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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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全滅からの反省会(クロウの場合)~ソロプレイは隠密で!~

「それで、ゼンジさんはどうでしたか?」

「ああ、俺は――」


 俺は言葉を選びながら自分の体験を話していく。



 気が付くと、一人で草原に立っていた。

 起伏のある丘のような見通しのいい草原だ。


 じめじめと湿度が高く、少し暑い。

 太陽が照り付けていて、素肌を焦がしている。

 日焼けしそうだな。


 周辺の様子を簡単に言えば恐竜映画で見た風景に似ている。

 花が咲いておらず緑ばかり。


 見慣れない植物が多い。

 背の高い木々で、シダのような植物が目立つ。

 ジュラ紀や白亜紀のような植生と言えるだろうか。



 遠くにトリケラトプスのような恐竜が見える。


 すごいな……恐竜だぞ!

 ちょっとした感動を覚えて息をのむ。


 いると聞いてはいたが、実際に見ると違う。

 ゴブリンやスライムと違って、リアリティがあると言うか……。

 ロマンがあるよな!


 見回してもリンやトウコ、スナバさんは見つからなかった。


 ここに居るのはまずい。

 隠れる場所が少なく、無防備だ。

 【隠密】は遮蔽物がないと効果が低い。


 こんな場所で肉食恐竜に襲われたらひとたまりもない。

 武器も防具も身につけていないしな。


 もちろん、収納に装備を入れてきた。

 忍者刀、加工用の布ロール、治癒薬を持ってきた。


 防具は人数分は持てなかったので、加工用の布である。

 ワイヤーとクモ糸で強化したもので、魔石があれば服が作れる。


「まずは忍具収納から刀を……ん!?」


 俺は妙な手ごたえを感じ、驚きの声をあげる。

 収納から装備が取り出せないのだ。

 どの枠からも取り出せない。


 まさか……収納による持ち込みすら禁止か!?


 ある程度予測していたとはいえ、これはショックだ。


 落ち着こう。

 深呼吸だ。

 とりあえず移動しよう。

 こんな平地で身をさらしているのはよくない。


 さいわい近くに森が見えた。



 森の木々は背が高く、うっそうと茂っている。

 巨大なシダ植物だろうか。

 ヤシの木に似ているが実はついていない。

 ソテツ類かな?


 下草もやはりシダ植物だ。

 これも大きい。

 身を隠す余地は充分にありそうだ。


 若芽はワラビやゼンマイのように先端がくるくる巻いている。

 山菜として食えるはずだ。

 こう見ても、美味そうとは思えないけど。


 たしか食べるためにはあくを抜いたりと手間がかかるはずだ。


 リンなら料理できるだろう。

 合流を急ぎたい。



 高いところから探してみるか。


「この木を登ってみるか……」


 【隠密】をかけながら太い木の幹を駆け上がる。

 手ごろな枝の上で、手をひさしにして遠くを眺める。


 うん。よく見える。

 このあたりに人影はない。


 先ほどまで居た草原では恐竜が草を食んでいる。

 モンスターの食事姿はレアかもしれない。


 遠くに山が見える。

 もくもくと噴煙を上げているということは活火山か。

 いきなり噴火したりしないだろうな……。



 森側は視界が悪い。

 遠くの様子はわからない。

 逆に言えば、隠れやすいということだ。

 草原より有利に進めそうだ。


 スナバさんは遮蔽物のない平地を嫌うはず。

 森に進むはずだ。

 ゲーム感覚で考えるならトウコもそうするかな?


