オーバーチャージ! 魔力充填百二十パーセント!
トウコの新スキル候補は【オーバーチャージショット】だ。
「オーバーチャージ?
説明はどうなっているんだ?」
「銃弾に過剰な魔力をこめて発射する――っス!」
「過剰な魔力て。
使う前からヤバそうじゃねーか!」
トウコはワクワクした表情で言う。
「でも強そうっス!
試してもいいっスか?」
「スキルは好みで取ればいいと思うが……。
最初は慎重にやれよ?」
「んじゃ、さっそく取得っス!」
トウコがマグナム銃を構えたが、俺は手をあげて止めた。
「ちょい待ち! 普通の拳銃にしとけ!」
「うぇ? どっちでも同じじゃないっスか?」
「まあ、一応な。
暴発して大ケガしたら困るだろ」
「と、トウコちゃん気をつけてね!」
「リン。少し離れよう。盾を構えてくれ」
「うえぇ? 心配しすぎじゃないっスか?」
俺はポーションの小瓶を振ってトウコに見せた。
「だから、念のためだよ。
ポーションを用意しておくから安心して撃て。
骨は拾ってやる」
そこまで言うと、さすがに心配になったのだろう。
トウコが表情を引き締めた。
「じゃあ、ちょっと弱めにするっス!」
「おう。そうしろ」
トウコが銃を構える。
油断なく両手でしっかり銃を保持している。
銃口が輝き始める。
いつものチャージショットとさほど変わらない。
トウコが驚いたような顔で言う。
「おおっー!?」
「どうした?」
トウコの頬に一筋の汗が流れる。
「吸われるっ!
魔力が吸われる感じっス!」
銃口に集まる光はいつもよりも激しい。
その光がどんどん大きくなっていく。
「溜めすぎるなよ! 早く撃て!」
「りょっ!
オーバーチャージショットーっ!」
トウコが引き金を引くと激しい銃声が響き渡る。
銃が強烈な反動で跳ね上がった。
銃口から発射炎が噴き出し、ぱっと周囲を明るく染める。
銃弾の軌跡が遥か彼方まで伸びていく。
おお……!
派手だね!?
「おわわっ!?」
トウコがすっとんきょうな声をあげ、尻もちをつく。
反動が大きかったらしい。
手に握られていた銃がボロボロと崩れていく。
そのまま塵となって消えてしまった。
「トウコちゃん! 大丈夫!?」
「へ、へーきっス!」
「銃が壊れたな。手は大丈夫か!?」
トウコが手をひらひらと振る。
「ケガはないっス!
ちょっとビリビリするだけっス!」
「そうか。それならいいが……」
撃つたびに銃が壊れるのか。
これ、ダメなやつじゃないか?
トウコが満面の笑みで言う。
「これは派手でいいっスね!
気に入ったっス!」
「気に入ったのか……」
なんとなく、そう言うと思った。
その後、新スキルをいろいろと試した。
チャージ時間を増やしたり、銃を変えたり、弾を変えたり。
ショットガンでもマグナム銃でも使える。
【中級銃創造】で出せるマシンピストル、ポンプ式ショットガン、レバアクショットガン、リピーターライフルでも撃てる。
そして、どの銃も撃つと壊れた。
残弾があってもなくても、すぐに壊れる。
反動はかなり強い。
しっかり構えて撃ってもバランスを崩してしまう。
命中精度は悪い。
チャージするときに強く魔力を吸われるらしく、狙いがぶれるのだ。
「あー! ブレブレっス!」
「遠くを狙うのは無理そうか?」
「ムリっスね!
室内ならなんとか当たるくらいっス!」
俺やトウコのダンジョンくらいの距離感なら当たる。
草原ダンジョンのような広い場所で、遠くの敵を狙うことはできない。
魔力消費は【チャージショット】よりも大きい。
クールダウン時間が長く、連発はできない。
およそ一分に一発だ。
再使用までが長いので、一度の戦闘中に使えるのは一度だろう。
ロマンはあるが、普段使いには向かない。
ボス戦で最初に使うのはいいか。
トウコは肩で息をしている。
「はあっはあっ!
じゃあ、もう一発っス!」
「もうちょい休憩しろよ。
魔力消費が激しいんだろ?」
トウコが楽しげに言う。
「新技をブッパするのはたまんないっス!
どうせならボスにぶちこみたいっスね!」
気に入ったスキルを試したい気持ちはよくわかる。
でも魔力消費が大きいのだから、無理はよくない。
「今日はもう充分だろ。明日にしようぜ!」
「んー。そうっスね」
「そういえば、明日はスナバさんのダンジョンを手伝うんでしたよね?」
「ああ、そうだったな。
そこで状況を見て使うのもいいだろう」
「いいっスね!
スナバんをびっくりさせるっス!」
スナバさんのキャラ的に、驚かせても喜ばないと思うけどな。




