戦闘中クラフト!
戦闘中に【忍具作成】行うとスキだらけになってしまう。
だが今ならできる。
一人じゃないし、まだ二ウェーブで余裕がある。
俺はナタを見せながら、リンとトウコに声をかける。
「ちょっとクラフトする。
少しの間、攻撃役を変わってくれ!」
細かく説明せずとも二人は意図を汲んでくれた。
トウコが銃を、リンが盾を構える。
「リョーカイっス!」
「では、私がゼンジさんを守ります!」
トウコはすぐに銃弾を放つ。
起き上がりかけていたゾンビの頭が吹き飛ぶ。
リンが俺のそばに歩いてくる。
盾を構えてまじめな顔を作った。
戦闘中にクラフトするのは初めてかもしれない。
さて、手早くイメージを固めよう。
やることはシンプル。
角鉈を剣鉈に変えるだけだ。
ナタにもいろんな種類がある。
剣鉈は、先端が刀のように尖っているのが特徴だ。
材料は角鉈。
それとこれまでに集めた魔石が数個。
形を変えるだけなら少ない魔石でも足りる。
準備オーケー。
「いざ――【忍具作成】! 十数秒ほど敵を抑えてくれ!」
「りょっ! 全部倒してもいいんスよね!」
トウコが不敵に笑う。
まあうん。
そんな大それた局面じゃないんだけど。
でも、そういうノリは嫌いじゃないぞ。
【忍具作成】の発動から完成には十秒ほどかかる。
もちろん敵は待ってくれない。
ゾンビが次々と現れる。
館の奥から、二階から、周り中から湧いて出る。
しかしゾンビが俺を襲うことはない。
たどり着く前にトウコの銃弾に倒されるからだ。
忍具作成は落ち着いて集中しないと発動できない。
明確なイメージを伝えなければならない。
今はリンが盾を構えて守ってくれている。
おかげで安心して作業に集中できる。
そうして十秒ほどが経過する。
成功だ!
手の中の角鉈が剣鉈に姿を変えた。
先端は鋭く尖り、突き刺すことが可能になっている。
「よし、これで刺突が試せる! 待たせたな!」
トウコが銃口を上に向け、俺を見る。
そして、まるで絶対的ピンチに援軍が現れたようなノリで言う。
「へへっ! 待ちくたびれたっス!」
トウコが攻撃を止めてリロードを始める。
あとの敵は俺のものだ。
ゾンビが奇声を上げながら走ってくる。
「シャァァッ!」
それに対してリンが盾を構えて待ち受ける。
「えいっ!」
リンが気合のこもった、というには少し可愛すぎる声を出す。
盾を支えるリンが衝撃に押されて後退する。
だが耐えた。
足を踏ん張ってなんとか踏みとどまる。
ランナーが盾に弾かれて体勢を崩す。
チャンス!
俺はランナーめがけて突進する。
剣鉈を持つ腕を引き、大げさなセリフを吐く。
「これで終わりだ! パワースラッシュっ!」
喉元を狙って剣先を突っ込む。
この刺突に対して、しっかりとスキルが発動した!
切っ先に力がこもるのを感じる。
「アガァッ!」
下から上へと突き上げた刃がゾンビのアゴから頭部までを貫いた。
ゾンビはびくりと震え、動きを止める。
これは致命傷だ。
しかし俺は続けて左手で掌底を放つ。
【反発の術】をかけた一撃。
ゾンビは派手に吹き飛んで、塵に変わる。
トドメを入れなくても少し待てば塵に変わっただろう。
わざわざ追い打ちを入れたのは返り血を浴びたくなかったからだ。
「やったっスね!」
「……すごくカッコよかったです!」
トウコがぐっと親指を立てる。
リンは派手な決着を素直に喜んでいた。
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