 リンはどうだろう。

 おそらく俺たちが進む方向を予想するはず。


 俺なら森へ進む。

 よし、探索は森を中心に進めることにしよう。


 やはり事前に行動方針を話し合っておけばよかったな。

 とはいえ、バラバラになるとは思っていなかった。

 はぐれる想定はしていなかったのでしょうがないのだが。


 これまでに戦闘の音は聞いていない。

 銃声や、火の手が上がれば、そちらへ駆けつけるのだが……。

 耳を澄ませても人の叫ぶ声などは聞こえない。


 俺自身が大声をあげて皆を呼ぶ……というのはナシだ。

 仲間より敵が集まる可能性が高いからな。



 俺は樹上で考える。

 さて、どう動こうか。


 仲間を探すにしてもまずは装備が必要だ。


 周囲にあるのは植物、石、木……。

 石は投擲用にいくつか拾ってある。


 石にしても、素手では数個しか持てない。

 これは不便だ。

 持ち運ぶための袋やベルトが欲しい。


 まずは服を作りたい。

 スースーして落ち着かないからな。


 素材は植物でいいだろう。

 しかし【忍具作成】には魔石が必要だ。


 モンスターを狩るか。

 トリケラトプスのような大きなモンスターを素手で倒すのは厳しい。


 モンスターを狩るための装備がない。

 しかし装備を作るための魔石がない。

 困ったものだ。


 水があれば【操水】や【水刃】が使える。

 残念ながら見える範囲に水場はない。

 【水噴射】なら水がなくても使えるけどね。


 最初は魔力を節約しながら進もう。

 なにがあるかわからないからな。

 慎重に行く。


 いろんな恐竜がいるとスナバさんは言っていた。

 小型で簡単に倒せる奴もいるはず。

 そいつを探そう。



 今、やりたいことはいくつかある。

 一つ目、仲間を探す。

 二つ目、弱い敵を探す。

 三つ目、強い敵から隠れる。


 【判断分身の術】を使ってなんとかしよう。


 判断分身を四体出す。

 時間や耐久力は最低限にしておく。


 条件は以下だ。

 ――全速力で移動して、一定の距離を進んだら戻ってくること。

 ――なにかに出会ったら来た道を引き返すこと。


「判断分身の術……散れ!」


 四体それぞれを別の方向へ移動させる。


 分身たちが走っていく。

 オトリなので目立ってかまわない。


 仲間が分身を見つければ、後をついてくるだろう。


 敵対的なモンスターに見つかったら分身は襲われるはずだ。

 足の遅い敵なら引き連れて戻ってくる。

 足の速い敵なら逃げきれずに倒される。


 つまり分身が戻ってこない方向は危険だとわかる。

 分身が逃げられないような強敵がいるということだ。


 分身が戻って来たなら、その方向は比較的安全だ。



 樹上でしばし待つ。

 待機中に【瞑想】して魔力を回復しておく。


 無事に戻ってきた分身は二体だけ。


 最初に戻ってきた分身の後には誰もいない。

 二体目の後には……なにかいる。


 分身の後ろを追ってきたのは小型の恐竜だ。


「ギギィ!」


 現れたのは二足歩行のトカゲだ。

 体高は分身より低い。


 細身で俊敏そうな奴だ。

 ヴェロキラプトルに似ている。

 映画やゲームで見かけるものより小型だ。


 小さい分だけ足が遅い。

 そのおかげで分身は追いつかれずに済んでいるのだ。


 俺なら余裕をもって逃げきれるくらいの速度だな。


 木の下で分身が足を止める。

 戻ってくるという条件を済ませた分身が棒立ちになる。

 そこへ小型恐竜が近づいていく。


 俺は樹上で石を構える。

 隠密状態の俺に小型恐竜は気づいていない。

 狙いを定めて、恐竜が分身へ跳びかかるタイミングを待つ。


 攻撃の瞬間、スキが生まれるはずだ。

 チャンス!


 俺は石を投擲する。

 拳大のゴツい石が一直線に飛んでいく。

 恐竜に石が命中。

 重い打撃音を立て、恐竜の頭部が揺れる。


 恐竜がどさりと倒れる。

 声を立てることすらなかった。


 小型恐竜はびくびくと痙攣している。

 昏倒させたか?

 あるいは死んだか?


 ふむ。

 少し待ってみても塵にならない。

 まだ生きているのか?


 ならばもう一発!

 投擲した石が頭部に命中。


 やはり塵にならない。

 魔石にも宝箱にも変わらないな……。


 頭部を砕かれた小型恐竜はもう動かない。

 となると、倒しただけではダメなのだろう。


 トウコのダンジョンと同じかな?

 死体を破壊しないとアイテムをドロップしないんだろうか。

 ううむ。

 ゾンビと違って恐竜は硬いから面倒だ。


 分身でさらに攻撃を加えていく。

 何度か追撃したところでやっと塵に変わった。


 魔石が転がる。

 よし、いいぞ。


 俺は樹上から【引き寄せの術】を使う。

 魔石が手元へとやってくる。

 こういうとき地味に便利な術だ。


 ついでに投げた石も回収しておこう。

 こうして樹上から投擲を続ければ安全だ。

 何度でも投擲で狩りができる。

 ちょっとズルいかもな。


「さて、これで魔石が手に入った。

 とりあえず服を作ろうか!」


 いつまでも全裸でブラつくのはちょっとね。

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