リアル・ダンジョン攻略開始!
俺の拠点に赤い転送門が現れた。
これはリヒトさん側にも現れている。
リヒトさんたちは中に入って探索している。
そこは洞窟風のダンジョンで、ゴブリンがいるという……。
おそらく俺のダンジョンに入れたはず。
しかし出会えない。トウコの銃声も聞こえないという……。
「リヒトさんたちは、どこにいるんでしょうか?」
「うーむ。
接続したら簡単に会えると思っていたんだけどな」
……もどかしい。
電話を持たずに待ち合わせしているみたいな気分だ。
リヒトさん側の情報を待ってみたが、答えは得られなかった。
しかたない。
こちらもダンジョンに潜ってみるべきだろう。
「リヒトさんは転送門の先を見てほしいそうですね?」
「うん、そうだな。
でも先に管理コンソールの増えた項目をチェックしよう」
赤い転送門が現れる前に管理コンソールにも変化があった。
それを見てからでも遅くはない。
「あ、そうでしたねー」
「増えた項目は……」
俺はコンソールを操作する。
メニューの最下部に「ダンジョン接続」が増えている。
画面を開く。
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ダンジョン接続
・ダンジョン情報
・階層情報
・地図情報
・接続解除
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「いつもの画面と似ているな」
リンが一番下を指差す。
「違いは……接続解除がありますねー」
「へえ。解除できるのか。
まあ、今は触らないでおこう」
「そうですねー」
「上から順に見ていこうか」
「はい」
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・ダンジョン情報閲覧
接続先:
リアル・ダンジョン
ドロップ方式:
魔石
宝箱:
あり
罠:
あり
安全地帯:
あり
復活:
あり
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この画面もいつも見ている画面に似ている。
「接続先の情報が追加されているな」
「リヒトさんのダンジョン名ですねー」
ふーむ。
ということは接続先はあっている。
リンが赤い転送門を指差す。
「やっぱり、この向こうはリヒトさんのダンジョンなんですねー?」
「そういうことらしいな……」
さらに画面を読み進める。
「おっ!? 復活ありだぞ!」
「わあ。これで安心ですねー!」
「最初からわかっているのは助かるな!」
「そうですねー!」
復活ありのダンジョンは難易度が高い傾向にある。
とはいえ、死なないという安心感はデカい。
これでダンジョンのことがわかった。
宝箱、罠、安全地帯、復活、これが全部ある。
とはいえこれはダンジョン全体の情報だ。
ダンジョン内に一つでも宝箱があれば、ありと表示される。
階層情報を見れば階ごとの設定がわかる。
これは探索しないと表示されないはずだ。
一応チェックしてみたが、情報はなかった。
リヒトさんは攻略済のはずだけど……。
リヒトさんに聞けば答えてくれるだろう。
しかしダンジョンの解析をすると言っていたから邪魔しては悪い。
それに、全部聞いたら攻略の楽しみが減ってしまう。
安全第一で進みたい気持ちもある。
だけど新しいダンジョンへの興味が競り合っているのだ。
俺はダンジョン攻略というものが好きなのだ。
いつまでも門の外で待っているのも飽きてきた。
死なないなら多少の無茶もできるし!
飛び込んでみるか!
「よし、ささっと入ってみるか」
「はい! 私も行きます!」
リンがさっと手を伸ばすと、俺の手を握る。
やわらかく、温かい手だ。
先に一人で偵察する手もある。
でも一緒に行こう。
さあ、攻略の時間だ!
手をつないだまま赤い転送門に触れる。
いつもと同じ、ふっと意識が飛ぶような感覚――
ふわりと意識が戻る。
俺たちはダンジョンの中に入っている。
「迷宮風か」
「ゼンジさんのダンジョンの六階層に似ていますね」
俺たちは石造りの迷宮の通路にいる。
通路の幅は二人で両手を広げてもぶつからない程度。
天井は俺がジャンプしても届かない。
空中歩行で二段ジャンプすればギリギリ届く。
いいぞ。
壁や天井は俺の足場になる。
武器を振ったり動いたりするのにも支障はない。
「暗くなくてよかったですー」
「壁かけ松明があるおかげだな」
【暗視】のないリンでも困らない明るさだ。
暗い場所もあるので【隠密】も使えそう。
俺のダンジョンの迷宮階層に似ている。
「一応、罠を確認しながら進むぞ。
――分身の術」
罠あり、となっていたからな。
一階からあるとは限らないが念のためである。
今回は罠探しローラーを持ってきていない。
分身を先に歩かせればいいだろう。
分身、俺、リンの隊列で通路を進む。
リンがあっと声をあげる。
「通路の先、なにかいます!
人型みたいです!」
人型のモンスターか。
リヒトさんの話ではスケルトンが出ると言っていた。
あるいは人間――リヒトさんの仲間かもしれない。
今は隠れる場面ではない。
敵にバレたとしてもかまうものか。
俺は大声で確認する。
「誰かいますかー?」
返事はない。
かわりに聞こえてきたのはカタカタと鳴る骨の音だ。
曲がり角から骸骨が姿を見せる。
動く人骨……スケルトンと呼ばれるモンスターだ。
顔に表情はない。
それも当然、顔に皮膚がないからだ。
眼窩はうつろに落ちくぼみ、そこに眼球はない。
なにを考えているかわからない不気味さがある。
スケルトンがカタカタと骨を鳴らし、少し首をかしげる。
そしてスケルトンは手に握った武器を俺たちに向けた。
明確な敵意!
俺は刀を構える。
戦闘だ!




