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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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勘のいいヤツは危険だよ!?

 悪性ダンジョンの中。

 御庭の横にはナギさんが控えている。


「さてクロウ君。

 ここなら話ができる。

 なんでも相談して欲しい。

 できることなら協力するよ」

「助かる。

 急に無理言ってすまないな、御庭」


「いいんだよ。

 ついでに仕事も片付くしね!」


 話をするために悪性ダンジョンへやってきたのだ。

 ダンジョンへの対処もついでに行う。



 トウコとリンが言う。


「んじゃ店長! 行ってくるっス!」

「ゼンジさん。またあとでー」


 装備を持たせた自律分身が言う。


「行ってくるぞ、(本体)

 奥で何かあったら連絡するから心配するな」

「ああ。頼むぞ(自律)!」


 オカダが俺の背をバンバンと叩く。

 気安い!


「ゼンゾウ!

 誘ってくれてサンキュー!

 俺たちもひと暴れしてくるわ!」

「おう」


 オカダが走っていく。


「あっ……では、いってきます」


 コガさんがぺこりと頭を下げ、オカダの後をついていく。


 奥へ進む一行に手を振って見送る。

 俺は同行しないが、戦力は充分だろう。



 俺は御庭に向き直る。


「それで、本題だが……」


 御庭に相談を持ちかけたときに、かなりボカした内容を伝えている。

 重要な情報を濁して意味を伝えるのは難しい。

 歯切れが悪く、抽象的になってしまうのだ。


 管理者権限を持つリンに影響があった部分は御庭に話せない。

 霊場(れいじょう)である公儀隠密の拠点でも話すのは危険がある。

 ダンジョンの中でもボカすべきだろう。


 俺は御庭に情報を伝えていく。

 区切りのいいところで御庭とナギさんが外へ出る。


 戻ってきてまた話す。

 そのくり返しだ。


 リンのときと同じだ。

 手間だが、この手順を踏まないと、いつ認識阻害が起きたかわからない。

 どの情報で認識阻害が起きたかわからない。


 情報をどんどん話してしまうのはマズい。

 悪い影響が大きくなってしまう。



 御庭は認識阻害を受けると、それが些細なものであっても気づける。

 これは異能によるものだ。

 自分自身への変化に敏感だからすぐに気づけるという。


 御庭が言う。


「問題なかったよ。

 クロウ君とリヒト君は並行世界の可能性について考えたんだね。

 面白くなってきた!

 さあ、続きを!」


「俺たちのダンジョンには管理者権限がある。

 段階ごとにできることが増えていく。

 三段階目が問題だ」


 御庭は興味深そうに俺の顔をじっと見ている。

 そして何か分かったような顔でうなずく。


「ふむ。クロウ君は管理者権限が危険な情報だと考えているんだね。

 それなら曖昧に話してみて欲しい」


「ああ。

 これは管理者権限を持つリンに記憶障害が出た。

 リンは一段階目の権限を持っている。

 俺は二段階の権限を持っている。

 リヒトさんは三段階目だ」


「管理者権限があると認識阻害を受けにくくなると。

 続けてくれるかな?」


「三段階目の権限でできることをリヒトさんに頼まれている。

 彼と、彼の仲間を助けて欲しいそうだ」


 ダンジョン間接続については話さない。

 ここで明かすのは三段階目の管理者権限になにかある、という薄い情報だ。


 御庭がうなずき、先を促す。


「うん」

「俺はそれを受けたいと思っている」


「受けたいけど、迷っているんだね?」

「そうだ。

 助けるために相手側の権限を使う。

 俺はそれに同意する。

 それがこちら側にどう影響するか不安なんだ」


 俺の言葉は少し歯切れが悪い。


「こちら側とは、僕らの世界という意味だね?」

「そうだ」


 御庭がうなずく。


「では、一度外に出て確認してくるね。

 少し待っていて欲しい」


「ああ、何度もすまないな」

「なに、いいさ」


 何度も出入りさせるのは気が引ける。

 その度に御庭のリスクが高くなっていくからだ。


 何発殴ったら倒れるか試すようなもの。

 意識を強制的にいじられるのは気持ちが悪いものだ。


 話す俺にも追放のリスクが伴う。

 相手が異能者でも程度の問題があるのだ。


 だが相談しておかなければならない。

 独断で進めるべきじゃない。


 相談することで安心したいだけじゃあないぞ?


 リヒトさんのダンジョンと接続すれば、その先がある。

 繋がるってことは行き来できるってことだ。


 リヒトさんたちが、ダンジョンを通じて俺のダンジョンに来る。

 その先は?


 俺のダンジョンの出口から外に出られるかもしれない。

 そうなれば並行世界人であるリヒトさんが、この世界に入ってこれることになる。


 滅びた世界から俺の世界への避難完了、というわけだ。

 めでたしめでたし。

 いや、そうはいかない。


 あとはご自由に、と放逐するのは無責任すぎる。


 別世界の住人に自由行動を許していいんだろうか。

 彼らを安全だと信じていいのか?


 彼らをこの世界に入れた場合、もっと複雑な問題もある。

 現実的な問題だ。

 家も仕事もない彼らが、どうやって暮らすのか。

 戸籍や生活基盤をどうにかしなければならない。



 こちらの世界のリヒトさんはもういない。

 あちらのリヒトさんが成り替わって暮らせるかもしれない。


 しかし、リヒトさんには仲間がいる。

 こちらの世界に同一人物が存在するケースもあるだろう。


 リヒトさんやその仲間が、失った家族や知人に会いたがるかもしれない。

 もちろん、こちらの住人からしたら別人だ。

 混乱が生じることは間違いない。


 しかも、ただの混乱じゃない。

 隠蔽の影響を受ける可能性が大きい。


 そもそも並行世界人がこの世界に入ったらどうなる?

 入った時点でパージされるかもしれない。

 記憶を失うかもしれない。


 なにもかもが不確かだ。

 わからないことが多すぎる。


 こんなこと、一人では決められない。

 俺が一人で背負える問題じゃない。


 もちろん、俺に明確な責任などない。

 彼らを入れても法律で罰せられることはない。

 そもそも誰も気づかないはずだ。


 リヒトさんたちの面倒を見なくたっていい。

 そもそも助ける義務もありはしない。

 申し出を断ったっていいんだ。


 でも助けたい。

 助けると決めた。


 だから考えている。

 助けた先どうするかを根回ししておくんだ。


 そこで御庭を頼る。

 公儀隠密という組織の力を借りるのだ。



 御庭が戻ってくる。


「リヒト君が強い権限でクロウ君に同意を求めている。

 クロウ君はこちらの世界に影響があると心配している。

 ここまでは問題なかった」


 ナギさんもうなずいている。

 認識阻害は受けなかったようだ。


「ふう。それはよかった」


 御庭が続ける。


「さらに僕はこう考えた。

 並行世界の可能性。

 クロウ君はこの世界への影響を心配している。

 あちらの世界からこちらの世界に何かを行うということだ。

 では、なにが起きるのか?

 と、そこまで考えたところで認識阻害が起きた」


 まだ俺はすべてを話していない。


 御庭は情報を扱うプロだ。

 俺の表情、口調、そういうものも読み取っている。


 察しが良すぎる!


 断片から推測しただけで認識阻害が働くのかよ!?

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