冷蔵庫の間引きと装備ピックアップ!
「あ、そうだ。言い忘れてた。
御庭とスナバさんの話になったんだ。
ダンジョンを手伝う話があるんだが、どう思う?」
それを聞いてトウコが食いつく。
「スナバんのダンジョンっスか!?
楽しそうっスね!」
「楽しいかはわからんぞ。
難しいダンジョンだから大変だって聞いた」
「お手伝いですか。
なにをすればいいんでしょう?」
「詳しい話はこれから聞く。
スナバさんは任務で出かけているから、明日話す」
スナバさんはもう帰っているかもしれない。
だけど急ぐ話じゃないから明日でいいだろう。
「へー。明日っスか。
じゃあ今日はあたしのダンジョンでどうっスか?」
トウコはお茶でもどう?
みたいな軽いノリで言う。
転送門が設置できたから戻ってきたが、
もともとそうする予定だった。
「そうだな。
せっかく楽にアパートへ行けるようになったんだ。
トウコのダンジョンの間引きをしようか!」
「はい! では、準備しますねー」
「あたしはいつでもいけるっス!」
俺たちは装備を整えるため、
公儀隠密の部屋から俺のダンジョンに移動した。
俺は展示ラックの前で首をひねる。
「なにを持っていこうか……ふーむ」
カマキリの素材で強化した防具は使わない。
せっかく作ったがお披露目は次回にする。
忍者刀も置いていこう。
リンの言葉に俺は視線を向ける。
体にフィットするヨガウェアに着替えたようだ。
「ええと、普通の服で行けばいいんですよね?」
「ああ」
肌の露出は多くない。
しかし起伏に富んだ体の線は惜しげもなくさらされている。
豊かな胸が布地を押し返し、大きなふくらみを主張している。
対照的に引き締まったウェストはキュッとくびれ、
腰から尻にかけて魅惑の曲線を描いている。
全裸より逆にエロいというか……。
いや、あんまり見てはいかんな。
トウコがリンに露骨な視線を送りながら言う。
「普通の服じゃなくって、
もっとエッチな服でもいいんスよ!」
「もっと……?」
リンが不思議そうに聞き返す。
やめろトウコ!
欲をかいてはいけない!
今ここに在る桃源郷を失うぞ!
俺はつとめて冷静に言う。
「一度外を通るから、ダンジョン産の装備はダメだ」
「そうですよね。
じゃあ盾は持っていけませんね……」
リンは残念そうに盾トンファーを見る。
「収納で持ち込めばいいっス」
「忍具収納を使って持ち込むことはできる。
だけど、ロストするリスクがあるから……どうするかな」
俺の装備についても、同じ理由で悩んでいる。
装備を持ち込めば攻略は楽になる。
死んで失うリスクとの兼ね合いだ。
「あ、そうでした。
収納はルールが違うんですよね。
なくしたくないので盾は置いていきます」
リンがトンファー盾をラックに戻す。
かわりに俺は公儀隠密の武器庫から持ち出した大盾を指さす。
「この盾はどうだ?」
「これは……大きいですね?」
リンが大型の盾を持ちあげる。
これは公儀隠密の武器庫から持ってきたライオットシールドだ。
警察や機動隊が持っている品物に似ている。
透明で大きい。
「重いかもしれないが、試してみてくれ」
「はーい」
普通の品物だからダンジョンから持ち出せる。
冷蔵庫ダンジョンに持ち込むこともできる。
トウコのダンジョンには復活がある。
死ぬと外に出されて、そこで生き返るのだ。
このときケガも治る。
そして持ち込んだ品物も入った時と同じ状態になるのだ。
捨てようが壊れようが、なくならない。
セーブしてロードしたように、もとに戻ってしまう。
しかしこれは現実素材の品物だけだ。
収納スキルを使った場合はルールが異なる。
【忍具収納】は使えるが、
取り出した状態で死ぬと品物が失われてしまう。
愛着のある忍者刀や作成コストの高い品は失いたくない。
だから持ち込まないつもりだ。
「まー、死ななきゃオーケーっス!」
トウコは手ぶらである。
気楽でいいな、おい!




