全滅からの反省会(リンの場合)~SOSは打ち上げ花火で!~
トウコの話を聞き終えた。
次は……。
「リンの話を聞こう。
どうだった?」
「はい。私もゼンジさんを……皆さんを探しました。
でもすぐに敵さんに見つかってしまって……。
ほとんど隠れていました」
「見つかったのに無事だったのか?」
「はい。すぐに逃げて隠れました」
「逃げれたんスか?
あいつら脚速いっスよ?」
「それは炎で分身を作ってその隙に……。
おかげで助かりましたー」
【嫉妬】で真似た分身の術だな。
炎分身の術である。
「俺も分身と隠密で隠れながら進んでたんだが、
こっちを察知してくるヤツもいただろ?」
「はい。ファイアボールだとこちらの位置がバレてしまうので、ファイアウォールで倒しましたー」
ファイアボールは手から相手に向かって飛んでいく。
これだと発射した位置がわかってしまう。
ファイアウォールは場所を指定して発生させる。
これならバレる心配がない。
リンは詠唱なしで魔法を発動できるから、声でバレる心配がない。
魔法使いは隠れながら戦うのに向いているかもな。
まあ、リン以外の魔法使いが無詠唱を使えるかは知らないが。
「おお。リンもさらっと敵を倒してたんだな。
さすが魔法使い!」
「えへへ。そうですかー」
スナバさんがリンを見る。
「魔法か……興味あるな」
「え……」
するとなぜかリンが眉をひそめて後ずさった。
どうしたんだ?
なぜかスナバさんを警戒してしまっているようだ。
別にスナバさんの態度に不審な点はない。
いつも通り淡々と話しているだけだ。
さっきの初めて発言のせいか。
また妙なスイッチが入ってしまったか……。
リンの気になるポイントはよくわからないんだよなぁ。
ほら、妙な空気が流れてしまった。
フォローフォロー!
「なあリン……。
スナバさんはヘンな意味で言ってるわけじゃないと思うぞ」
「ああ。他意はない。
なにか気に障ったか?」
スナバさんの言葉にリンがあわてて頭を下げた。
「あ、いえ……ごめんなさい!」
「いや、いいんだ。続けてくれ」
「は、はい。
ええと、どこまで話しましたっけ?」
「炎分身で隠れながらファイアウォールで敵を倒したところまでだ」
「あ、そうでした。
敵さんが集まってきたので、すぐに移動しました。
なので、その。
さっきゼンジさんが鑑定のことを聞きたいと言ってくれましたが……」
リンがバツの悪そうな表情を浮かべる。
鑑定はできていない、ということだな。
「ああ、別にかまわない。
魔石や素材を手に入れるのが難しいのはわかっている」
俺やリンのダンジョンとはルールが違う。
すぐに魔石や宝箱に変わってくれない。
「はい。だから鑑定できていないんです。
お料理もしてみたいと思ったんですが、それも……」
スナバさんが眉を上がった。
料理というワードに反応したようだ。
興味があるらしい。
しかし遠慮したのか口は開かない。
俺はスナバさんに代わってリンにたずねる。
「料理人のスキルで食材にできそうってことだな?」
「はい。
倒した敵さんからはおいしそうな匂いがしていました。
さすがに食べてみる余裕はありませんでした」
「料理したわけじゃなくて、火魔法で倒したモンスターが食べられそうだったんだな」
「そうです」
自動的に焼き肉になった、と。
トウコがよだれをたらしそうな顔で言う。
「こんがり肉っスね!
ワニみたいにおいしいかもっス!」
「似たような味かもな。
次回、合流できたら鑑定と料理を試そう」
リンがうれしそうに笑う。
「はい! まず合流ですね!」
俺も本格的な食事をする余裕はなかった。
ダンジョンに居ても腹は減る。
キノコなどの食材を少しつまんだ程度だ。
それでは全然足りなかった。
「あ、そうだ。スナバさん。
ここのモンスターは食べられますか?」
スナバさんは食べたことがあるだろう。
何時間も飲まず食わずで動き続けられるわけがない。
荷物を持ち込めないのだから、現地にある食材を食べるはずだ。
スナバさんが言う。
「ああ。食えるぞ。
長期戦になると、食べざるを得ない」
「おいしくないんですか?」
スナバさんが真顔で言う。
「カレー粉が持ち込めないのが痛いところだ」
なんとなく察してしまうコメントである。
おいしくないってことだ。
トウコが不思議そうに聞く。
「スナバんはカレー好きなんスか?」
「いや、そういうわけではない。
カレー粉をまぶせば、どんな食材もカレー味になる。
サバイバルでは最重要アイテムだ」
ジャングルでは豊かな食生活など望めない。
虫やトカゲなど怪しい食材を食べる機会が多くなる。
そうしたとき頼りになるのがカレー粉だ。
屈強な軍人もカレー粉を取り上げられたら涙目になると聞いたことがある。
「じゃあマズいんスね!」
「いや焼いて食べればそれなりにうまい」
毎回火を起こして料理をする余裕がないと。
「リンがいれば火の通ったおいしい食事が食べられますよ」
「ふふ。楽しみにしてくださいねー」
「そうか。それは楽し……うむ」
楽しみだ、と言おうとしてやめるスナバさん。
リンは気づいていない様子で、俺に笑いかけている。
話題を戻そう。
「それでリン。その後どうなった?」
「隠れていたらだんだん暗くなってきました。
モンスターさんが増えて、倒しきれなくなって……。
そこで思いつきました。
合図したらゼンジさんが来てくれるかもしれないって!」
「ああ」
「空に大きめのファイアボールを打ち上げました。
でも、すぐ後に大きなモンスターさんが来て……。
それで、やられてしまいましたー」
「間に合わなくてごめん。
花火を見て、向かおうとしたんだが、遠くてな」
闇の中で空に打ち上げられた炎は目立った。
そこで俺はその方向へ向かった。
結局、リンは見つからなかった。
俺がたどり着く前にやられてしまったのだ。
もっと急げばよかったか。
いや、無理だろう。
敵に見つからないように進むのが最適だったはずだ。
急ぐと敵に発見されるリスクが高くなる。
戦闘になれば多くの時間を取られたはずだ。
リンはぶんぶんと首を振り、そのあと胸の前で手を合わせる。
「いえいえ!
私がもう少し待てれば良かったんです。
次! 次は一緒になれるといいですねー!」
お、前向きでいいね。
俺はうなずき、言う。
「そうだな。
次回は合流の目印を決めておこう。
ファイアボールやチャージショットを打ち上げるか。
それとも狼煙をあげようか……」
「合流のための目印は名案だな。
俺もオトナシの花火を目印に移動した。
おかげでクロウと合流できた」
バラバラにスタートする仕様について、スナバさんは知らなかった。
常に一人で潜っていたからだ。
「ゼンジさんたちのお役に立てたならよかったですー」
「ああ、助かった。
あれだけ広いと普通に合流するのは無理だっただろうな」
リンはある程度隠れながら戦闘もこなした。
最後に打ち上げた火球は、俺とスナバさんが合流するキッカケになった。
次回挑むときは鑑定や料理で貢献してくれるだろう。
最優先で合流したい。
そして全裸を……じゃない。
安全を確保するのだ!
「それで、ゼンジさんはどうでしたか?」
「ああ、俺は――」
次は俺のターンだ!
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