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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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スキルの適性は人それぞれで!?

 鹿鍋をつつきながらリンに問いかける。


「そう言えば、どのスキルを取るか考えたか?」


 レベルが上がったとき、後で一緒に考えて欲しいと言われていたのだ。


 リンが迷いながら話す。


「考えたんですが……。

 盾をうまく使えるようになりたいんです。

 でも選べなくて……」


 少し言葉足らずだ。

 選べないとは【盾】のようなスキルだろう。


「盾や防御のようなスキルが選択肢に出てこないんだな?」

「あ、はい! そうです!」


 リンが嬉しそうにうなずく。

 トウコが肉を口いっぱいにほおばりながら言う。


「リン(ええ)モデル(もえる)だからじゃないっふか?」

「口にモノを入れて喋るなよ……」


 トウコの取り皿には肉ばかりが山盛りで、野菜はひとかけらもない。


「あ、トウコちゃんの言う通りかも。

 私の職業では盾のスキルは取れないんですね!」


 トウコの言葉にリンが納得したようにうなずく。

 俺もうなずく。


「ああ。たぶん職業のせいだな。

 武器や防具で戦うのには向かないんだろう」


 リンの職業は魔法使いとモデルと料理人だ。

 どの職業も近接戦闘には向かない。


 戦闘そのものに向かない気もするが……。

 実際には通用しているけども。


「うーん。

 でも生命力のステータスもありますし。

 頑張ればできそうな気もするんですけど……」


 スキル取得にステータスも関わっているとは思う。

 生命力なら防御に関連するスキルが取れてもおかしくはない。


 トウコが何か思いついたような顔をする。

 口を開けようとして思い直し、急いだ様子で口の中のものを飲み込む。

 そして喉を詰まらせた。


「うぐっ……」

「落ち着けって。肉は逃げないぞ」


 トウコの背をさすってやる。

 リンが困ったような笑顔で言う。


「トウコちゃん。

 おかわりはたくさんあるから、ゆっくり食べてねー」


 ボスから上質肉がドロップした。

 普通の鹿肉もたくさんある。

 まだまだあるのだ。


 少しして落ち着いたトウコが言う。


「ふー。生き延びたっス!」

「で、なにが言いたかったんだ?」


「モデルは盾とか持たないからっス!

 映えないんで!」


 そのあたりは前にも話したことがある。

 職業とスキルは関連している。


「たしかにトウコの言う通りかもな。

 モデルには防御的なスキルがあるけど、

 肌を守ったりするものだし……」


 【美肌】が防御スキルなのかはいったんおいておく。

 本来の使い方とは違うだろうが、ケガは防げる。


 モデルが盾や武器を持つのは似合わない。

 基本的には生身で、物は持たないイメージだ。

 服やファッションアイテムなら持ってもいいだろうけど。


 盾はなあ……。

 映えないよなあ……。


 リンが言いつくろう。


「そ、そうかなあ?

 写真を撮るときはいろんなものを持ったりしますよー?」


 トウコが怪訝な顔になる。


「モデルの仕事で盾とか持ったことあるんスか?

 トンファーとか?」

「な、ないかなー?」


 リンが気まずそうに目をそらす。

 まあ、ないよな。あったら驚く。


 トウコが思いついたような顔で言う。


「あっ! モデルも武器を持つことがあるっス!」

「えーっ? あるの!?」


 リンが驚く。


 いや、ないだろ?


 俺は武器を持ってモデルポーズを取るリンの姿を想像する。


 今シーズンのトレンドはブロードソード。

 ボリューム感のあるラウンドシールドを合わせて強者感をアピールしましょう!


 うーん?


 そんなモデルはいない。

 異世界にならいるかもしれないが、現代日本にはいない。


 トウコが自信満々に言い放つ。


「コスっス!

 コスプレイヤーならアリっス!」


「そ、そうなのー?」

「しかしコスプレイヤーってモデルなのか?

 いや、どっちが偉いとかじゃないけど……」


 ポーズを決めて写真を撮られる。

 そういう意味ではモデルと言える。


 思い込み次第ではアリか……?


 忍者にだっていろいろある。

 モデルだって幅があっていいだろう。


 俺はリンに問いかける。


「コスプレ感覚で武器を持つイメージで盾を使えばどうだ?」

「うーん。

 私も似たことを考えて試していたんです。

 盾を持って取るポーズはどうすればいいかとか……。

 でもうまくいかないんですー」


 既にモデル的な発想で盾を扱っていたと。

 つまりモデルは盾を扱えない仕様なのか。


 【ピアススラスト】で斬撃ができないのと同じ。

 仕様だ。

 できないものはできない。


「そういえば四ウェーブが始まる前に考えてたことなんだが……」


 ちょうど今話していることと似ている。


 リンがうなずき、俺の顔を見る。


「あ、そうでした。

 あのとき、なにを考えていたんですかー?」


「リンの火魔法にはピアス系のスキルがないって話で……」

「はい。そうですね」


「スキルには使い手の想像が反映されるだろ?

