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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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スナバ・ダンジョンはサバイバルで!? その3

(ダンジョン内のシーンがないのは、間が抜けたわけではありません)

 俺たちはスナバさんのダンジョンに挑戦した。

 ――そして全滅した。



「う……」


 俺はぼんやりした頭でうめく。

 水底から浮上するように意識が鮮明になっていく。


「店長が出てきたっス!」

「ゼンジさん。大丈夫ですか!?」


 目の前にリンとトウコがいる。

 先に復活していたらしい。


 俺は痛む頭を振りながら答える。


「ああ。大丈夫だ……」


 二人の様子を見る。

 憔悴した様子はない。

 復活して時間が経っているのだろう。



 俺がダンジョンで合流できたのはスナバさんだけ。


 手をつないでダンジョンに入ったのにバラバラになってしまったのだ。

 開始地点は別の場所になる仕様らしい。


 最後まで、リンとトウコには会えなかった。


 死の直前、俺とスナバさんは巨大モンスターに襲われていた。

 詰みの状況だった。

 そろそろスナバさんも出てくるだろう。



 俺の後ろでドサッという音が聞こえる。

 うん。やはり逃げ切れなかったか。


「おっ! スナバんも出てきたっス!」


 スナバさんが頭を振りながら立ち上がる。


「む……。外か……」


 目の焦点が合っていない。

 俺もさっきまでそういう状態だっただろう。


 俺はスナバさんに声をかける。


「スナバさん。お疲れ様です。

 休憩したら反省会を始めましょう。

 リンとトウコもいいな?」


「はーい」

「リョーカイっス!」


 俺の言葉と、それに答えるリンとトウコを見てスナバさんが怪訝な顔になった。

 そして不思議そうに言う。


「ずいぶん切り替えが早いな。

 今、死んだばかりだろう」


「俺はまだシャッキリしてませんけどね」


 寝ぼけてるような感覚がある。

 極限の寝不足みたいな、心がささくれた感じだ。

 とはいえ、冷蔵庫ダンジョンで復活したときよりは軽い。


 死ぬのはかなりキツい体験だ。

 とはいえ俺たちは何度も経験したから慣れている。

 死に慣れるってのもおかしな話だがな。




 スナバさんの顔色は冴えない。

 ふむ。スナバさんにも弱点があったか。


 死んで復活するのがニガテ、と。

 まあ、誰でもそうか。

 そりゃそうだ。


「クロウも妙に慣れているんだな……。

 俺は何度死んでも慣れない。

 二人は大丈夫なのか?」


 トウコ、リンが答える。


「あたしはすぐやられたんで、ヒマだったっス!」

「私ももう大丈夫ですー」

「そうか……」


 スナバさんはまだ不思議そうだ。

 復活直後で、頭が回らないのかもしれない。



 俺は言う。


「ではスナバさん。少し休憩したら場所を変えて話しますか」

「ああ、反省会だったか。いつもそうしているのか?」

 

 ダンジョンに潜った後は問題点を話し合う。

 いつも通りだ。


 死んだということは、明確なミスがある。

 生きて帰って来た時より話すことは多い。


「そうです。

 記憶がハッキリしているうちに次のための課題を出すんです」


 スナバさんが驚いた表情を浮かべる。


「次、か……。

 正直、次も手伝ってくれるとは思っていなかった」


 トウコが不思議そうに言う。


「うえぇ? なんでっスか?

 一回も二回も同じっスよ」


「死ぬのはいい気分ではないだろう?

 ましてや他人のダンジョンだからな」


 他人のために死ぬなんて、なかなかできることじゃない。

 それはそうだ。

 でもまあ、復活があるしね。

 さすがに生き返れないなら無理だけど。


「スナバさんはもう他人じゃありませんよ」

「そうか……」


 スナバさんは俺にとって他人ではない。

 でも友達とは違うかな。

 まだ、そこまでの間柄じゃない。


 とはいえ同僚ではある。

 公儀隠密の仲間、あるいは先輩か。


 最近はスパーリング仲間とか訓練仲間とも言える。

 それ以上の状態にはなれていない。


 まだね。

 いずれは友人になれるだろう。

 なりたいと思う。

 スナバさんもそう思ってくれていれば嬉しいのだが。



 スナバさんは友達になりにくいタイプだ。

 なにしろ親しみにくい。

 気さくさやフレンドリーさが足りない。


 もっと笑えばいいと思う。

 でもヘラヘラしている姿は見たくない気がする。


 オカダなどはいつもゲラゲラ笑っている。

 そのせいか付き合いが短いのに友人のような距離感になっている。

 おそるべし、イケメン陽キャ!



 トウコが言う。


「店長の言う通りっス!

 スナバんはあたしの師匠みたいなもんっス!

 なんなら、すぐにもう一回やってもいいっスよ!」


「いや、反省会が先だろ!」


 すぐに挑んでも勝てない。

 勝算がないのに再挑戦しても死ぬだけだ。


 静かにスナバさんが首を横に振る。


「申し出はありがたいが、必要ない」


 その言葉にトウコが口をとがらせる。

 なにか言う前にスナバさんが続ける。


「おかげで充分に間引きができた。

 少し時間をおいてもいいだろう。

 もしよろしければ、次の機会に頼む」


 トウコの機嫌がよくなる。


「へへ。いいっスよー!

 特別に手伝ってあげるっス!」


「じゃあ今日は終わりにして、反省会にしよう」

「はい。場所はどうしますか?」


 リンの問いかけに答える。


「草原ダンジョンでいいか?

 軽く何かつまみながら話そう」

「では、なにか作りますねー」


「オトナシさんのダンジョンか。

 俺は普通のダンジョンには入ったことがない。

 興味があるな」


「おーっ! リン姉!

 スナバんの初めてをゲットっスね!」


「妙な言い方はやめろ!」

「え……いらないですー」


 断るんかい!


 スナバさんは微妙な顔になっている。

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