合流地点は戦場跡で!
「かなり探したがリンの姿は見つけられなかった。
すまない」
漫画のヒーローなら颯爽と駆けつけてピンチを救っただろう。
現実は甘くない。
そう都合よくいかないのだ。
復活アリのダンジョンとはいえ、どうせなら格好よく助けたいものだ。
リンがぶんぶんと首を振る。
「いえいえっ! いいんです!
私は夜が来てすぐにやられちゃってましたし!
頑張って助けようとしてくれて嬉しいです!」
リンはむしろ喜んでいるようだ。
「どうせなら助けたかったけどな。
まあ、次は早めに合流しよう!」
「そーっスよ!
死んでも次があるならオッケーっス!」
もちろん、トウコのことも助けたかった。
駆け付けるチャンスがなかったから後悔がないだけだ。
ダンジョンの中でよかった。
復活ナシの状況だったらと思うとぞっとするね。
ま、このあと俺も死ぬんだけどさ。
死生観がおかしくなってくるわ。
「で、朝が来た。雨も上がった。
リンを探してうろついて、戦闘の痕跡を見つけたんだが――」
俺は続きを語る。
日が登り、雨も上がった。
朝日を浴びて水滴のついた緑の木々が輝いている。
絵画的な美しさがあるな。
【水忍法】で雨粒を集めたおかげで水分補給もできた。
所々に水たまりが残っているので【水刃】なども狙える。
雨が降るのは悪いことばかりじゃない。
体温が奪われるから、次に雨が降るまでに服が欲しい。
【操水】で頭上に水を集めたりしてみたが、何時間も維持するのはコスト面で難しい。
空中に水が浮くわけでもないし。
【反発の術】で雨粒を弾くほうがコストはかからない。
水が触れないわけではないから完全に体温低下を防げるわけじゃない。
レインコートやボディースーツがあればな……。
恐竜の皮を剥げば作れるだろう。
ま、その作業が難しいのだが。
夜の間、移動や探索は捗らなかった。
いくらかモンスターを倒したが、素材は取れていない。
すぐに別の敵に乱入されるのだ。
そしてモンスターが共食いすると素材や魔石が残らない。
俺が倒しても、死体を食われると魔石が出なくなる。
これは【捕食】が作用しているのかもしれない。
横取りされるまえにトドメを刺せばいいのだが、そうすると【隠密】が解ける。
素材より生き残ることを考えて自重した。
ただ働きではないはずだ。
経験値を稼いだと考えよう。
いろんな恐竜の動きを観察できたし。
ヴェロキラプトルのような小型恐竜の出現率が高い。
おそらく夜行性で夜目が効く。
同種で連携するようだ。
こいつらは他の種類のモンスターにも襲いかかっていく。
一匹なら弱いが、数匹集まると厄介だ。
これよりも大柄な二足歩行の恐竜を見た。
二足歩行のトカゲという点では小型恐竜に似ている。
違いは体格。マッチョでゴツい。
体高が人間並みで、体重はそれ以上ありそうだ。
頭と顎が大きく、牙が長く鋭い。
小型のティラノサウルスという感じか。
事前に調べはしたのだが、俺は有名な恐竜しか見分けられない。
どうしても分類がざっくりになってしまう。
ま、本物の恐竜ではないし、なにに似ているかは重要じゃない。
わかればいいのだ。
ヴェロキラプトルのような奴を小型スレンダー恐竜とすれば、こいつは中型マッチョ恐竜だろうか。
うーむ。
わかればいいのだが……どうもしまらない。
中型マッチョ恐竜に気をつけろ! とか言いたくない。
とりあえず大顎恐竜とでも呼ぼう。
そんなことを考えていると、黒っぽい木を見つけた。
「ん……あの木、焦げているな」
地面や下草にも燃えたような形跡がある。
ここで炎を使った戦闘があったのだ。
「リン……!」
叫びかけ、俺は口を閉じる。
ここにいるはずはない。
戦闘の形跡は激しく、恐竜の足跡もたくさん残っている。
【隠密】を持たないリンが逃げ切れたとは思えない。
死体は見つからない。
あったとしても塵になってしまっただろう。
仲間の死体なんか見たくもない。
無駄とは思いながらも周囲を調べる。
その時、背後から声がかけられた。
小声だが、落ち着いた男性の声。
「クロウ。無事だったか」
「……スナバ、さん?」
振り返った俺の目に映ったのは、草人間だった。
体を大きな葉で覆い隠している。
肌は黒または灰色のグラデーション模様。
目だけが鋭く光っている。
二度見した。
よく見れば、大きな葉をギリースーツのように身にまとったスナバさんだ。
顔には泥が塗りたくられているようだ。
ジャングルの戦士現る!
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