない。
この機会に、大掛かりな掃除をしてしまうか。
大掃除には少し早いが、部屋でただ待っていてもしかたがない。
家具を動かして裏側まで掃除する。
掃除機もフルパワーで唸っているぜ!
うむ。ついでに部屋もきれいになった。いい感じ。
ピカピカだ。
しかし、手持ち無沙汰になってくるな。
もう掃除すべき場所も無い。
風呂もトイレも掃除してしまった。
無駄に捗ったな!
しかし、一日中掃除しているわけにもいかない。
というわけで、ダンジョンへ!
出たり入ったりして様子を見ればいい。
それだと遠出はできないから、攻略のために深く潜ることはできない。
よし! 拠点でできることをしよう!
「まずは、クラフトでもするか。自律分身用に攻防一体の武器を作ろう。作るのは……トンファーだ!」
トンファー。
警棒代わりに使われることもある打撃武器である。
四十センチから五十センチほどの棒に垂直の取っ手がついた武器である。
二つセットで、両手に持って使う。
なぜか忍者がよく使っている。
忍具じゃないと思うが……不思議と忍者に好かれるトンファー。
「あれ? なんで、忍者のイメージがあるんだっけ?」
あ、アレか? ヌンチャクとかサイとか棒を使う四兄弟の残りひとりか?
……いや、刀だったな。
わからんわー。
うーん。ま、いいか。
ともかく忍者的武器である!
持ち手部分を持てば、腕の外側に棒が来る。
腕の外側を肘先まで守ることができる。
これで攻撃を受けたり、さばいたりして使う。
持ち手は中央ではなく偏った位置にある。
長いほうは、遠心力で敵を打つ武器になる。中距離の打撃武器だ。
短いほうを相手側に向けて構えれば、近接武器、格闘武器になる。
持ち手を回転させれば、すぐに持ち替えられる。
棒の短いほうを持てば、片手剣のような使い方もできる。
様々な使い方のできる、攻防一体の武器なのだ。
トンファーは沖縄の古武術の武器だ。
中国から伝来した武器が元とも言われる。
香港のアクションスターも使っていたので、格闘映画ファンにも馴染み深い。
「さっそく、作っていこう!」
トンファーは忍者にも親和性の高い武器だ。
もちろん【忍具作成】で作れる。
俺は忍具作成台に向かうと、魔石と材料を台の上に並べる。
材料は、バールのようなモノだ。
バールも武器として使えるが――少し使いにくかった。
重さとバランスの問題だ。
頑丈さはイイんだけどね。
バール一本から、二本のトンファーを作る。
軽く、頑丈なイメージ。
長さは、持ち手を持った時に長い棒が肘先より少し長い程度。
「忍具作成! ――よし、完成! 軽量鉄製トンファーだ!」
ついでに、腰に吊るためのコウモリ革ホルスターも作成した。
色は黒。艶消しだ。
ううむ、渋いぜ。
「よっ! ほっ! あたぁっ!」
うむ。楽しい!
手に持ってクルクルと回す。
持ち替えたり、短いほうを先に出したり、長いほうを前にしたり。
空手の突きのように、短いほうで打撃したり。
シンプルに使うこともできる。
しかし、これは奥が深そうだぞ……。
鎖分銅もそうだけど、真面目にやろうとすると深いタイプの武器だ。
どうせなら、使いこなしたいね!
「ふむふむ……遠心力を使うのか!」
一度ダンジョンから出て、動画で勉強する。
裏拳のように腕を動かし、鞭のようにしならせる。
持ち手を緩く持てば、棒は遠心力で回転する。
そして、インパクトの瞬間に強く握る。
緩いまま持っていては、打撃力が下がってしまう。
部屋の中で、タオルを使って練習してみる。
「……うーん。難しいな」
縦に上段から振り下ろすときも、回転の勢いを使う。
剣や棒のようにただ振るのではない。
そういうふうにも使えるが、独特の形状を利用する。
防御するときも、受ける面や角度を考える必要がある。
止めるのではなく、弾く。
受け払う。
角度を間違えれば、腕へ相手の攻撃が当たってしまう。
盾のように面積がないので、点で受けるようなイメージになる。
ごく狭い範囲と角度で弾かなければならない。
また、体から離してもスキが生まれる。
コンパクトに、引き付けて受ける。弾く。
しかも、この武器は基本的に両手で扱う。
右手だけじゃなく、左手でも使えなければならない。
まあ、動画見ただけで達人になれるわけはない。
何年も修行しないと駄目らしい。
アパートは異常ナシだ。
再度ダンジョンに戻って練習してみる。
ダンジョンの中ではスキルのサポートがある。
【軽業】のおかげでジャグリングのように持ち替えたり、回すのも容易だ。
持ち手を持って、内側に、外側に回転させる。
バトンの要領だ。トンファーバトンとも言うからな。
地味に【軽業】は汎用性が高い。
敏捷力に関連したスキルとしての色が強いんだな。
アクロバットでの移動や体捌きに加えて、手技もイケる。
取ってよかった【軽業】!
「それでも、まだまだ難しいな……」
なにも、扱いの難しい武器を使うことはないかもしれない。
しかし、盾や鎧でガッチリと身を固めるわけにはいかない。
重装備になっては、回避に影響する。素早い動きを損なう。
重装忍者は目指すべき方向じゃない。
最小限の道具、荷物で活動するのだ。
その点、トンファーはなかなかいいのだ。
持ち運べて、防御力も高まる。
これも、自律分身の防御力対策のひとつだ。
また、普通の分身に使わせるのもいい。
素手で攻撃したときに反動で自壊してしまう対策にもなる。
分身を出してないときは自分で使ってもいい。
しかし、ちょっと荷物が多いな。
そろそろ、装備を持ち運べる限界かもしれない。
防刃防炎陣羽織とトンファー。
せっかく作ったんだから検証したい。使い心地を試したい。
ゴブリンぶん殴りたい!
コウモリ打ち落としたい!
――だけど今は、ここを離れられない。拠点より奥には行けない。
「それじゃあ、ちょっと外の様子を見て来よう。」
巡回警備――異常ナシ!
俺自身が不審人物っぽいことは気にしない!
気にしたら負け案件だ!
また、拠点に戻る。
さて、じっくり拠点でできること――
スキルの取得をやろう!
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