パワスラとファッスラ、どっちがいいの?
「あとは、相手がゾンビだからってのもあるな」
「相手が……?」
リンが首をかしげる。
おっと。
余計なことを言ったな。
リンはここのモンスターをゾンビだと認識していない。
怖い思いをしたせいでゴブリンだと思い込んでいる。
トウコが言う。
「ここの奴らは柔らかゾンビっス!」
「やわらか……?」
トウコは空気を読まず、ゾンビと口にした。
リンは首をかしげる。
先ほどより困惑の色が濃い。
「ここの敵は柔らかい。そういう話だ」
ゾンビは腐りかけているせいか柔らかく脆い。
死ににくいが、硬くはないのだ。
ゴブリンは人間並みの強度があるが倒しやすい。
出血や苦痛によってたやすく死んでくれる。
「そうですか。
ここの敵さんはやわらかいんですねー」
リンは炎で攻撃するので、相手の硬さはあまり関係がない。
だから柔らかさを感じないのだ。
「シカやワニみたいにタフな相手ならパワースラッシュがいい。
ゾ……人型の敵や動きの速いコウモリならファストスラッシュが有利だな」
ファストスラッシュは育てた分だけ強い。
もう三段階まで上げている。
斬撃を速くすれば威力が上がる。
重量のある刃物を高速で敵に当てれば、当然そうなる。
パワースラッシュとは威力を出す仕組みが違う。
トウコが言う。
「どっちにしろ敵を倒せるんだから、
ファッスラに絞ったほうが強くないっスか?」
妙な略しかただな。
とはいえ、他にどう略せるか。
ファススラ……ファスラ……?
うーん。
略しにくいな。
うまく伝わらないだろ。
まあいい。
「そうだな。
トウコの言いたいことはわかるぞ。
パワスラを見送ってファスト特化にするのもいいと思う。
だけど手数を増やすために取るのもアリだ」
スキルポイントは有限だ。
ひとつのスキルに集中してレベルを上げるメリットは大きい。
それでも複数のスキルに分散させる意味はある。
リンが言う。
「再使用可能時間のためですねー」
「そうだ。交互に使えばスキを減らせるからな」
「それもアリっスね!」
どちらにせよ、決めるのは後。
他のスキルを見てから気に入ったものを選ぶつもりだ。
「さて、次を試すぞ」
俺は中空にステータスウィンドウを呼び出す。
【検証者】の枠から【パワースラッシュ】を外して――
空に指を走らせているとトウコが不思議そうに言う。
「あれ? もういいんスか?」
リンも首をかしげている。
「いつもなら熟練度が貯まるまで試しますよね?
今日は違うんですか?」
「今回はサクサク行く。
気に入ったものがあれば、最後に取得するつもりだ」
「へー」
「そうなんですねー」
【検証者】にセットしたままにして熟練度を稼ぐ手もある。
だが、それでは時間がかかってしまう。
今回は枠を埋めずに次々に試したい。
なにしろ試したいスキルがたくさんある。
【片手剣】だけじゃなく【打撃武器】もある。
【忍術】や【中級忍術】もだ。
欲しいスキルが列をなして待っている。
要らないと思えるスキルだって、使ってみれば便利かもしれない。
微妙スキルこそ【検証者】の使いどころだ。
ポイントを支払ってまで取らないようなスキルを気軽に試せる。
そこが便利。
かといって、すべてのスキルをじっくり検証していては時間がいくらあっても足りない。
それでは順番待ちが消化できなくなってしまう。
時間は有限だ。
取捨選択して効率よくやらんとね!
次のスキルは――やはり【片手剣】の仲間を見ていこう。
【ピアススラスト】だ。
説明は――
貫通力の高い単体の刺突を繰り出す――というもの。
こちらは刺突と明言されている。
つまり斬撃では使えない?
スラッシュ系は突きも使える。
なら逆に考えて、スラストで斬撃できてもよいのでは?
使えて当然。
そういうものである!
絶対そうだ。
間違いない事実だ!
よし!
認識完了!
「次は【ピアススラスト】を試すぞ!」