 リンの魔法もそうだし、トウコのショットガンもそうだ」


 ショットガンの集弾率(しゅうだんりつ)は実銃とは異なる。

 派手に拡散するゲーム仕様だ。

 反動の強さや弾丸の威力も現実とは違う。


 スキルの仕様もあるだろう。

 しかしトウコの意識が大きく影響している。


「それがどうしたんスか?」


「スキルは柔軟だ。

 俺たちの意を汲んで働いてくれる。

 だけど、なんでもアリじゃない。

 そうだよな?」


 忍具作成は忍具しか作れない。

 銃や食料や薬はどうやっても作れない。


 【片手剣】や【打撃武器】も同じだ。

 パワースラッシュは鈍器では発動しない。

 フルスイングは突きや縦斬りができない。


 こればかりは、どう意識したって無理である。



 リンが言う。


「そうですね。

 火魔法で水は出せませんし、嫉妬を使ってもムリです」


 水忍法をマネしようとしたのかな?

 それは、さすがに無理だろ!?


 そうは思うが口には出さない。

 無理とか無駄と言えば、有利な思い込みを邪魔してしまう。


 俺は話を続ける。


「つまりスキルには限界がある。

 できないことはできないんだ」

「そりゃ、あたりまえっス!」


 スキルを拡大解釈してなんでもあり、とはいかない。


「で、だよ。

 スキルの適性について考えていたんだ。

 スキルは自分に使えそうなものしか使えないんじゃないかって」


「うぇ? それも、あたりまえじゃないっスか?」

「トウコが食べたいと思う魔石と、そうでない魔石があるだろ?」


「カマキリの魔石はマズそうっスね。

 虫味だったらやだし、食べられないっス!」


 魔石に味とかあるのか?


 俺が食ったときはどうだったっけ。

 魔石をかじると、口の中に塵があふれたんだよな。


 そして塵の味……エグみが口中いっぱいに広がった。

 美味しいとか不味いとか、味覚とは違うナニカだった。


 俺はトウコのように【捕食】がない。

 最初から魔石は食べられないのだ。


「適性がないからマズそうに見えるんだろう。

 カマキリが持っていそうなスキルはなんだと思う?」


「隠密っスよね?」

「つまりトウコは隠密や暗殺の適性がないんだと思う。

 だから魔石を食べたいと思えない。

 食べてもスキルは手に入らないんだろうな」


「あー。あたし、そういうのは嫌いっス!」

「それがゼンジさんが考えていた適正なんですね?」


「そうだ。

 好きなことはできるけど、苦手なことはできない」

「言われてみれば、そういう感じかもっス!」


「で、リンは盾を使いたいのに使えない。

 これは個人の好みや適性というより、職業の縛りかもしれない」


「リン姉は盾、大好きっスよね?」

「うん。せっかくゼンジさんが作ってくれたものだから……」


「盾を気に入っていて、使いたいと思っても使えないケースがある。

 やっぱり、職業の縛りがあるんだろうな」


 リンが残念そうに言う。


「そうなっちゃいますねー」

「というわけだから、盾スキルはいったんあきらめよう」


 リンが肩を落とす。


「はい……残念です」

「で、リンの職業で代用できるものを取るんだ」


「代用、ですか?」

「ああ。盾っぽく使えて、リンの職業で取れるやつがあるだろ?」


「あっ! あたしわかったっス!

 料理人っスね!」

「えっ!? 料理人のスキルで盾みたいなもの……?

 あ、調理器具を使うんですねー!」


 そう! 鍋やフライパンを盾として扱うのだ!

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― 新着の感想 ―
ガープスルナルだとリャノの特殊装備でキッチンソード(人切り包丁)とキッチンシールド(鍋にも使えるミディアムシールド)がありますな。 漫画ぶるうピーター(小山田いく/秋田書店)だと亀さんの七つ道具の一…
[良い点] 野営するのは忍者の必須技能、野営と言えば調理器具、つまり調理器具は忍具、だから調理器具は忍具作成先生でも制作可能!QED!!…とか言って忍具作成(チョロイン)さんの事を丸め込むんでしょう?…
[一言] 中華鍋ならヘルメットにもなってその場でお料理もできてお得! 盾にするなら…まな板?
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