受け入れるべきか、断るべきか?
リヒトさんのメッセージを読み、ダンジョンの外に出る。
少し読んでは外に出て、思い出せるかを確認した。
うん。問題ない。
読んだ内容はちゃんと覚えている。
問題はこれを他人に話してもいいか。
管理者権限がなくてもいいか、だ。
リンは一段階目を持っている。
トウコは権限を持っていない。
御庭は異能者だがダンジョン保持者ではない。
どこまで話せる。
どこまで話していい。
前にリアルダンジョン攻略記を読んだとき、俺は頭痛を覚えた。
リヒトさんのメッセージもそうだ。
読んだ内容を忘れてしまった。
ひどい頭痛で意識を失ったこともある。
認識阻害はそれほど危険なものだ。
俺はまだダンジョンに戻る。
管理コンソールの前で腕を組んで考えこむ。
「うーん……」
「どうしたんですか。ゼンジさん?」
リンが後ろから声をかけてくる。
「お、リン。いいところに。
ちょっと相談があるんだ」
「はい。なんでも言ってくださいね!」
リンがぱっと顔を明るくする。
相談されるのがうれしいようだ。
そういうものかな。
「リヒトさんからメッセージが来た。
簡単に言えば、助けてほしいってことだ」
「はい」
「俺は彼を助けたいと思う。
問題はその内容なんだ。
認識阻害がかかりそうな話で、リンに聞かせていいのか判断できない……」
「では、少しずつ聞かせてもらえますか?」
「そうだな。少しずつ……」
俺は簡潔に説明する。
一区切りごとにダンジョンを出入りして、リンの反応をうかがう。
「三番目の内容までは問題ないな。
次はどうだ? 権限についての話だ」
三番目はリヒトさんの世界が荒廃していること。
四番目は管理者権限の三段階目のこと。
リンがぎゅっと目をつぶる。
そして小さく首を振る。
「……思い出せません」
「そうか。ダンジョンに戻ろう」
やはり、認識阻害が働いているようだ。
管理者権限のダンジョンへの接続機能について、考えることができない。
軽い頭痛も起きているようだ。
これ以上、外で考えるのはよくない。
俺たちはダンジョンに戻った。
外ではダメでもダンジョンに戻れば思い出せる。
「やっぱり、私の管理者権限が足りないからでしょうか……」
「そうかもしれない。
となると、トウコに話せる内容はもっと限られるのか……」
いっそ細かい部分は話さないほうがいいかもしれないな。
「リンはどう思う?
ダンジョンへの接続を受け入れていいと思うか?」
「ゼンジさんはリヒトさんを助けたいんですよね?」
「そうだ。困っているなら助けたい」
「それなら簡単ですね!
ゼンジさんがやりたいようにするのがいいと思います。
私もお手伝いしますねー」
「あれ?
ずいぶん簡単に賛成してくれるんだな。
いいのか?」
危険性やリスクについて説明したばかりだ。
怖がると思ったが、リンの反応はそうではない。
リンは笑顔でうなずいて言う。
「ダンジョンでも公儀隠密のお仕事でもおんなじですよ。
どこにでも一緒に行きます!
隣で戦いたいんです!」
転送門を抜けてトウコがやってくる。
「なになに? 戦う?
それならあたしも行くっス!」
「戦うことになるかはわからん。
リヒトさんを助けようって話だ。
認識阻害の問題があってトウコに詳しく説明するのは難しいんだが……」
「難しい話はいらないっス!
なにかやるならあたしもやるっスよ!」
トウコはサッパリしている。
シンプルでいい。
難しいことは俺が担当すればいい。
責任者みたいなものだ。
責任を取るのは俺、決断するのも俺だ。
それを二人に押しつけるのは違う。
「そうか。それは頼もしい。
リスクもあるし、問題が起きるかもしれない。
だけどそれは俺が考える。
トウコは手伝ってくれればいい」
「もち、いいっスよ!」
二人とも手伝ってくれると言う。
これでリヒトさんに協力する方向は決まりだ!
ダンジョンの接続についての課題は残る。
これは御庭にも相談しよう。
認識阻害の問題があるからちょっと考えないといけないな。




