スナバ・ダンジョンはサバイバルで!? その2
その後もスナバさんはダンジョンのことを教えてくれた。
昼と夜が三時間ごとに入れ替わること。
時間経過とともにモンスターが強化されること。
時間の経過が緩やかであること。
スナバさんが説明を続ける。
「ダンジョンに入ると毎回、違った場所から開始して――」
「ふぁぁ」
トウコがあくびを放つ。
俺は苦笑して、一応注意する。
「おい、トウコ……」
「細かい話は入ってからで良くないっスかぁ?
会議ばっかりでつまんないっス!」
「事前の情報は重要だ。
ちゃんと聞いとけよ、トウコ」
ぶっつけ本番でスリルとサスペンスを味わいたいか?
俺はイヤだ。
ちゃんと準備してから挑むべきだろう。
スナバさんがあきれた表情で言う。
「まだ細かい話はあるが、重要な情報は伝えた。
危険なダンジョンだと理解はできたな?
そのうえで、聞かせてもらう。
手伝ってくれるか?」
スナバさんが俺を見る。
そこに押しつけがましさはない。
俺が手伝わなくても彼は一人でダンジョンに挑むだろう。
ダンジョンを放置して逃げることはできない。
挑むほかないのだ。
スナバさんは負けても死んでも折れたりしない。
意志は強く、志は高い。
放っておいてもいずれはダンジョンを踏破するだろう。
しかし、困難な道だ。
時間もかかるだろう。
俺はダンジョンに苦しめられる人を助けたい。
だから、公儀隠密に入ったのだ。
聞かれるまでもなく、俺の答えは決まっている。
俺はスナバさんを見て言う。
「もちろん手伝います。
一人では難しいことも手を取り合えば簡単になりますよ」
「繰り返しになるが、簡単ではない。
死ぬことになるぞ」
「難しいことはわかりました。
死ぬくらい、俺たちは経験済です。
一度で勝てないなら、対策を立てて何度でも挑めばいい」
リンがあわてて立ち上がる。
「も、もちろん私も一緒に行きます。
ゼンジさんと一緒に、手伝います!」
トウコが言う。
「当然、あたしもっス!
スナバんにはお世話になってるんで!」
まともなことを言っているようだが、
視線はリンのほうを向いている。
緩い表情でくだらないことを考えていそうだ。
「それに、全裸のリン姉とそれを見てあわてる店長は見逃せないっス!」
「くだらないことは言うな!」
そういうのは表に出さなくていいんだよ!
今はシリアスな場面だぞ!
スナバさんが苦笑を漏らす。
「はは……。いやすまんな」
「しまらなくて済みません」
「いや、深刻になるより気軽に手伝ってもらったほうがありがたい。
正直、悪性化を防ぐのが精いっぱいだった。
協力してもらえるのは助かる。
よろしく頼む」
スナバさんがすっと頭を下げた。
「いえ、こういうのはお互い様です」
「こちらこそお願いしまーす。足を引っ張らないように頑張りますねー」
「大船に乗ったつもりで任せるっス!」
そういうわけで、スナバさんのダンジョンに潜ることになった。




