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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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スラッシュとスラストとスキルの柔軟性!?

 第三ウェーブが終わった。

 ここまでケガもなく事故もない。


 順調だ。

 戦闘中にクラフトする余裕すらあった。


 スキルの検証も滞りなく進んでいる。

 【パワースラッシュ】の検証は終わった。



「次は【ピアススラスト】を試すぞ!」

「どういうスキルなんですか?」


 俺はリンの問いに答える。


「貫通力ある突きが出せるらしい」


 トウコが嬉しそうに笑う。


「おー! あたしのピアスショットとおそろいっスね!」


 リンがうらやましそうに言う。


「いいなあー。

 私の魔法に、そういうのはないんですー」

「リン姉はそれっぽく使えるからオーケーっス!」


 ピアス・ファイアボールのようなスキルはない。

 しかしそれっぽく使えはする。


 リンは思い込みでスキルの効果を変化させる第一人者だ。

 貫通力や温度を変化させている。


 たとえばファイアランスだ。

 何気なく使っているが、

 【火魔法】に炎の槍を出すスキルはない。


 ファイアランスに近い魔法は【ファイアアロー】だ。

 これを槍のように太く鋭く使っている。


 ファイアボールに比べて、明らかに飛翔速度や貫通力が高い。

 スキルの柔軟さ余すところなく発揮していると言えよう。


 俺の槍やトウコのスキルのマネをした。

 それだけで、特殊な効果をものにしてしまった。


 これは、本来のスキルの枠を逸脱していると思う。

 スキルの幅……限界は俺が思うよりも広く、深い。

 思ったよりも柔軟なのだ。



 そんなリンの使い方を見て、俺も少しはできるようになった。

 でも少しだけ。

 大きく変えることはできない。


 頭で考えているからか、どうしても型にハマってしまうのだ。

 余計なことに気づいてしまう。

 都合よく思い込むことができない。


 まあ、できないことを考えても仕方がない。

 俺は俺のやり方でやる。

 コツコツ検証して、それを積み上げていけばいい。


 状況に応じて準備した技を使い分ける。

 それでいいのだ。



 リンは思い込む才能がずば抜けている。


 ボス討伐報酬で得た【嫉妬】は、

 望むスキルを疑似的に再現(マネ)する。

 この効果に似ている。


 でも【嫉妬】がなかったころも、

 程度の違いこそあれ、似たことができていた。


 ふーむ。

 これはおかしい。

 順番が前後している。


 これも本人の才能……いや、適性か?

 そういう素質がもともとあって……だからスキルが取得できたのか?


 スキルがあるから、そういう行動ができる?

 うーん。

 タマゴが先か、ニワトリが先かみたいな話だな。



 俺が考え込んでいると、リンが声をかけてくる。


「ゼンジさん?

 難しい顔をしてどうしたんですか?」


「ん。そうだな……。

 いや、どう説明したらいいか」


 俺は考えをまとめる。


 俺のスキルというより、スキル全般の話だ。

 検証からは話がズレるが……。



 トウコがゾンビに銃を向けながら言う。


「四ウェーブが始まったっス!

 どんどん敵が来るっス!

 店長! どうするんスか? うらっ!」


 銃声が戦闘の開始を告げた。


 放たれた弾丸が一瞬でゾンビの頭部に到達する。

 弾丸が頭蓋に穴を穿ち、腐った内容物をぶちまける。


 すぐに別のゾンビがやってくる。


 四ウェーブは敵の湧きが激しい。

 話し込んでいる場合ではない。



「話はあとだ!

 まずは敵を片付けるぞ!

 二人とも攻撃に参加してくれ!」


 俺が言うまでもなくトウコは既に撃ちまくっている。


「りょっ!」


 リンは盾を床に置いて片手で支え、もう一方の手をゾンビの群れに向ける。


「はーい! ファイアボールっ!」


 リンが放った火球が遠くのゾンビを燃え上がらせる。

 ゾンビはしばらくもがいて、床に倒れ込んだ。

 倒れたゾンビは燃え続け、そのまま塵となって消えた。


 やはりゾンビは良く燃える。

 その調子でどんどん倒してくれ。



 俺の検証は戦いながらでいい。


 俺は試しに【ピアススラスト】をカラ打ちする。

 なにもない空中に向けて突き出した刃に対してスキルが発動する。


 よし! ちゃんと動く!


 発動を確認した俺は、クールダウン時間を測るために秒数をカウントする。

 他と同じなら十秒前後だ。


 俺はゾンビとの距離を詰める。

 スキルを使わずに戦いながら十秒ほど数える。


 九……十……よし!


 俺は目の前のゾンビに鋭く突きを放つ。

 仮に発動しなくても通常の攻撃として成立する。


「ピアススラスト!」


 スキルはちゃんと発動した。

 速度は変わらない。力もこもらない。


 切っ先がゾンビの胸に沈む。

 軽い手ごたえで、たやすく胸部を貫いた。


 ゾンビが動きを止め、がくりとうなだれる。



 トウコが楽しげに言う。


「おっ? 成功っスか?」

「いつもより簡単に刺せたが……。

 まあ、こいつらは柔らかいし何とも言えないな」


 貫通力を測るにはゾンビは脆い。

 やわらかすぎる。


 今回は胸を狙った。

 それは確実に命中させるためだ。

 頭部では頭蓋骨にはじかれるリスクがあったためだ。


 胸に穴をあけたゾンビが崩れ落ちかけ、うめき声を上げた。


「ウゥ……」

「ゼンジさん。まだ動いてますっ!」


 このゾンビはまだ死んでいない。

 腕を伸ばし、俺を掴もうとしている。


「おっと!」


 俺はその手を逃れる。


「店長!

 そいつはタフゾンビっス!」


 普通の個体なら胸への攻撃でも倒せる。


 だがタフゾンビは違う。

 こいつは頑丈だ。

 頭部を破壊しない限り動きを止めない。



 タフゾンビが口を開ける。

 噛みつこうと顔を寄せてくる。


 大きく開かれた口の中に黄ばんだ歯が見えた。

 歯並びは悪く、何本もの歯が欠落している。

 ひどい匂いが鼻をつく。


 俺は顔をしかめつつ、掌底を放つ。


「ていっ」


 顎を打ち上げ、口を閉じさせる。

 その動作で体をひねり、逆の手を引く。

 ナタを持つ手を鋭く突き出す。


 今度は頭部――滑る恐れのない箇所を狙う。

 眼窩に突き刺さったナタの一撃で、ゾンビが塵に変わる。


 次だ。

 すぐそこに別のゾンビが迫っている。

 俺は体をねじるようにして振り向く。


「ファストスラッシュ!」


 振り向きざまにナタを一閃。

 加速したナタがゾンビの頭部を打ち砕く。

 刃の鋭さで斬ったのではなく、重量と速度でかち割ったのだ。


 ナタをねじりながら反発の術をかけ、刃を頭部から抜く。

 俺は返り血を避けて背後へ跳ぶ。


 転がったゾンビが塵に変わる。

 魔石を回収。

 次だ。


 周囲にゾンビが集まってきた。

 俺はナタを手の内で回すと、峰を前にして(にぎ)る。


「フルスイングっ!」


 横()ぎの打撃が数体のゾンビを巻き込んで吹き飛ばす。

 大きくナタを振ったことで、わずかに俺の体勢が崩れる。


 そこへ別のゾンビが飛びかかってくる。


 俺は【歩法】の助けを借りて無理やり体勢を立て直す。

 さらに小さく【跳躍】する。


 横振り攻撃で生まれた慣性で、その場で回転する。

 ナタを持つ腕を体に引きつけ――


「ピアス――スラストっ!」


 空中から放った刺突がゾンビの頭部へ突きこまれる。

 ほとんど抵抗なく、手ごたえはわずかだ。


 そのおかげで刃が肉を噛んだり骨に弾かれずに済んだ。


 ゾンビが塵に変わる。

 とどめを入れるまでもない致命的な一撃だった。


 俺は流麗に着地して、小さく笑みを浮かべる。



 複数の技を使いまわすことで手数が増える。

 手数が増えた分だけスキが減る。

 スキルの連携にも組み込めそうだ。


 よし!

 ピアススラストもいい具合だ!

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[一言] 致命的な一撃(クリティカルヒット)はニンジャの嗜みw
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