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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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ゾンビと不運とリカバリー!

「店長っ!?」

「ゼンジさん!?」


 朦朧とする意識に二人の声が届いた。

 そこには濃い心配がにじんでいる。


 寝ている場合じゃない。

 しっかりしろ!


 俺はなんとか声を絞り出す。

 だがその声は意図したよりも弱弱(よわよわ)しく響いた。


「だ、大丈夫だ……!」


 頭がずきずきと痛む。

 視界がぼやけて、めまいがする。


 今、俺は立っているのか?

 立っているはずだ。

 だが足がふらついて力が入らない。


 息を吸え。

 呼吸を整えるんだ。



 焦ったような声。

 これは……トウコの声だ。


「大丈夫じゃないっス!

 ポーションっ!

 すぐに治療っス!」


 続いて震えた声が聞こえる。

 リンの声だろう。


「こ、こっちですよー!

 私のほうが……お、おいしそうですよー!?」


 続いてゾンビのうめき声や威嚇音が聞こえる。


 俺は頭を振って意識をしっかりさせる。

 うっ……!


 俺は顔をしかめる。

 痛い!

 頭を振るとひどく痛む。


 痛みのもとへ手をやると、べっとりと生暖かい感触。

 血だ……。

 負傷したのか。


 爆発のせいか?

 巻き込まれるはずのない距離を取っていたのに……。


 爆風の殺傷圏内からは外れていた。

 だが、吹き飛ばされた何かが飛んできたのだ。


 運悪く……。

 ピンポイントに俺の頭部めがけて……。



 なんとか意識を集中する。

 【忍具収納】からポーション手拭いを取り出し、傷口に押し当てる。

 ポーションが傷口にしみこんでいく。


 痛みが和らぐ。

 傷が治っていくのを感じる。


 それにつれて意識がはっきりしてきた。

 だんだんと周囲が見えてくる。


 爆発の直前、相手にしていたランナーがいたはず。

 意識を飛ばしている間に襲われていてもおかしくなかった。

 その姿が見当たらない。


 爆発に巻き込まれたのか?

 トウコが撃ち倒したのか?


 しかし今、周囲に敵はいない。

 ランナー以外にもたくさんの敵がいたはずだ。

 どこに行った?


 ……いた。

 その敵は今、リンの後ろに集まっている。


 そういうことか。

 ありがたい!


 【ポージング】で引きつけてくれたのだ。



 リンはぞろぞろとゾンビを引き連れて逃げ回っている。


 だがだんだんと逃げ場を失っていく。

 足の速いランナーが追い付きそうになっている。


 飛びかかるランナーに、リンが盾を向けて構える。


「きゃっ……!」


 小さな悲鳴をあげてリンがよろける。

 衝突の勢いを支えきれなかったのだ。


 そこへ別のランナーが迫る。

 崩れた体勢のリンは逃げることも受け止めることもできない。


 ランナーが身をかがめる。

 飛びかかろうとしているのだ。


 しかしその動作が中断される。

 銃弾が頭を撃ち抜いたのだ。


「うらうらっ!」


 トウコは拳銃を腰だめにして連発する。

 ファニングショットだ。


 弾丸が降り注ぎ、的確に敵を減らしていく。


 ショットガンを使わないのは誤射を防ぐためだろう。



 俺は再び頭を振る。

 痛みはない。

 足も動く。

 意識ははっきりしている。

 戦える!


 術を集中――


「リン! 三秒後に入れ替える!」

「は、はいっ!」


 リンの周囲にゾンビが集まっている。

 厄介なのはボマーも混じっていることだ。


 リンが無傷で包囲を破るのは難しいだろう。

 だが俺ならできる。


「トウコ! チャージショットの準備だ!」

「りょっ!」


 トウコが銃を構える。

 銃口が光を放ち、だんだんと輝きを増していく。


 ここで術の集中が終わる。


「入れ替えの術!」


 術が発動する。

 リンと俺の位置が交換された。


 俺はゾンビの群れの真っ只中にいる。

 すぐさま囲みの薄い場所――トウコが敵を減らした部分へと走る。


 ゾンビの間をすり抜け、囲いを抜ける。

 あとにはゾンビの群れが残る。


「いいぞ! 撃て! ぶちかませ!」


 俺の指示にトウコが応える。

 しっかりと力を溜めた銃口を敵集団に向ける。


 リンも動いた。

 俺の術を待つ間に魔法を用意したようだ。


「チャージショットー!」

「ファイア・ラァーンス!」


 二人の大技がゾンビたちを蹂躙する。


 ビームのような光を放ち、弾丸がゾンビをぶち抜く。

 太い炎の槍が群れを焼き払い、貫いていく。


 ウォーカーが、ランナーが、塵になって散る。

 だが耐久力の高いボマーが残った。


 燃え上がりながら、赤熱するように膨張していく――


 充分な距離はある……はずだ。

 だが過信はできない。



 リンが盾を構えて言う。


「ゼンジさん! トウコちゃん! こっちへ!」


「おう! 助かる!」

「避難っスね!」


 俺たちがリンの後ろに隠れたところで、ボマーが爆発した。

 爆風が盾に吹き付けてびりびりと音を立てる。


「くうっ!」


 リンがうめき声をもらす。

 俺は手を伸ばしてリンの背を支える。

 トウコはリンの尻を支えた。


「きゃっ!?」


 爆風が収まると、リンが尻を手で押さえて振り向く。


 トウコはすでに身を離している。

 そして口笛でも吹きそうな顔で、そっぽを向いている。


 リンが戸惑うような目で俺を見る。

 そこに怒ったり咎めたりするニュアンスはない。


「ゼンジさん……。

 そういうのは、こういうところでは……その」


 リンの顔は恥じらうように赤く染まっている。

 なにか勘違いしている。


 冤罪だ!

 俺はすぐさま犯人を売る。


「いや、俺じゃない! トウコだよ!?」


 俺はゆるい顔で笑っているトウコを指差す。

 このひとです!


「こういうところじゃなければいいんスね!

 じゃあ後で、別の場所でっ!」


 しかし反省の色は見られなかった。


「もう……そういうことじゃなくて……」


 リンは仕方ないなという感じの小さな苦笑を浮かべた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゾンビ館◯漢冤罪事件… なんか推理小説のタイトルみたいになるなw
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