表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

109/1456

自宅警備員じゃない――隠密警備隊、発足!? その2

「あ、そうそう。隣同士だからすっかり忘れてたんですが……連絡先をお伝えしておきます。これ、俺の連絡先です」

「あっ! そ、そうでしたね。すぐに登録します! 私のも登録しておいてくださいね! いま、おくりましたっ!」


 オトナシさんの端末を操作する速度が素早すぎる。

 すぐに、登録が終わる。速攻でメッセージが届く。


 おお、なんかちょっと感動した。

 玄関をノックすれば、チャイムを押せばいつでも会える。

 だが、気軽にできることでもない。


 スマホの操作一つですぐに連絡ができるって……なんか安心だな。



 いいぞ。ごく自然に連絡先を交換できたぜ!

 いや、連絡先を聞き出したかっただけじゃないんだ。ほんとうだ。

 連絡が取れないせいで困ったことになるとか、いやだしね。


「届きました。これで何かあったら連絡できますね!」

「はいっ!」


 オトナシさんはうれしげに端末を眺めているように見える。

 うむ、自然な連絡先交換になったな。不信感は与えていないな。

 よし。さらに何気ない感じでもう少し聞いてみよう。


「そういえば、オトナシさん。最近は、変わったこととかないですか?」

「……変わったこと? いえ、ないと思いますが」


 小首をかしげて、考え込むオトナシさん。

 まあ、曖昧な質問だからね。


「あー、ほらこの前、ストーカーの話を聞いたので、最近は大丈夫なのかなーって」


 ……例の書き込みについては話さない。

 差し迫った危機があるという話題は避ける。


 昔話としてのストーカーの話を聞く分には、大丈夫。

 昔のことを聞かれていると彼女は思うだろう。


「あ、そういうことですね。……すみません、心配をかけてしまって!」

「いえ、大丈夫だとは思いますが、念のためです」


 俺はできるだけ重々しくならないように問いかける。

 すると、オトナシさんは少し考えて、話しだした。


「……そうですね……勘違いだとは思うんですが……」

「もちろん、勘違いだって全然かまいませんよー。気になることがあれば、言ってみてください」


「わかりました。じつは……最近、下着――じゃなくて。せ、洗濯物がいくつか見当たらなくて……でも気のせいだと思います」


 オトナシさんは恥ずかしがって言い直した。

 でも、下着だろうな。


「洗濯物? ……って下着泥棒ですか? それは……いやですね」

「でも、そんなはずはないんですけど……」


 オトナシさんは眉をひそめて否定している。


 だけど、オトナシさんの下着か。

 盗まれるに決まっている!


 俺だって欲し……じゃなくて。

 俺は布に興味を示す変態じゃない。

 興味があるのは中身……じゃなくて!


 チガウそうじゃない!


「――ちなみに、俺じゃないですよ?」


 ぐわーっ。余計なことが口からでた!

 余計あやしくなるじゃないか!

 やってないよ! 俺は無罪だよ!


「えっ? ――別にい……う、疑ってませんよ!」

「――え、はい。ともかく! 下着は外に干しちゃあ駄目ですよ!」


 ふう、ごまかせた。なんとか自然な話に戻せたな。


 ストーカーじゃなくても、下着泥棒が新たに現れるかもしれない。

 変な気を起こす輩がいつ湧いてもおかしくないんだ。


 ――俺は変な輩じゃない。はずだ。

 自分が正気かは、たまに疑わしいが。


「いえ、部屋干しなんです。ほら、このアパートはベランダないじゃないですか。窓だと、こころもとないですし、外から見えちゃうから……。だから、盗まれるとは考えにくくて。風で飛ばされたりもしませんし。戸締りはしっかりしていますし。あんまり外出もしませんし……」



 確かに……。ここのアパートはベランダが無い。

 おかげで家賃は安いんだが……。

 そこは不便ではある。


 窓の外に申し訳程度の物干しはある。だけど不安定だし、俺も使っていない。


 運悪く歩行者の頭に下着なんか落とそうもんなら目も当てられない。


 かといって、部屋の外の廊下に干したりしたら俺が見ちゃうし。驚くわ。

 どんな顔したらいいのか、わからなくなるね。


「それなら……普通に考えたら、下着泥棒も盗めませんね」

「そうなんです。だから、なくなるはずが無いですし……。きっと私の勘違いで、どこかに紛れているのか、間違えて捨てちゃったとかかなって……」


 おかしいな……。

 オトナシさんの部屋はモノが見つからないほどくちゃぐちゃなのか?

 間違って捨てるってのもな……。


「うーん。でも何かスッキリしないですね。一応気を付けてみてください。それから、何か気付いたことがあったらすぐに相談してくださいね」

「はい! 何かあったら――助けてくださいね!」

「うん。それはもう、全力で助けに行きますよ!」


 彼女はうれしそうに笑うと、部屋に戻っていった。

 次の授業があるらしい。



 俺は素振りを続けながら考える。


 彼女の話からすれば、やはり何かありそうだ。

 下着泥棒か。

 うっかりなくなったなんて、都合のいい話はないだろう。


 もしかすれば、部屋の中まで侵入されたのかもしれない。

 そうだとすれば、空き巣で、泥棒でもあるわけだ。

 鍵を開けるくらいのことができたということになる。


 強盗や暴行犯に化けないとも限らない。


 ちょっと、脅威度が上がった。

 ストーカーとは別件かもしれないが、なんらかの問題は起きているのだ。

 もはや、気のせいではない!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